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第171話 運命だったのかも

 ルビーガルーダたちが鳴き声をあげつつ石室内部を飛び回り。


 夏海たちに吹雪のブレスを吐いている。


 俺はその隙にルビーガルーダたちの死角に回り込む。


 サイレンスのお陰で、俺の身体は音を立てる能力を封印されているので……

 全くの無音。


 その状態でパワーチャージを行い、俺は足に力を溜め……


 跳躍。


 そのまま、無音でルビーガルーダ近くまで跳び上がり、風切り音も立てない俺の剣が


 ルビーガルーダの1体を斬り捨てる。


 ……音が一切しない以上、視認するか臭いを感じるかをしないと俺の場所を特定できないからな。


 音という情報を断たれるのは、こいつらにとって厄介なはずなんだ。


 これで完封できるとは思えないけど、こいつらを焦らせ、戸惑わせるには十分。

 余計に俺の所在に注意を払わせれば、その分他がおざなりになるわけで。


 そんな感じで。

 楽では無いけど、なんとか攻略に漕ぎつけて。

 俺たちは先に進んでいった。



「この階層の迷宮、一本道ですね」


「そうね」


 石室をまた1つクリアして。

 次に向かう通路を歩きながら


 俺は榎本さんに話し掛ける。


「これは迷宮が挑戦者に稼がせる気が無いってことなんですかね?」


 自分の思うところを。


「どうしてそう思うの?」


 そりゃ宝箱の出現率が悪い、というのもあるけど。


「……モンスターと戦える場所にピンポイントアクセスして、終わったらさっさと帰れる構造になってないってことでしょうか?」


 この第9階層。

 モンスターの待ち受けている部屋を避けることができない構造になってる。

 1本道だから。


 これは稼ぎ目的だと不便だ。

 相手しづらいモンスターを無視して、他に行くという選択肢を取れないから。


 まるっきし「ただの障害物ハードル」の立ち位置になってる。


 ……宝箱の出現率があまりにも低いだけなら、そのレア宝箱にとんでもなく良い宝物が入っている可能性はあるから、稼がせる気が無い、までは言い過ぎかもしれないけど。

 構造上、これはただの障害目的だろ。


 俺はそう結論付けた。


 そんな俺の結論に


「流石ね。……ちゃんと理屈を組むのね。そういうところ、前からよね。吉常くんは」


 そんなことを言いつつ、榎本さんは笑った。

 そして


「アタシが話したことも、理屈が通ってるって結論付けたら『女が言ったことだから無視すべき』って一蹴せずにキチンと受け止めてくれたし」


 ……そんなことを言われる、


「えっと」


 答えづらいな。

 確かに俺は、榎本さんと初対面のときは


 女なんか全部自己中。

 自分の利益を可能な限り増やすために、簡単に嘘を吐き、裏切る。


 そういうイメージがあったから。

 最初俺に色々言って来た榎本さんに反発していた。


 どうせ自分の利益のためにノセようと言ってんだろ、って。


 でも


「キミに不本意な死に方されるとアタシが嫌なんだ」


 って言葉に、俺は納得してしまったんだ。


 だって、それは俺だって嫌だったし。

 その気になれば救える他人を、見過ごして死なせるなんて。


 実質的に人殺しだと思ってしまう。


 そのときのことを思い出し、俺は思わず小さく笑った。


 榎本さんは続けて。


「第3階層で再会したのは、やっぱり運命だったのかもしれないわね」


 そんなことを言ってくれた。

 それはそうだな。


 あのとき、俺たちを見つけてくれていなければ、俺たちはきっとここにいない。

 小さな偶然の重なり。


 それはもう、運命と呼ぶべきじゃ無いかな。


「……これが運命なら」


 そこに夏海が加わる。


「きっと勝てるよ。きっと……私たちは、迷宮最下層に到達するために、偶然出会った4人なんだよ」


 夏海の言葉に、俺たちは頷いた。


 そしてそこで

 サクラが呟く。


「……どうみても、最奥デスネ」


 着いた。


 最奥に。


 この第9階層のどん詰まり。


 そうに違いないと思える場所に。



 目の前の壁に、巨大な門がある。


 その門の中には揺らめきがあり……


 番人の部屋への門。

 その転移門。


 この先に黄金の騎士がいる。


 誰も勝つことが出来なかったとされる、最強のモンスターが。


 ……絶対に勝つぞ。

 俺たちの生きている世界を守るために……!


「皆、準備は良い?」


 振り返り、訊ねて。

 全員が頷く様を見て。


 俺は



 その転移門を潜った。

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