第24話 これが本職では無い罠解除だ!
俺は素早く寝落ちしたファングバブーン2体にとどめを刺す。
剣の切っ先を化け物ヒヒの首筋に突き刺し、速やかに倒す。
剣を突き刺すたび、化け物ヒヒたちが塵になって消え去る。
そして
「今のすごいな!」
倒し終えた後、思わず俺は言ってしまった。
霧生に。
普通、ランク2の魔法を習得したら、それに固執してしまいそうなものなのに。
あの場で最適のスリープミストを絶妙タイミングで使うなんて。
本気で感心した。
大魔術師って感じだ。
「いやあ、ちょっと褒められても……」
霧生はおさげの毛先を弄りながらテレる。
俺は興奮してさらに褒める。
「自分が今使いたいワザよりも、状況に一番合致したものを選択する冷静な判断力! ホントスゲェよ!」
すると霧生は両手を前に出して手を動かし。
「それ以上褒められると承認欲求が暴走するからマジやめて!」
その様子は別に嫌がってはいないけど、危機感を覚えてるのはマジっぽいので。
俺は
「あ、分かった」
それ以上褒めたい欲求を抑えて、そこで引き下がった。
「あっ、宝箱」
ファングバブーン3体を倒して戦闘を終わらせた後。
その場に宝箱が出現していた。
宝箱出現率は1~2階とは比較にならない。
20回モンスターを倒したら1回は出るんだから。
つまり確率5%くらいか。
1~2階では100回で1回出れば上出来。
そのくらいなのに。
「やったね!」
霧生が手を握りこぶしにして、ニコニコ笑う。
そして宝箱の前に進み出て
「シースルー!」
魔術師ランク2魔法……シースルー。
平たく言うと透視魔法を使用した。
これを使用すると、隠されたものを覗き見ることができる。
そして
「アナライズ!」
続けてもう1つのランク2魔法・アナライズを使用した。
これは見たものが何であるのかを、まるで誰かに説明を受けたように理解する魔法だ。
……最初の迷宮探索者は、この魔法で迷宮の中を理解して、マニュアルを作ったんだよな。
確か、そういう話だった。
そして約10秒後に
「……この宝箱に掛かっているのは毒針の罠だね。宝箱を開けようとすると、手にグサッと。毒が回ると七転八倒の苦しみの末、死んじゃうかも」
分析終了。
なるほど。
「だったら……」
俺はリュックから革手袋を取り出した。
アドベンチャラーズで販売している、1万円する専用のものだ。
これなら毒針程度なら防ぎきれる。
俺はそれを嵌め
「……開けるぞ……」
「うん、気を付けてね……!」
俺は宝箱に手を掛けて、持ち手の窪みを触り、開いた。
すると指先に何か違和感が。
多分、罠が作動したんだろう。
痛みは全くない。
革手袋万歳。
そのままギッと宝箱を全開にすると
中身がお披露目になった。
中に入っていたのは……
「魔法薬『デオード』4つか……」
見覚えがあるからこれは俺でも判別できる。
魔法の消臭薬デオードだ。
3階層でよくお目にするアイテム。
「4つだから……4000円か」
俺はそう呟き、流れ作業で戦利品をリュックにしまう。
中身を取り出すと、残った空の宝箱が消滅する。
そして
「……罠が爆弾で無くて良かったな」
「さすがに爆弾はねぇ」
俺の言葉にハハ、と霧生は困ったように笑った。
俺も同じ気持ちだった。
ミスしたらドカーンは解除できんよな。
自分の解除テクにそこまでの自信は持てないわ。
「……そろそろホントに、専門家の人を探すべきなんかな」
俺は半ば本気でそう呟いた。
ここから先、爆弾以上の罠も出てくると思うし……。