第117話 彼女が水着に着替えたワケ
夏海は動揺する俺を置いて
「お風呂、着替えるのに借りるね」
そう言って、水着を持って引っ込んでいった。
何でいきなり……?
別に着てみて欲しいなんて言ってないのに……?
俺、何かそう思われるようなことを言ったのか……?
自分の言動を必死で振り返る。
自分の言ったこと、振る舞いを思い返す。
だけど、分からない……
そしたら数分くらい経ったのか
浴室のドアが開いた。
夏海の着替えが済んだんだ。
中から……夏海が、黒のワンピース水着姿で出て来た。
手には脱いだセーラー服を持ってる。
下着は……多分、セーラー服で包んでるんだろうな。
俺の選んだワンピース水着。フリルが胸元を隠して、清楚で、布地は多め。
でも決してダサくない。俺の目には。
すごく似合ってる。
可愛い。
あと、胸のあたりとか腰回りが……やっぱグッとくる。
……俺の彼女がこんなに綺麗で可愛いなんて……
そう思い、少し感動すらしていたら。
夏海はローテーブルの自分の席に戻り、服を横に置いて水着姿で座って。
「天麻くん。話があります」
……少し、固い声でそう切り出して来た。
「まず、プレゼントは嬉しいです。ありがとう。感謝してます。そこは疑わないで」
彼女の固い声で戸惑っている俺に。
夏海はまずそう言って来た。
俺には話が見えないけど……
俺は頷く。
彼女はそれを確認し。
続けて
「……もし仮に、だよ?」
夏海はこう言ったんだ。
顔を赤らめながら
「何かで……こ、コンドームが必要になって、私が天麻くんに何も訊かないでピッタリのものを用意して来たらどう思う?」
言われて。
……ハッとした。
そうだ。
俺、最初に
最初のプレゼントに水着を選ぶのはキモがられないか?
そう思ったんだよ。
だけど俺……
学者の頭脳で夏海にピッタリのサイズのモノを選べるんじゃないか?
そう思ったとき。
そっちに集中して、他のことが全く見えなくなっていた……!
うわ……
「ゴメン!」
頭を下げた。
最悪だ。
最初のプレゼントで大失敗だ!
夏海は完璧なプレゼントをくれたのに!
罪悪感で染まる俺の心。
そして何で夏海が突然水着に着替えたのかも理解できた。
着替えて言わないと、ただ単に俺のプレゼントに文句を言ってるだけになるからだ!
彼女のそんな気遣いが嬉しかったし、同時にさらに申し訳なくなった。
そんな俺の謝罪に
「別に怒ってるわけじゃないから!」
夏海が少し慌てたように返して来る。
そして続けて
「でも、ピッタリだよ! 胸がキツイとか、お尻がキツイとか全然ない! 本当にピッタリ! そこはすごい!」
腕を広げて、俺の選んだ水着が自分のサイズにピッタリ合ってることを教えてくれた。
彼女は
「これはきっと、天麻くんと学者というクラスが相性良いってことなんじゃないかな!?」
そう言ってくれた。
相性良い……
彼女の気遣いに、俺は心をグッと掴まれたようになり。
同時に俺は、彼女が俺を想ってくれるのと同じくらい、彼女を好きでいようと思ったんだ。