第33話 再会したのは
「あ、ありがとう!」
霧生が俺に礼を言って来た。
その声には焦りがあった。
お礼が遅れたとか、そんな想いがあるんだろうか?
だけど
「そんなのはあとで良い! まずはこいつを倒さないと!」
そこで俺に向かってラドンが今度は左腕を伸ばす。
横に逃げると、その左腕が案の定爬虫類の大顎に変化して噛みつきを仕掛けて来た。
俺はそれを自分に誘導するように動き、ギリギリで躱す。
ラドンの標的は霧生から俺に動いている。
助かる。
……だけど。
俺は何て馬鹿なんだろうか。
情けなかった。
ウラキの評価で低評価の根拠が「気持ち悪い」という悪口だったことから勝手に同情して、目を曇らせるなんて。
実際に会ったときに人間的異常性に気づいていたのに、それを見ないふりをした。
それはウラキへの同情もあったけど、それ以上にウラキの能力の都合の良さもあったと思う。
僧侶のクラスを持ち、宝箱の罠解除ができる。
俺たちが欲しい技能を全部持ってて、欲しい人材だったから。
それに目が眩んで、こうなった。
……俺のせいだ。
俺がアイツの本性に気づいて断るべきだったのに。
だから霧生は絶対に守らないと。
「ファイアーボール!」
そこに。
霧生の放ったファイアーボールがラドンを直撃。
爆炎が少女の姿をした怪物を飲み込む。
だけど
爆炎が晴れた後。
「……そんな」
霧生の絶望的な声。
無傷だったんだ。
服すら燃えてない。
こいつ、炎が効かないのか……!
……だったら!
ファイアーボールを喰らわせたことに多少霧生に意識が向いている隙を突き。
俺はラドンの首に斬り付けた。
だけど
俺の剣はラドンの身体には喰い込まず、弾かれていた。
見た目は少女そのものなのに、その肌の強度はまるで鋼だったんだ。
驚きと恐怖で俺は息を呑む。
そこで
ラドンの目がこちらに向いて。
その顔の、口がカパッと開いたんだ。
そのときだった。
「しゃがみなさい!」
声がした。
女性の声で……
その声に、俺は聞き覚えがあったんだ。
なので素直に従いその場でしゃがむ。
その瞬間、俺の上半身があった場所を少女の口から吐きだされた灼熱の炎が飲み込んでいた。
……ファイアブレス!
俺の背筋が寒くなる。
コイツは間違いなく3階層で規格外。
それを確信する。
そこに2頭の黒い猟犬のような犬が現れ、ラドンに喰いついた。
ラドンの両腕に噛みつき、離さない。
あれは……ランク2召喚獣のウォードックじゃないか。
と言うことは……
「大丈夫!?」
続いて現れたのは。
スラリとした、凛々しい大人の女性だった。
髪型はショートヘア。
所謂ショートボブってやつだと思う。
それを赤く染めていて。
俺同様、傭兵か自衛隊みたいな迷彩模様の服を身に着けている。
そして銀色の槍を持っていた。
その人は……
「榎本さん!」
俺の迷宮探索者の師匠みたいな人。
榎本恋さんだった。