第40話 4階層で是非欲しいアイテム
4階層は一言で言うと水の世界で。
巨大な海のような水たまりの上に、点在する島があり。
それを各所で橋が繋いでいるような環境。
その橋は全部の島を繋いでいるわけではなく、橋が繋がっていない島もある。
そういう島には、水を渡っていくことになるんだけど……
泳いでいくのは絶対NGなんだ。
確実に水中モンスターに襲われて、殺されてしまうから。
なので船が要るわけだけど……
迷宮内部に船を持ち込むのは至難の業で。
機械を使えないから、人力で運び込むことになる。
それだけでも無茶なのに。
船を使っても、あくまではそれは「泳ぐよりマシ」なだけに過ぎない。
機械が持ち込めないのだから手漕ぎ船だし。
そんなのでこの迷宮の海を渡っていくのもかなり無茶だ。
大型の水棲モンスターに襲われたらひとたまりもない。
そこで「ボトルシップ」なんだ。
アイテムとしての形状は、瓶の中に船の模型が入ってる、所謂「ボトルシップ」なんだけど。
これはこの迷宮のみで使用可能なマジックアイテムなんだよね。
迷宮内の海に浮かべると、モーターボートのように漕がなくても勝手に運んでくれる魔法の船になる。
しかも、この船に乗っている間はモンスターも襲って来ない。
この階層を攻略したいなら、是非欲しいアイテム。
問題点は、このアイテムは入手難度が高くないので、アドベンチャラーズでも買い取ってくれないことだ。
迷宮の外ではただのインテリアだから一般用途が無いのもあるんだろうけど。
なので俺たちは、ボトルシップが確実に宝箱に入っているモンスター「ゾンビパイレーツ」というモンスターを探していた。
榎本さん曰く「槍で武装したゾンビの海賊」だそうだ。
早く出会わないかな。
そんなことを、半魚人たちと戦いながら考える。
「来なさい! ウォードック!」
榎本さんの召喚魔法。
呼び出された黒い狼に似た闘犬が、マーマンマジシャンに襲い掛かっていく。
「スりーぷミスと」
自分たちに襲い掛かって来るウォードックに、マーマンマジシャンたちが魔術師魔法のスリープミストを使って来た。
それをまともに喰らったウォードックは、フラフラとよろめき、倒れる。
スリープミストはランク1の魔法では最も使える魔法だけどさ。
敵に使われるとホント厄介なわけですよ。
睡眠ガスをちょっとでも吸い込んだら、寝落ちの危機なわけだし。
でも、対策をキチンと立てれば、安全攻略は出来るんだ。
俺と榎本さんは、先行して突撃させてスリープミストで仕留められたウォードックを犠牲に、マーマンマジシャン2体に突っ込んだ。
……息を止めた上でだ。
グエッ!
半魚人2体が、俺の剣と榎本さんの槍を浴びた。
俺の斬撃が首を掻っ切り、榎本さんの槍が半魚人の胸を貫く。
それが致命打になり、2体は塵に変わって消滅した。
ギギッ!
残されたマーマンファイター3体が焦っていた。
油断はできないけど、マジシャンさえ倒せばこっちのもんだ!
俺は3体に向き直り、その手の剣を正眼に構えた。