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第22話 2人は少ないよな

 俺たちはエレベーターの外に出た。

 エレベーター……外に出てみると、それは立方体の建物だった。

 乗るときはまるっきり普通のエレベーターだったのだけど。


 外に出てすぐに


「うわっ、すごい!」


 霧生の声が弾ける。

 ちょっと嬉しい。


 青々とした草が風に揺れ、遠くの丘からモンスターの吠え声が聞こえた。

 ここは迷宮内であるはずなのに空は青く、雲がゆったり流れてる。


 2階の冷たい石畳とは打って変わって、完全に本物の草原だ。

 そこで


「おーい! ブラックスミロドン逃げ腰だぞ!」


「逃がさないぜー!」


 ……いきなり楽し気な声が聞こえて来た。


 典型的なスポーツ迷宮探索者。


 5人組で、犬歯が発達した大きな黒い虎を狩っていた。


 霧生がガン見して、興奮気味に


「あれがスポーツ迷宮探索者?」


 そう言うので俺は頷き


「……ああいうのは、高額所得者の富裕層だったりするんだよな」


 俺たちは相当頑張ってここまでたどり着いたわけだけど。

 彼らはその頑張りを楽しみながら仕事でのストレス解消がてらに行って。


 こうしてここで、遊びでモンスターと戦うという趣味にしている。


 ……生まれが違うと、こうも違うもんなのかな。

 そんなことを思ってしまうよ。


 何回か人数合わせで雇われたこともあるけどさ。

 そのときのメンバー、本職は全員年収1000万越えてたんだよ。


 何回か関わって思ったことだけど……

 生き方の根底部分が、あの人たちとは違う気がするんだよな……

 無論、あの人たちも遊び半分で鍛えてここに来たわけじゃないんだろうけどさ。


 楽しそうにここまで来てしまうんだ。

 意識高い系っていうのかな。


 そこら辺に、違いを感じる……


 他にも、体色緑色で金色の角を持ち、やたら速い足で駆け回るヘラジカに似たモンスター・ケリュネイアを矢で射て追い回している集団もいる。


 彼らのゼッテー仕留める! って興奮の声。

 ……あの人たちも富裕層っぽいな。


「ここはスポーツが成り立つギリギリの層なんだよ」


 俺は霧生に説明する。

 ひょっとしたら知ってるかもしれんけど。


「宝箱がそれなりに出るから、獲物を倒すだけでなくリターンが期待できるし。やりがいがあるんだよね」


「だよね! 楽しみにしてるんだよね……!」


 宝箱と聞いて霧生の目が、まるで子供のように輝いた。


「……また何か出たらいいな」


 俺は苦笑しつつ、内心で思う。

 俺の言葉を聞き、霧生は


「大丈夫だと思う……でも、2人でどこまでいけるかな?」


 そう、呟いた。


 遠くで、誰かがファイアーボールでモンスターを焼き払い、仲間とハイタッチしてるのが見える。

 それを横目で見ながら霧生の言葉を考える。


「……新メンバー……? うーん……確かに」


 周りで見掛ける人たち、最低でも3人居るんだよな。 

 2人は明らかに少ない……


 でもさ……

 新メンバー、入れるのは決断が要るよな……


 誰でも良いってわけじゃないし。

 変な人間を加入させたら、身の破滅だろ……


 少し悩むが


「まぁ、それはおいおい考えよう。今日はさっそく狩り始めるぞ。準備いいよな?」


 今は考えてもしょうがないし。

 今日は今日の目的を果たすべきだろ。


 そう俺が言うと、霧生が「うん、ばっちり! 行くよ、吉常くん!」とガッツポーズ。

 草原の風が、俺たちの背中を押す。


 3階の冒険が、今、始まる。

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― 新着の感想 ―
なんというか…魔獣だと判ってはいるけど、人語を理解する魔獣を意気揚々と滅殺する気満々の女子高生って、ゲーム感覚なんだろうけど気持ち悪い。 元ネタがモンハンとかなのかな? そのうちファイヤーボールを撃っ…
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