第139話 上級職を手に入れた!
シャドウガーディアンを倒した……
ハイクラスクリスタルの最後の番人を排除したんだ。
やった……!
喜びのまま、俺は口角が上がるのが止められず。
周囲を見回した。
俺はシャドウガーディアンに集中してて
肝心のハイクラスクリスタルの所在をまだ確認していない。
でもそれは、すぐに見つかった。
場所違いでした、錯覚でしたということは無かった。
あったんだ。
キラキラと黄金の光を発しながら輝く大きな結晶が。
大きさは他の2つのクリスタルと同じくらい。
他の2つと同様に、宙に浮いた状態で輝いている。
でも……
他の2つと、段違いの神々しさを感じた。
足が震える。
興奮で。
あれに触れれば、念願の上級職を手に入れられる……!
「あれが……」
夏海の言葉。
彼女の言葉も震えてて。
興奮が伝わって来た。
俺は唾を飲み込む。
そして俺がハイクラスクリスタルに触れようと動き出す前に。
夏海が転移後の姿勢……この塔の屋上の床にペタンと座り込んだ姿勢から、立ち上がって
俺の傍に来て、手を掴んだ。
そして
「行こう。天麻くん」
夏海の誘い。
俺は頷き、その黄金の結晶に震えながら歩み寄る。
近づくほどに、俺の中で興奮が高まり、眼が釘付けになっていく。
俺の手を握る夏海の力も、強くなった。
ほぼ全力で握ってるんじゃないかと思うくらいに。
そしてとうとう、俺の前にやってきた。
日本の全迷宮探索者が、最終的に取得を目指す大目標……
上級職。
俺たちは手を伸ばす。
俺は右手を。
夏海は左手を。
その手が……ゆっくりと輝き、透き通っている黄金の結晶に近づいて……
ピタリと、触れた。
ハイクラスクリスタルは、なんだか暖かく
触れた瞬間
『よくぞここまでたどり着きました。今から授けるものは、あなたの取得して来た2つのクラスの能力の終着点です』
……脳内でそういうことを誰かに言われた気がした。
その瞬間、自分の中で学者のランク5の能力が開花した実感が湧く。
その名は「並列思考」
2つのことを同時に行えるようになるスキル……!
俺の二刀流にうってつけ。
二刀流に興味を持って良かった。
このスキルがあれば、これまで以上に二刀流が生きるじゃないか。
そう思う。
続けて
俺の頭の中に、俺の上級職の名前が告げられる。
その固有能力の詳細と共に。
そして
『あなたの上級職名は……』
その名前を脳内でイメージで聞いたとき。
俺は衝撃を受けた。
何故って、それは……
『勇者です』
……勇者。
俺の上級職は、勇者……
この名前の衝撃。
勇者だって……!?
学者と戦士の組み合わせの上級職は、勇者なのか……!
俺はその事実に、震えがくるのを抑えられなかった。