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第45話 仮面の下には

「うおおおおおおお!」


 怒りと恐怖。

 2つが入り混じり。


 俺は愛用の長剣で般若面の男に斬りかかる。


 そして絶望的な気分で斬撃を加える。

 斬り下げ、斬り上げ、袈裟……


 だが般若面は余裕を崩さず


 ほぼ体捌きだけでそれらを全て躱していく。

 躱しながら


「おお、カスなりに頑張ったんやな。太刀筋はかなりキレイや。ちょっと侮ってたわ」


 ……こいつ、何で牝豚のことを知ってんだ?

 探偵でも雇ったんだろうか?


 剣を振るうことで俺は少し落ち着いて。

 冷静になってきたんだ。


 牝豚を引き合いに出されて、頭に血が上って冷静に考えられなかったけど。

 そこに気が付き、疑問が生まれた。


 探偵使って俺のことを調べて、あの牝豚のことを知ったとする。

 それで、ここまで嫌悪感を持つか……?


 例えばこの間、こんなことがあった。

 以前逮捕された犯罪者の死刑判決が出たんだ。

 罪状は「予備校がクソだったせいで大学に落ちたと理不尽な他責をして、予備校に放火して講師を多数焼き殺した」という、超身勝手なもの。


 許せないと思う。

 当然の報いだとも。


 だけど……


 仮にあの死刑囚に家族がいたとして。

 そいつの家族だからという理由で、俺はそこまで嫌悪感は持たない。

 だって俺、その死刑囚のこと、何も知らないもの。

 概念として悪人であると思うだけだ。


 こう言ってはなんだけど……

 ほぼ、フィクションの人間のような感覚になってしまう。


 ゆえに「あのクズの家族だからこいつもクズに違いない」なんて話もせずに決めつける心情にはなりにくい。


 だから俺はこの般若面の俺への嫌悪感が理解できなかった。


「……そろそろ反撃の時間か?」


 そのときだ。

 俺にとっては処刑開始宣告に等しい言葉が、般若面から飛び出した。


 俺はゾッとする。

 初手を譲られ、一方的に挑んだにも関わらず、かすりもしない。

 この圧倒的実力差……!


「……火炎剣」


 絶望する俺を前にして。

 般若面はその手にした大剣の刃を火炎で包み


 火炎付与の剣にした。


 ……これが魔道騎士の固有能力か……!


「いくで……覚悟せい……」


 動き出す般若面。

 火炎に包まれた剣は、その斬撃のリーチを火炎で伸ばして来る。


 炎が躍る。


「グッ!」


 俺の攻撃が止まった。

 般若面の斬撃に隙が無くて、割り込めない――


「お願いです! やめてください! 吉常くんを殺さないで!」


 霧生が悲鳴をあげている。

 俺のためだと思うと少しだけ嬉しくもあったが、喜ぶ余裕はあるわけなくて。


 俺は回避だけに精一杯になる。

 相手の獲物は大剣で、重量があるはずなのに、その剣の速さはまるで風だった。


 火炎の伴った打ち下ろし。

 俺は熱に耐えながら、その一撃を受け流すように受けて


 そのまま巻き上げるように斬り上げの斬撃を一撃返す。


 しかし

 般若面はそれを余裕で回避する。


 だけど


 俺の剣先がさ


 般若面のお面に触れたんだ。

 顎のあたりに。


 般若面は俺との技量の差を見せつけるためか、あまり大きく動かないで躱していたからだと思う。

 面の分を動き損ねたのか。


 結果


 面が真っ二つに割れたんだ。

 そう。真っ二つに。


 その下に隠れていたのは……


 俺とほぼ同じ顔。

 俺がこのまま成人したらこうなるんじゃないか、という。


 男の手が止まる。

 俺も動けなかった。


 えっと……


 この男……もしかして……!

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