第156話 忍者の固有能力
週末。
パーティの日。
俺は第8階層の魔界風世界で、1人でモンスターと対峙していた。
相手はダイヤモンドナイト。
ダイヤモンドというのは、別にダイヤモンドで身体が出来てるって意味じゃ無くて。
比喩みたいなもんだな。
良く言うだろ?
ダイヤモンドは砕けない、って。
その意味合いで「ダイヤモンド」の名を持つ戦士型モンスター。
見た目は西洋甲冑そのもの。
色は銀色で。
ダイヤの要素は何もない。
……これで。
火炎、吹雪、電撃、爆発。
全て無効。
ガスも効かない。
そして手に持った長剣と盾が、迷宮産の武具と同じ属性を持ってる。
つまり、壊れない。
だから俺のニヒムを受け止めることが可能なんだな。
なので……
「吉常サン! 頑張れ!」
「吉常くん! 焦ったらダメだよ!」
……後衛2人が直接的に戦えないんだ。
だから今は少し離れた位置で、2人は俺の応援に回っていた。
そして榎本さんは……
今、2人居た。
上級職・忍者の固有能力だ。
その名は「分身の術」
もう1人の自分を出現させる能力で。
その能力を使い、現在夏海とサクラのそれぞれを、専属で守ってる。
……この能力のすごいところは「どちらも本物であり、どちらも偽物」
ここなんだよな。
仮に片方が倒されても、倒された方が偽物判定になって。
残った方が本物になる。
そういう仕組みなんだ。
なので、いざとなれば捨て身で保護対象を守ることが出来るんだよ。
今の榎本さんは。
ガード役を担うなら、これ以上頼もしいことがないよ。
最高の固有能力だと思う。
……その頼もしさを理由に、最下層の話を……
無理か。
分身の術を使えばそうそう簡単に死なないんだから、最下層行ってみましょう!
……なんて言えないだろ。
榎本さん曰く、分身の術は2人とも普通に痛みを感じるらしいし。
死ぬほどの痛みなんて、どうせ助かるからいいや、で割り切れるもんじゃない。
「バーサーカー!」
「クァンジャンシー!」
……榎本さんに念のために掛けていたバーサーカーの魔法が切れたのか。
夏海とサクラの2人が、それぞれ自分の専属榎本さんに魔法を掛け直していた。
バーサーカーは僧侶系魔法。
ランク4の魔法だ。
対象の痛覚を遮断し、負傷が自動的に治癒するヒーリング能力を与える。
万一捨て身で自分たちを護る事態になったときに苦痛が少なくなるように、その気遣いだな。
さて、そろそろ……
俺の方も決めないと。
ダイヤモンドナイトが長剣を突き出して来た。
だいぶコイツと剣を合わせて、コイツの太刀筋は把握した。
俺はそれを最低限の動きで躱し、その鎧の腕の半ばあたりに斬撃を叩き込み
その剣を、握った手首ごといただき
その一撃で動きが止まったダイヤモンドナイトの首を
返す刀で刎ね飛ばし、この戦いを決着させた。