第51話 上級職あれこれ
静かで図書館は涼しいな。
勉強も捗るってもんだ。
終業式から数日後。
前日に霧生と約束して、一緒に図書館の自習室に来たんだけど。
……ここだと会話は出来ないんだよな。
それだけが不満ではある。
ただ、黙って課題を片付けるのみ……
静寂の中、響く鉛筆やシャーペンが走る音。
俺の前の席で霧生が、涼し気な色の薄手のブラウスとパンツの上下を着て課題をやってる。
その集中具合。見習わないと。
そして俺は考え中の数学の問題に意識を戻して。
10分くらい経っただろうか。
スッと、霧生がメモを差し出して来た。
霧生は小柄なので、少し無理してる。
会話出来ないし、課題の邪魔だからか。
手の空いているときにでも見て、って。
そういうつもりなんかな。
そう思いつつメモを受け取り、読む。
メモにはこう書かれていた。
『戦士と学者の上級職って何?』
……上級職なぁ。
霧生もこの間のことに立ち会ったわけだし、気になったのかな。
俺はまだ、考えたことも無かったけど。
あのとき……魔道騎士の男・四戸に出会うまでは。
戦士から成れる上級職は……
戦士と魔術師で「魔道騎士」
戦士と僧侶で「聖騎士」
戦士と召喚士で「忍者」
で。
霧生の知りたがってる「戦士と学者」は……
実は、俺も知らないんだよな。
理由は、戦士と学者を両方持つ選択をする迷宮探索者がほとんどいないからなんだけど。
戦士持ち、学者持ちはいっぱいいる。
だけど、その両方を持つには第5階層まで潜らないと無理だから……
そこまで気合入れられるのは迷宮探索者以外おらず、迷宮探索者は魔法系クラスを得た人は学者か戦士、反対に学者や戦士を持ってる人は魔法系を選ぶことが多いんだよ。
外の世界で活躍する気ならいざ知らず、迷宮探索を追求するなら魔法持ちの方が都合良いもんな。
魔法系の場合は他の魔法系を選ぶ場合はちょくちょくあるけど、非魔法系がもう1つを選択する例はほぼ無い。
なので元々数が少なすぎる戦士と学者両方持ちの迷宮探索者が、迷宮第8階層に至って上級職になる事例なんて絶無と言っていいんだ。
なので俺は霧生のメモに「悪い。知らない」そう書いて返した。
霧生は俺の答えを見て。
俺に視線を向け
頭を下げて来た。
ありがとう、って感じかな。
……霧生はどうするのかな。
ふと、考える。
霧生の場合は……
魔術師と戦士で「魔道騎士」
魔術師と僧侶で「賢者」
魔術師と召喚士で「悪魔使い」
魔術師と学者で「錬金術師」
……元々霧生は学者を取ろうとしてたわけだし。
錬金術師なんだろうかな……?
やっぱり。
そう思いつつ俺は自分の課題の処理に戻った。