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第43話 吉常天麻やな?

 明くる日。

 第4階層で。


 俺たちは石橋の上で狩りをしていた。


 で、さっきジャイアントイールっていう、4メートルくらいある黒いウナギを5頭倒して。

 出現した宝箱を開けていた。


 榎本さんが横幅が2メートルくらいある木の宝箱の前でしゃがんで作業してる。

 無論、罠解除。

 霧生の罠鑑定では、罠はガス爆弾らしい。


 俺たちは後ろに下がって見守っていた。

 こればっかりはどうしようもできないし。


 もし罠が作動したら、念のために購入しておいているポーション・キュアポイズンが1つ消える。

 ……1つ5000円するんだよね。

 痛い出費だ。


 ……お願いです。無事解除できますように……


 すると

 榎本さんの手が止まり


「解除完了よ」


 榎本さんのその言葉。

 おお……!




「宝箱の中身は……エターナルフルーツ6房と砂時計。そして手斧ね」


「ボトルシップは無しですか」


 榎本さんが罠解除をしたというので、俺たちも宝箱の中身を覗くと。

 その中身にはボトルシップは含まれていなかった。


 残念。


 ゾンビパイレーツでなくても宝箱に入ってる可能性はあるんだけど、運悪く遭遇できてない。


「早く欲しいですね。ボトルシップ」


 俺の呟きに榎本さんは「そうね」と言いつつ


「まぁ、焦っちゃダメよ。……なかなか遭遇しないのは、その間に経験を積めって神様の意志かもしれないし」


 そう続ける。

 榎本さんは落ち着いていて


 俺の隣の霧生に目を向けて


「エターナルフルーツどう? 換金しても1房1000円にしかならないけど、効果は値千金って言って良いと思うけど」


 エターナルフルーツ……見た目は青い色のバナナみたいな果物で。

 食べ方も同じ。

 食感や味もまあ同じ。


 なんだけど。


 ……この果物さ、腐らないんだ。

 迷宮アイテムらしくね。


 これは例外的に潰れるんだけど(でないと食べられないからな)腐らないのは流石と言うか。


 そして健康食でもある。

 これだけ食べてても、栄養失調にならないし、1食1本食べるというルールを守っていれば、太ることも無い。


 1房8本で5000円。

 1食あたり625円。


 ダイエットで食べる人、結構いる。

 これだけ食べ続けると、適正体重になっていくので。


 霧生は眼鏡のつるを触りつつ、じっとエターナルフルーツを見つめ


「……一応、3房下さい」


「じゃあアタシも3房貰おうかしら」


 俺の目の前で榎本さんと霧生は、すっかりエターナルフルーツを山分けするつもりになっていた。

 俺の意志は確認せずに。


「あの、俺の取り分は……?」


 そこでおずおずと手を上げて、自己主張すると


「あら、吉常くんもエターナルフルーツ欲しいの?」


「いや、要らないですけど……」


 バナナだけ食べ続けるのはキツイから別に欲しくない。

 ただちょっと……確認して欲しかっただけなんだよな。


「じゃあ別にいいじゃない」


「まぁ、そうですけど……」


 なんか無性に笑えて来て、噴き出す。


 霧生と榎本さん、すっかり打ち解けた感じで。

 俺としては嬉しい。


「こっちの手斧はただの手斧ですね。それでも数万円くらいでは売れますかね? 吉常くんの愛用の長剣、買うと15万円だって前に吉常くんが」


 アナライズで解析した手斧を差し出しつつ、霧生。

 万越えなら、3等分でもそこそこ行くな。

 砂時計はこのサイズなら1万円かな。


 ……今日の稼ぎは最低5000円以上は確定か。

 悪くない。


「それじゃ行きましょうか」


 リュックにエターナルフルーツを入れる2人。

 俺は砂時計と手斧を背負い鞄に入れる。


 さて、これ以上の何か……できればボトルシップは出てくるのだろうか……?

 そう思いつつ、鞄を背負って次の狩場に……


 歩み出そうとした。


 そのときだった。


 シュン、という感じだった。


 目の前にいきなり現れたんだ。

 何も無かった空間に。


 般若の面を被った、黒ジーンズに黒シャツの男。

 身長は2メートル近く、体型は引き締まってる。

 細マッチョって感じだった。


 そして右手に白い長剣を引っ提げ。

 左手に水晶玉を持っていた。


 これは…… 


 俺、初めて見たんだよ。


 ……魔術師ランク5の最高位魔法の「テレポート」ってやつを。


 コイツ……一体?


 いきなり現れたその男は

 混乱する俺たちを構わず

 挨拶無しで


「……吉常天麻やな?」


 現れたときと同様、いきなりそんなことを。

 関西訛り……大阪の人間なのか?


 そう思いつつ俺は


「えっ、あ、うん」


 あまりに突然のことで反射的に頷く。

 すると


「さよか」


 男は無感情にそう呟き


 そして剣の切っ先を俺に向け


「なら、今からお前をブチ殺すから」


 ……そう、到底受け入れられないことを口にした。

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