第29話 これがプロの技
「ファイアーボール!」
早速霧生が、ファイアーボールをトリフィドたちに撃ち込んだ。
合計3体出現したトリフィドたち。
そのうち1体に直撃。
爆裂した火炎が、トリフィドを飲み込む。
トリフィドは炎の中で踊りながら、悶え、倒れて消滅する。
……まず1体!
「でやああああ!」
そして俺は切り込んだ。
トリフィドは毒針が生えた触手鞭を持つ。
喰らうと意識の混濁が起きて、数分で動けなくなる、割とヤバめの毒。
ただ、トリフィドの毒鞭は1本しかないので……
俺は飛んでくるその触手を、半ばの位置で切断した。
それに対し、トリフィドにも痛覚があるのか悶えるような仕草をする。
……切り落としさえすれば、再生するまでの数分間はトリフィドに攻撃手段が無い状態になるのよ。
だから油断さえしなければ、苦戦はしないんだ。
そして
「ファイアーボール!」
俺が対処していない方のトリフィドが、また霧生の魔法の直撃を受けて轟沈する。
……残り1体!
「怪我はなさってませんね?」
ウラキ氏の言葉に、俺たちは頷く。
たった今、最後の1体のトリフィドを幹の部分で切断し、トドメを刺したんだ。
倒されたトリフィドは、モンスターのセオリー通りに塵になって消滅していく。
……良い調子じゃん。
俺たち、これなら4階層も狙えるかも……?
思わず笑みを浮かべてしまう俺。
そこで
「宝箱だよ! シースルー! アナライズ!」
食い気味で、霧生が出現した宝箱の罠を調べた。
……興奮しているな。
まぁ、無理も無いけどさ。
俺もしてるし。
そして……
「……爆弾の罠です」
来た。
俺はウラキ氏に視線を向ける。
ウラキ氏は
「任せてください」
何やら。
複数の細い金属の棒みたいな道具をポーチから取り出し。
宝箱の傍でしゃがみ込んだ。
「一応離れてください」
そう言われたので、言われた通り距離を取る俺たち。
危険作業をウラキ氏に丸投げ……
少し、罪悪感がある。
けど、このためにお迎えした人でもあるわけで……
「OK、行けましたよ」
おっ?
1分くらいしか経って無いのに。
あっという間だった。
マジで?
戸惑ってしまう。
だけど。
パカンと、ウラキ氏が宝箱を開けても、大爆発は起きなかった。
おおおお……
隣を見る。
霧生も口に手を当てて興奮していた。
これがプロか……
「宝箱の中身は……デオードが2つに、ポーションが2つ。そして砂時計がありますね」
中身を外に出しながらウラキ氏。
その鮮やかな手並みに、俺は思わず訊ねてしまう。
「どこでそんな技を?」
すると彼はこう答えた。
「元鍵屋なんですよ。僕は」
微笑みながら。