第173話 無敗の騎士の実力は
黄金の騎士の剣の腕は相当なものだった。
振るってる剣は迷宮産の武具と同じ属性があるらしく、ニヒムで破壊することはできなかった。
そのまま俺と黄金の騎士は、剣を打ち合わせ続ける。
金属音が鳴り響き、互いの斬撃を受け止め、斬り返し、それを受け流す。
そんなことを続けた。
――強い!
だけど
挑戦者が「2度と挑戦したくない」と言い切るほどの強さには思えない。
ということは
まだ何かある……?
「吉常サン!」
サクラの声。
それと同時に
「ブリザード!」
夏海の言葉。
その瞬間、俺たちを巻き込む形で。
吹雪の嵐が巻き起こった。
輝く凍結させる風の渦が、俺たちを巻き込む。
俺はダメージを受けなかった。
直前のサクラの声が、実はコールドプロテクションの呪文だったんだ。
まともに喰らえば低体温症による意識低下、身体麻痺。
凍傷による深刻なダメージを負う魔法だけど。
コールドプロテクションがあるおかげで、今の俺には「少し冷たい」程度になってる。
だからダメージは受けていない。
でも……
それは黄金の騎士も同じようだった。
ピイイイイイイ!
笛のような声で、黄金の騎士が叫んだんだ。
夏海のブリザードが発動する寸前に。
その後巻き起こった吹雪の嵐に、俺はコイツと一緒に巻き込まれたが
黄金の騎士は変わらずその剣を振るい続けている。
コイツ、何で夏海がブリザードを発動させることが分かったんだ!?
意味が分からなくて動揺しそうになる。
こいつ……
夏海の魔法を予想して、寸前で自分もコールドプロテクションを発動させたんだ。
直前にいきなり叫んだのは、それ以外考えられなかった。
だってそれまでずっと無言だったんだぞ!?
どうしてだ!?
混乱した。
だけど
ピイイイイ!
再び黄金の騎士が叫び
「吉常サン!」
再びサクラの声。
それは酷く焦っていて
その言葉は
「霧生サンがサイレンス掛けられマシタ!」
マジか……!
音を封じる魔術師系魔法「サイレンス」
それをまともに喰らえば、呪文……つまり魔法の掛け声が出せなくなるから、魔法が使えなくなる。
この魔法は一定時間を待つ以外にも、気合で打ち破ることは可能なんだけど、やったのは黄金の騎士……
生半可な気合じゃ破れないに決まってる。
夏海の魔法を封じられた。
その事実で、俺は黄金の騎士による不可解なコールドプロテクションについて考える余裕が無くなった。
吹き付けて来る殺気を読み取って、黄金の騎士の斬撃を斬り返すが
ピイイイイイイ!
黄金の騎士の叫びが轟き
黄金の騎士は宙を舞った。
背中に昆虫の羽根があるけどさ。
あの羽根で飛べると思えないから
多分今、フライトの魔法を発動させたんだろう。
高いレベルの近接戦闘能力に、魔法……
少なくとも、魔術系と僧侶系の魔法を使いこなしている。
ひょっとしたらこいつ……
戦士、魔術師、僧侶、召喚士、学者。
この5つのクラスを全部持った存在なのかもしれない……!