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えっ、吉常くん大学行かないの?~托卵で生まれた俺、大学に行かずに迷宮探索者で立身出世を目指す~  作者: XX
第6章:魔剣ニヒム

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第54話 迷宮の闇商人

 そこにいた男は。


 ……黒いローブを身に纏っていた。


 いや、ローブみたい、って言うべきか。


 ダボダボの、魔術師イメージに合う黒い服。

 ローブって言うのが一番近い気がするんだ。


 ひょっとしたら、身元が割れないようにするための格好なのかもしれないな。

 後から考えると。


 男はサングラスとマスクで顔を隠していて。

 鞄を持っていた。


 旅行鞄みたいな、革鞄だ。


「……アンタ誰だよ?」


 俺は訊ねる。

 まず、そこをハッキリさせないと。


 4階だったら、追剥あるかも……?


 そんなことを頭の片隅で考える。

 俺が剣の柄に手を掛けていることに気づいたのか。


「ああ、安心してください」


 男は軽い調子で手を振って


「通りすがりの闇商人ですから」


 そんな、聞き流せないような自己紹介をしたんだ。




「闇商人……」


 俺の呟きに


「表の迷宮探索者の店で扱わないような商品を取り揃えております」


 にこやかな声でそう返して来る。

 アドベンチャラーズで扱わないような商品……


 興味はあった。


麻薬クスリとか、洗脳道具だとかの犯罪的アイテムじゃ無いよな?」


 一応確認。

 その質問に闇商人を自称する男は首を左右に振り


「そういう、使用者以外にも不幸を振りまくものではありませんね」


 鞄を下ろし、開きながら


「あくまで……」


 あえてリスクを取って、なおより良い迷宮探索者ライフを送っていただくための便利アイテム類ですよ。


 そう言いながら、その場で店開きをしたんだ。


 ……なるほどな。


 紹介される商品類で、彼がどういう商売人なのかを理解する。


「例えばこのポーションですが」


 闇商人は説明する。


 まず、黒い瓶を取り出して。


「このポーション『肝臓喰らい』は飲めば人体欠損が治ります。ただし……」


 男は説明する。

 飲むと重度の肝機能障害が起き、多分そちらで入院することになるでしょう。

 肝機能は完全には治る保証はございません。

 所謂ウイルス性の病気ではありませんので、僧侶の回復魔法も効きませんので。


 他には……


 黒い小手を取り出して


「このガントレットは、剛力の小手と言いまして。装備すると腕力が増大しますが、その影響で全力行動をすると数分で剥離骨折を起こします」


 ……そういう、安全性に問題があるが、効果は絶大。

 そんなアイテムばかりだった。


 でも正直、欲しいと思えるものは無かった。


 最後の商品を見るまでは……


「で、これです」


 闇商人は、鞘に納まった黒い日本刀に見える剣を取り出して来た。

 何処に入ってたんだよそれ。

 デカすぎるだろ。


 ひょっとして魔法の品なのかその鞄?


 そんな些細なツッコミは、説明を聞いたときに吹っ飛んでしまった。


「これは魔剣ニヒムと言います。恐ろしいまでの切れ味を持つ剣です」


 魔剣……?

 俺の心が動く。


「この階層の番人の甲羅すら切れると思います」


 ……えっ?


 それは……


 ……欲しい!

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 闇商人とやらの商品、ドラク○シリーズの呪いの装備を思い出しますね…メリットあるけどデメリットが凄いアイテムというか。 そうなると「今日のオススメ(?)!」なこの魔剣も、使用を躊躇…
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