第25話 焼き肉屋に行こう
3階層の草原で、ファングバブーンを倒し、宝箱をゲットした。
中身は魔法薬「デオード」4つだ。
売却したら4000円。
「宝箱は何が入ってるのかが興奮するよね。間違いない」
それはそうだな。
霧生が冗談っぽく、さっきのことを語るのを俺は微笑ましい気持ちで見守った
そして霧生は、眼鏡をクイッと上げながら
「……とはいえ。罠で爆弾出たら嫌だよね」
現在の問題である「爆弾の罠はお手上げ問題」を神妙な感じで口にする。
「ああ……」
俺は頷いた。
さっきも言ったけど、爆弾の罠をアナライズで理解しても、それを解除できるかどうかは技術の問題だから。
どうしようもないんだよな。
……プロでないと。
「買取をお願いしたいんですが。デオードの小瓶4つです」
「……確かに。少々お待ちを」
デオードは良く持ち込まれるから、職員さんはサッと本物かどうかのチェック……
金槌で瓶を殴るのを1回だけやって、それで破損しなかったから即買い取り手続きに入ってくれた。
迷宮で手に入るポーション類は、これもまた壊れないんだよね。
だから、爆弾の罠が作動しても吹っ飛ばされて粉々にはならない。
ただ、開封して中身を使用すると空き瓶は消滅する。
なので、持ち歩くときは開封だけ気をつけておけば、鞄の中で割れることは気にしなくて良いんだ。
そして、それが簡単に迷宮アイテムと偽物を判別するための方法にもなっている。
……職員さんが4000円を差し出してきてくれた。
今回は2000円ずつに分けられる。
渡された半分を、俺は霧生に渡した。
「おお、臨時収入だねぇ」
千円札を2枚。
霧生はそれを財布に入れていく。
霧生の財布は長財布で、何かの革製だった。
……女の子っぽくない気がした。
で、なんとなく。
「霧生の財布、大人が持つものみたいだな」
そう言ったら
「おじさんのおさがりだね。おじさん、金運の維持のために数年ごとに財布を買い替えるのを習慣にしてて」
どうも霧生のおじさんは、財布を買い替えるたびに昔使っていた財布を親戚の子にタダであげてるらしく。
霧生はその恩恵に与ったそうだ。
「普通に買うと2万円くらいする財布だって。大事に使えば何十年でも持つんだよ」
財布の話をする霧生は嬉しそうだった。
俺にはそれが眩しかった。
で。
夕食を一緒に食べようってなって。
俺たちは焼き肉に来たんだ。
食べ放題の店。
値段は3000円。
最初、霧生と食事と言われて何処に行くべきかビックリするほど出て来なかったんだけど。
霧生の方から
「焼肉行こう!」
って言って来たんだよ。
一瞬、オシャレじゃないぞ?
それでいいのか? って思ったんだけどさ
「肉を食べないと体力つかないし」
そう言ってて。
俺はそれは本気だと思ったんだよな……。