第113話 初めてのプレゼントは
ジュエルゴーレムは宝石で出来たゴーレムだ。
大きさは8メートル程度。
怪力であり、身体は固い。
……俺には関係無いけどな。
ニヒムで問題なく斬れるから。
弱点は額に嵌ってる宝石。
多分強度的にガラス玉レベルだと思うんだけど、そこだけ脆くて。
そこを砕くと、ジュエルゴーレムは死んでしまう。
というか、そうする以外倒す方法が無い。
俺が足を切断しても構わず攻撃して来るし。
血も流れないから。
……コイツの良いところは、倒したら確実に宝箱が出ることだな。
確定で出るんだよ。こいつだけ。
中身も悪く無いし。
この前に倒したときは、盾の指輪が出た。
今、夏海の左手の中指に嵌ってる指輪がそれで。
それはグッと握って意識すると、そこにビームシールドみたいなもんが発生する。
それで指輪なのに、迷宮産の盾を携帯してるのと同じ効果があるんだよ。
当然高く売れる。
アドベンチャラーズで売却すれば、20万円は下らなかったハズ。
色々考えて、夏海の装備で落ち着いたのだけど。
同じものが出るといいな。
そして俺たちが榎本さんの案内で、岩の間を縫うように走り。
辿り着いた先。
居た。
大きさ8メートル程度の、複数の宝石で出来た1体の巨人が。
全体的な形状は、荒く、ゴツゴツしてて。
精巧な作りじゃない。
大雑把だ。
でも顔の部分にはちゃんと凹みだけだけど、目と口がある。
本当に凹みだけだけどな。
鼻は無い。
身体を構成している宝石類は色とりどりで、紫や緑、赤や青。
キラキラしてて綺麗。
もし、倒した後にこの身体がそのまま宝石になるなら、一体いくらになるのやら。
……残念なことに、倒すと消えるのよね。
ごおおおおお……
声なのかなんなのか。
妙な音を立てて、ジュエルゴーレムがこっちを向いた。
気づいたらしい。
榎本さんは
「さあ、とっとと片付けましょう。稼ぎどころよ!」
そう俺たちに呼び掛けて
「……ヴェロキラプトル!」
戦うために、ランク4の召喚獣……
ヴェロキラプトルを魔法陣の中から呼び出した。
白亜紀に実在したヴェロキラプトルは軽量級の恐竜で、あまり力強くは無かったらしいけど……
この召喚魔法ランク4で呼び出すヴェロキラプトルはそうじゃない。
恐竜系モンスターパニック映画で厄介な敵として登場するそれ、そのものだ。
体長は3メートル近く、後ろ足で立つ二足歩行。
そして前足はモノを掴むのに適しているというより、引き裂くことに適しているように……
鎌のような鉤爪がついている。
まあ、それは後ろ脚もそうなんだけどな。
顔は肉食恐竜そのもので、体色は緑。
その目には爬虫類特有の無機質な光があった。
クエエエ!
爬虫類が鳴くなんて聞いたこと無いけど。
こいつは何故か鳴き声を持っていて。
呼び出した主人に気合を入れるためのように吠えた。
「OK行くわよ!」
榎本さんはそんなヴェロキラプトルの背中に跨って、槍を構える。
まるで竜騎兵。
そして俺はニヒムを抜いて
「任せて下さい!」
一番に、ジュエルゴーレムに突っ込んだ。
結果としては、あっという間に勝負がついた。
突っ込んだ俺がジュエルゴーレムの足を1本切断し。
そこに榎本さんが、バランスを崩したジュエルゴーレムの額のガラス玉を砕いて。
それで勝負あり。
そのままお楽しみの宝箱タイムに移行する。
……しかしなあ。
水着……
サクラの件ははっきりとは回答出なかったけどさ。
はじめてのクリスマスのクリスマスプレゼント……
そっちは
非常用の水着なんてのは、どうなのかな……?
実際、必要になるわけだしな……
でも……キモいなんて思われないかな?
そんなことを。
サクラが素早く宝箱の罠解除に踏み出しているところを見つつ、そう考えた。