第140話 迷宮探索者の最終形態
「じゃあ、いくよ」
夏海も上級職を取得した。
夏海の上級職は……
魔術師と僧侶の上級職。
その名は「賢者」
賢者の固有能力……それは
夏海の身体がフワリと浮かび上がる。
さっきの言葉が魔法の掛け声……魔法フライトの呪文になってたのか。
榎本さんとサクラに、事前に伝えていたことがある。
無事に俺たちが上級職を手に入れた場合、それを知らせるために……
フライトで塔の屋上の数メートル上に浮上した夏海は
スゥ……とその両手を高く掲げる。
そして
「タアアアアアアア!」
斜め上方に、ファイアーボールを両手で連続で撃ち出したんだ。
ファイアーボールはランク2の魔術師系の魔法だ。
夏海も使い慣れて、今では消耗は初期よりガッツリ減っていると思う。
だけど……
こうも連続で撃ったら、絶対にバテる。
撃ち方がさ……
所謂「グミ撃ち」なんだ。
いくら使い慣れて、初期より簡単に使えるようになったとしても限度がある。
やったら最後、精神的にクタクタに疲れ果てて。
そこで行動不能になってしまう無茶苦茶な行動。
……これまでは、だけどな。
賢者の固有能力名……それは
無限魔法。
まあ無限ってのはオーバーな言い方だけど。
簡単に言うと「魔法使用時の精神力消耗を著しく下げる」これなんだ。
なので今の夏海はファイアーボールをグミ撃ちする攻撃を、選択肢の1つに入れられるんだ。
それこそ、普通のファイアーボールを使用するくらいの重さで。
もし首尾よく上級職を手に入れたら、ファイアーボールをグミ撃ちしますから。
それを確認したら来てください。
そういうことを、この作戦実行前に俺たちは榎本さんたちに言ったんだよ。
合図を受けて、数分後。
榎本さんとサクラが騎乗するワイバーンが、こちらに向けて飛来して来て。
そのまま塔の屋上に舞い降りて来た。
そして榎本さんとサクラの2人も黄金のクリスタルに触れる。
触れた途端、榎本さんが
「やったああああああ!」
腕を振り上げ。
跳び上がって。
喜ぶ。
まるで子供みたいな様子で。
これまで俺たちに見せて来た様子と全然違うので、俺たちは思わず唖然としてしまった。
まぁ、大人でもそうなってしまうくらいにすごいことなんだって分かるけどさ。
なにせ、この日本で上級職を持った日本人は俺を含めてたった27人しかいないんだし。
さっきまでは24人だったわけだけど。
榎本さんが手に入れた上級職は「忍者」
召喚士と戦士のクラスを持つ人間が辿り着く上級職。
そしてサクラは……
「オオ……」
彼女も震えていた。
彼女の祖国でも、上級職はたくさんは居ないだろうし。
興奮しないわけ無いよな。
……彼女の場合は……
僧侶と学者。
辿り着く上級職は「司祭」
固有能力は……
ああ……何だっけ?
その辺調べたの、学者を取る前だったしなぁ……