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えっ、吉常くん大学行かないの?~托卵で生まれた俺、大学に行かずに迷宮探索者で立身出世を目指す~  作者: XX
第9章:初めての経験

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第121話 凶行の結果

「何してんだテメエはァ!?」


 反射的に俺は、その人物に掴みかかっていた。

 後姿しか見えなかったが


 その人物は女で。

 若く無くて


 髪の毛が長くて、ボサボサで

 くたびれた服には……


 何か見覚えがある。


 そしてその横顔が後ろから見えたとき


 気づいた。


 ……牝豚!

 俺の母親だ。


 ナイフの刃とコイツの顔が結びつき。


 牝豚が夏海を刺した。


 頭の中でその結論に至ったとき。


「テメエ!」


 ……横っ面を拳で殴っていた。


 手加減なんてしていない。


 ウボァ!


 悲鳴と共に吹っ飛ぶ牝豚。

 牝豚は白いものを散らばらせていた。


 俺の拳で歯が折れたらしい。


 だけど、そんなことは気にしなかった。


「大変だ! 女の子が刺されたぞ!」


「救急車!」


 ワンテンポ遅れて、周囲の人もこの事態に頭が追いついたみたいで。

 騒ぎ


 スマホを取り出したり、俺が殴り飛ばした牝豚を取り押さえたり。

 ギラギラ白く輝くナイフを取り上げたり……


 ……えっ?


 ナイフに血がついてない……?


 俺は夏海を見る。


 彼女は


「……ちょっと肝が冷えたけど、大丈夫だった」


 そんなことを、ナイフが突き立てられたのか


 自分のお腹あたりをさすりながら言ったんだ。

 妙に落ち着いた声音で。


 夏海はどう見ても無傷だった。




「何で死んでないの!?」


 町内会の人々に取り押さえられながら。

 自分のナイフが綺麗なままで、夏海が瀕死になっていないことに気づいた牝豚が、まるで非難するように叫んだ。

 夏海は


「ギリギリでプロテクションを唱えたからですけど?」


 そんな牝豚の言葉に。

 全く怯えを見せない声音で返す。


 防御力を上昇させるランク1僧侶系魔法「プロテクション」を唱えた上に、ジャージを着込んだ夏海を刺すことは牝豚の身体能力では無理だった。

 なるほど……


 でも、何で?


「天麻くん、私は日常的にエネミーサーチを使ってるの」


 ……ああ。


 多分あのときからだな。

 俺が夏海に告白したとき。


 多分、夏海を先に呼び出していた……原間……だっけ?

 そいつが怒り狂って襲って来ないか……


 多分、その用心で。


 それが生きたのか


「だから一応、だいぶ前から私に敵意を向けている誰かが接近していることは分かってたけど、狙いは私だけのように思えたから、まさかここで襲ってくると思って無くて……教えなくてごめんね」


 少しバツが悪そうに夏海は俺にそう告げる。


 そうか……

 多分、草取りの間は襲って来ない、来るなら人が捌けてからだろうから、その前までに教えればいいや……

 そう思っていたんだな。


 夏海は色々気を遣うしな。


「そんなのずるいわ!」


 だけど。

 俺のそんな安堵と、彼女の気遣いへの感謝の気持ちは


 牝豚の叫びで掻き消された。


「お前が息子を誘惑したからこうなったんだ! お前さえ殺せば全部元通りになるんだ!」


 取り押さえられたまま、そう狂ったように喚き散らす牝豚は……


 どうしようもなく転落していた。


 髪の状態が酷いのは気づいていたけど。

 服がよれよれの部屋着で、外に着て行けるものじゃない。


 化粧品を買う金も無いのか、すっぴんで。


 目は血走っていた。


 そんなみすぼらしい姿で牝豚は

 俺に視線を向けて


「天麻、あなたは騙されているのよ!? お母さんを信じなさい」


 唾を飛ばして、醜く、見苦しく


「この女はあなたを誑かして、奴隷にするつもりよ」


 俺に媚びるような声音を使いつつ。

 夏海をこき下ろす言葉を吐き散らした。


 ……こいつ、俺に接触したら養育費の使い込みの請求が復活するから、直接は来なかったけど。

 俺の様子を嗅ぎまわることはしてて、そこで夏海の存在に気づき


 夏海が俺を自分から奪い取ったからこうなった。

 そう、事実を捻じ曲げて認識したのか……


 自分のそれまでしてきたことを全て忘却して……!


 牝豚は夏海に汚い言葉を投げつけ続ける。


「平気で身体を使いそうだし」


 ……そりゃかつてのお前のことだろ。

 そう言いたくなることばかりを。


 そして


「きっと、托卵するわ!」


 そう、牝豚が口にしたとき。


「いい加減にしろ!」


 俺は衝動的に。

 牝豚の顔面に拳を叩き込んでいた。


 手加減なんて考えていない、衝動的な拳を。

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