第23話 3階層での戦闘は
3階層の草原は、どこからどうみてもそのもので。
遠くで他のパーティーのスポーツ戦闘の歓声が響く中、俺と霧生はさっそく狩りの準備を始めた。
軽く腕や脚の関節を回し、リュックに詰めた回復ポーション3つを確認。
霧生は目を閉じて深呼吸する。
「吉常くん、3階層のモンスターってどんなの出てくるかな?」
霧生がそう、真剣な顔で訊いてくる。
俺も真面目に答える。
「……動物系、植物系だな。1~2階層より当然危険度は高い。油断はするなよ」
俺は剣を構え、草原の奥を睨む。
霧生は俺の言葉に真剣な口調で
「分かってる! でも、私たち2人なら大丈夫だよね!」
そう返した。
そんな霧生のあくまで前向きな態度に、俺はつい苦笑する。
そして歩き始めて数分、草むらがガサガサと揺れた。
……モンスターの気配だ!
俺は咄嗟に霧生を後ろに下げ、剣を構える。
「来たぞ!」
草をかき分けて飛び出してきたのは、犬歯が異様に発達したヒヒ──ファングバブーンだ。
2メートル近い巨体。
そしてその口腔には鋭いナイフみたいな犬歯が唾液で濡れ光っている。
それが3体。
赤い目が俺たちを睨み、唸り声を上げながら地面を叩く。
そこから素早い動きで、俺たちを取り囲むように動き出す。
俺はそこで
「霧生、ファイアボールを頼む!」
そう叫ぶと、霧生が素早く対応してくれた。
「ファイアボール!」
ファングバブーンに手のひらを突きだして。
叫んだ霧生の声と共に、バレーボール大の炎の弾が発生する。
彼女の手のひらの前に。
それがカッ飛んで行き、ファングバブーンに直撃……するかに見えた。
……寸前でファングバブーンはそれを躱したんだ。
炎の弾はファングバブーンを捉えず、地面に着弾した。
だけど。
それが破裂したんだ。
破裂した炎がギリギリで躱したつもりになっていたファングバブーンを飲み込んだ。
キキーッ!
毛皮が焦げる匂いが広がり、ファングバブーンが悲鳴をあげた。
「ナイス!」
ファイアーボールは爆裂弾なんだよ!
エネルギーバレットとは違うのだよ!
俺は自分のことのように笑みを浮かべ、火だるまになって暴れているファングバブーンに斬り付けてトドメを刺す。
――残り2体!
塵になって消滅するモンスターを尻目に、俺は向き直った。
仲間が1体、速攻でやられたからか警戒する怪物ヒヒ2体。
俺を注視してる。
油断ならない相手だと思われているのか。
睨み合う形になった。
俺と怪物ヒヒ2体が。
そこに
「スリープミスト」
……ヒヒ2体を、紫色のガスが包んだ。
ヒヒの方も油断してたのか。
それでクテンッ、と
バタバタ倒れた。
おっと
「うお、まともに入った」
ナイスタイミングでスリープミストを入れた本人は。
その効果てきめん具合に、自分で驚いていた。