第168話 やるしかない!
「神託でそれを訊くのデスカ?」
「うん……もしかしたら曖昧過ぎて駄目だって言われるかもしれないけど」
もし「可能だ」という返答が来たら。
俺たちは動くことが出来る。
最下層を目指せば、この事態を解決できるんだ、って。
……迷宮最下層に到達出来たら、きっと何かを手にすることが出来る。
それは俺と夏海の予想だけど。
その「手にする何か」がこの事態の解決策になるかもしれない……
訊こうとしていることは荒唐無稽な内容じゃない。
やってみる価値は十分にある。
質問内容も確定事項の無い、あやふやなものではないし。
例えば「大学に入れば幸せになれるか?」という質問は確定事項の無い「神託の対象外の質問」だけど。
これが「大学に入ったら幸せになれる可能性はあるか?」これは「確定事項のある神託の対象内の質問」だろ。
大学に入ったことが理由で幸せになれる可能性はあるに決まってるわけだから。
この場合は「可能性はある」という返答にならないと変だろ。
そして俺たちが知りたいのはそこなんだよ。
そこに行くことで、今のこの詰んでいる事態を解決する目があるかどうか……?
夏海の意見に、俺だけじゃ無くて榎本さんも同意したみたいだ。
「……アタシからもお願い。サクラさん、やってちょうだい」
その言葉を受けて
「……分かりましタ」
サクラは頷き。
目を閉じて。
祈るようにその手指を胸の前で組んで。
スッと、精神を集中する様子を見せる。
時間にして1分無かったと思うけど
サクラは突然、ガクッと崩れ落ちた。
慌てて助け起こす榎本さんと夏海。
……神託使用に伴う、過度の消耗か。
「分かりましタ」
そしてしんどそうに。
サクラは教えてくれた。
「……迷宮最下層に行けば、今の状況を全部解決する何かがあるそうデス」
そのことを告げたとき。
サクラは会心の笑みを浮かべていた。
それは俺たちもきっと同じ気持ちで
……よし。
そして俺はその言葉で覚悟を決めた。
「行こう。皆……」
もう、それしか道が無い。
これからすぐに第9階層に突入し。
最奥にいる番人「黄金の騎士」を倒す。
それ以外、もう道が無いだろ……!
そして俺たちはエレベーターに乗った。
サクラは神託の結果を口にした後、疲れ果てて眠りに落ちてしまった。
なので榎本さんがそんな彼女を背負い。
夏海が彼女の荷物を持っている。
全員、固い表情。
一度準備に戻る発想は無かった。
外の世界も迷宮内も、安全とは言い難いから。
俺たちにとって、今一番安全な場所は……第9階層だ。
第9階層には誰も来ない。
サクラの追っ手や、エンマの人間もそこはマークして無いだろう。
そこの入り口で少し休んで、その後突撃だ。
第8階層とは難易度が全然違うという、第9階層の世界に。
チーン、という音がする。
さっきまでゴンゴンという稼働音をさせていたのだけど。
……到着だ。
そして扉が開いて。
俺はその、俺たちの運命を決める階層の光景を目にした。