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第26話 焼肉を食べながら

「焼肉何が好き?」


 一緒のテーブルについて、金網を挟んで


 焼肉について訊かれた。

 俺は……


「普通に肉」


 ……正直に言うと、俺は焼肉に行ったことが数えるほどしかないんだ。

 親があの牝豚だからな。


 焼肉に子供を連れて行くような金があれば、自分が幸せになるために使うもんな。

 まぁ、そんなだからさ


「あなたのお父さんは私たちを捨てた」


「お金あるはずなのに養育費も払ってくれない」


 ……これが大嘘だって中学くらいで気づいたわけだけど。


 牝豚の仕事のレベルと、金遣いが一致しないから。

 ああ、こいつは養育費を使い込んでるんだなと。


 悟ってしまった。

 他にも理由はあるんだけど、自分で気づいた根拠はそれだ。


 普通の子供がサンタクロースの正体が親であることに気づく代わりに、俺は牝豚の養育費使い込みに気づいたって寸法だ。


 笑いもでねぇよ。


 俺が最初に焼肉を食べたのは、バイトをはじめた高校1年生だ。

 バイトの先輩に連れて行ってもらえて、俺ははじめて焼肉を食べた。

 あのときは本当に美味かった。


 そんなだから、俺は焼肉ではカルビだとかハラミだとか。

 そういう肉の部分を食べていた。

 余計な冒険はしない。


 試しに1回、レバーを食べたこともあるけど。

 肉ほど美味いと思えなかったからそれ以来手を出していないのもある。


 俺の答えを聞き、霧生は


「私は臓物モツが好きなんだよね。特にハチノス!」


 笑顔で教えてくれた。

 ハチノスって言ったら……


 確か、牛の胃だろ?


 でも、あれって……


「見た目がけっこーグロテスクだよな」


 食べたことは無いが、見たことはあるので。

 感じたままのことを口にする。


 すると


「食べたら美味しいから、別に気にならないよ」


 霧生は楽しそうにそう言って。

 手元のタブレットで注文を飛ばした。


「焼肉屋さんで食べないと、臓物モツ系は臭いの問題があるからねぇ」


 ……霧生が臓物モツ好きなの、その辺があるのかもな。

 知らないことを知りたいから、迷宮探索者になったくらいだし。




 大人だったらアルコールなんだろうが、俺たちは高校生なのでソフトドリンクで乾杯する。

 テーブルに並んでるのは、普通の肉部位と、臓物モツ


 ウーロン茶を飲みながら、肉を食べる。

 うん、やっぱり美味しい。


「ねぇ」


 そして俺が肉を焼いていると。

 霧生が


「……ダメもとで、メンバー募集してみない? 高校生のパーティーに応募してくる人、まず居ないとは思うけどさ」


 もぐもぐと、ハチノスを食べながら言ってくる。

 ……俺としては


「応募が無いだけならまだ良いんだけどさ」


 懸念事項を言う。


「悪いヤツが来るのが怖いんだよな」


 口の中の肉を飲み込んだ後に。


 プロ犯罪者の目線で考えてみればさ。

 高校生の2人が


 パーティーメンバー募集中ですー。


 なんて言ってたらさ。


 良いように餌食にしてやろうとか。

 こっちの世界に引きずり込んでやろうとか。


 そう思って近づいてきやしないかと思うんだよな。


 ……これは俺の妄想じゃ無くて。

 そう言う人間が確実に居るってさ。


 あの、俺にお金の問題の重大性について教えてくれた女性ひとが言ってくれたことでもあるんだよな。


 あまり親切な奴を信じちゃダメだよ。

 特に言葉だけの優しさは疑って掛かるんだ。

 悪い奴はこの業界にはたくさん居るからね。


 ……それが頭にあるから、どうしても抵抗がある。


 でも、俺のそんな言葉に


「そういう悪い人って、集団で来るはずだと思うよ?」


 霧生が意見をつけてくれた。


 霧生が言うには


 集団で応募して来る怪しいのは断ればいいし。

 そうでないならちゃんと面接して、2人でジャッジすればいいんじゃない? って。


「面接……」


 俺が渋ると、霧生は


「吉常くん、経験浅い私が言うのは気が引けるんだけど」


 どこかで宝箱を処理できる人をメンバーに引き入れないと、多分4階層から先に行けないんじゃないかな?

 もしくはこっちから売り込んでいくとか……


 安牌だけ切ってく方式だと、絶対行き詰ると思う。


 そんな霧生の言葉に俺は


 ……確かにな。

 それは少し、理解できる。


 そもそも、俺の目指す迷宮探索者の世界だってそうだよな。

 6階層で稼げるようになってようやく「迷宮だけでなんとか食べていける」状態なんだよ。

 そこまで行けないと、一生バイト暮らしだ。


 安牌を切るなら、この選択自体が間違いなんだよ。


 だったら……

 決断するべきなのかもしれないな。


「分かった。希望出そうか」


 言って俺は自分のスマホを取り出す。

 霧生も自分のスマホを取り出した。


 そして2人でメンバー募集の文面を書き合って。

 出来がいいと思える方の文面で、募集を掛けたんだ。


『魔術師と戦士のランク2パーティー、宝箱の罠解除可能な新規メンバー募集。爆弾罠を解除可能な方優遇。報酬は獲得物売却金の3分の1。要面接です』

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