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第112話 ベイルアウト

「恋さん、外に非常用の服って用意してますか?」


 そして週末。

 迷宮第7階層……岩山の世界でのパーティ活動中。


 夏海が榎本さんにそんなことを言った。


 榎本さんは手頃な岩に腰掛けて。

 目を閉じて、じっと意識を集中していたが


「んー、してないかな」


 目を開けて、夏海の質問に答える。

 ……召喚獣複数匹放って偵察してたのに。


 夏海にとって、今訊かないといけない問題……なんだろうなぁ。


 訊くの忘れて、いざそのときが来たら困るし。


 僧侶のランク4魔法……「ベイルアウト」を使うそのときが。




 ベイルアウトは緊急脱出魔法。

 使うと、術者と術者が同行している仲間と認識しているメンバー全員が迷宮外に脱出できる。


 ……ただし、その際に一切の持ち物を持っていくことが出来ない。


 つまり、全裸で自分が入って来た迷宮入り口に放り出されるんだ。


 そのまんまだと逮捕されるのは必至。

 なので非常用の服を用意する必要があるのだけど……


「恋さんはどういうものを考えてますか?」


 まぁ、女性は気になるよな。

 俺なんかはパンツ1枚とTシャツを確保しておけばいいかな、って軽く考えていたけど。


 女性の場合は、全裸で外に放り出されるのは大問題だろ。

 気になるはずだ。


 夏海の質問に榎本さんは


「ワンピース水着かな……」


「えっ、水着ですか?」


 夏海が意外そうなことを言う。

 榎本さんは頷いて


「だって裸で放り出されるわけで。下着から何から何までアドベンチャラーズで預かってもらうわけにはいかないでしょ」


 ……そう、もっともなことを言う。


 あー……


 確かにな。

 男はパンイチでも別に「ベイルアウトしたからしょうがないんだ」と言い張れるけど。

 女性の場合は下着姿を余儀なくされるのはあまり平気じゃいられないかも。


 しかし、水着か……


 ワンピース服をそのままノーパンノーブラで着ると、色々透けて見える可能性あって問題あるかもだし。

 そこから考えると、水着は選択肢として悪くないかもしれない。


「サクラさんは何か考えてる?」


 俺が榎本さんの言ったことを頭の中で反芻していると。

 夏海がサクラにも質問を飛ばす。


 サクラは大阪の入り口から入ったらしいし。

 ……榎本さんは住所から考えて、岡山の入り口だから……


 対処法がちょっと思いつかないんだよな。

 外の世界に着替えを預かってくれる人が居ないんだ。


 すると案の定、サクラは首を振った。


「ワタシ、外デ登録できまセンから、不可能デス。ベイルアウトしたら裸で迷宮に戻りマス」


 そしてなんかとてもいい笑顔で明るくにこやかにそう返して来た。

 いやいやいや。


「何か方法考えようよ! まずいだろそれ!」


 思わず俺がそう言うと、彼女は


「……デスカ……」


 顎に手を当てて思案顔。

 俺も言い出した手前、脳をフル回転させた。


 外の世界に着替えを預かって貰えないんだから……


 やっぱ、迷宮の中に置くべきなんだろうか?

 その場合、どこに置くべきか……?


 入り口近辺は人が多いから他者に見つけられる恐れがあるし。


 植木鉢でも置いて、その下に隠すとか……


 そんな感じで、色々考えているそのときだった。


「あ」


 榎本さんが声を上げて立ち上がり、愛用の槍のファウストを手に取る。


 ……見つけたのか。


 そして次に言ったことは


「この先100メートルくらいの位置に、ジュエルゴーレムがいるわ。行きましょう。見逃す手は無いわ!」


 案の定だったよ。

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