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第28話 僧侶ウラキ氏

 俺たちはウラキ氏の面接の日取りを決めた。

 機械の時計が持ち込めないので、大体の時間になってしまうけど。

 できるなら砂時計を持ち込むべきなんだろうけどね。

 高いんだよな……迷宮産の砂時計。


 待ち合わせ場所は、迷宮3階層のエレベーター近く。

 目印で俺たちは赤いスカーフを腕に巻くことにした。


 そして、声を掛けられるのを待つ。


 エレベーターの近くで2人で会話して待つこと体感数十分。

 近づいてくる人影があった。


「ええと、はじめましてでいいでしょうか? ウラキです」


 目立たない髪型の目の細い中年男性。

 体格は普通で、その外見も特に異常には見えなかった。


 スポーツウェアとして使えそうな黒シャツに、濃い色のジーンズ。

 そして運動靴を履いてる。


 このあたりの迷宮探索者として特に珍しくない格好。

 武器は槍。


 ……クラス僧侶だしな。

 剣とか鈍器には行きにくいだろうし。

 これも普通。


 ただ……ちょっと目付きがね。

 爬虫類みたいな、冷たさを感じた。


 この辺かな……?

 気持ち悪い、なんて悪口の元になったのは。


 でも目の形なんて、親からの遺伝だろ?

 そんなの、人間の価値に関係ないはずだ。


 ……売込み時に言ってた通りに1人で時間通り現れ、物腰穏やか。

 そして、俺たちが一番欲しい技能を持ってる男性。


 俺としては、是非お迎えしたい気分なのだけど……?


「ええと、吉常くんはどう思う?」


 霧生が耳打ちするように俺の意見を訊ねる。

 俺としては……


「俺はOKだと思ってる。霧生は?」


「私もまぁ、危ない人には見えないかな」


 ……意見一致か。


 じゃあ、OKかな。


「よろしくお願いします。俺が吉常で」


「私が霧生です」


「よろしく。若い人たちだ。……頑張りましょう」


 俺たちは握手を交わした。


 そしてそのとき。

 ニコリ、とウラキ氏は微笑んだ。

 その笑顔が……


 どうしても俺にはトカゲに見えたんだ。


 ……外見でそういうの、差別的で良くないだろと思うんだけどな。

 ルッキズムっていうんだっけ?


 クソだろ。俺。




「何で僧侶を選んだんですか? 男の人って強いの好きそうだと思うんですけど」


 狩りに向かいながら霧生がウラキ氏に訊ねる。

 ウラキ氏は


「他人を攻撃するための能力って、使いどころが限定されますからね。僧侶は生き抜く力を強化してくれるクラスですから」


 にこやかにそう返す。


 ……確かランク2で、病気を治せる魔法が使えるんだよな。


 風邪やインフルも怖くない。

 ……確かに、有用かも……


 低コストで生きていきたい、って思う人にとっては。


 真面目な社会人なら、欲しがるのは戦士じゃなくて僧侶なのかもしれないな。


「普段は何をされてるんですか?」


 俺は訊ねる。


「会社員ですね。まあ、このトシでまだ平社員ですが」


 声音は爽やか。

 笑顔が爬虫類っぽいという俺の勝手な偏見は、考えないようにした。


 そしてしばらくモンスターを求めて歩き回っていたら


 草むらを揺らし、緑色の蔓を複数生やした2メートルほどの大きさの動く植物が現れる。

 それを見て


「……トリフィドですね。炎に弱いので、霧生さんお願いします」


 槍を構えながらウラキ氏がそう言った。

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