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第111話 道交法を無視できる身分

「今日は遅いね。どうしたの?」


 夏海は俺の傍に降り立って、俺が何故今の時間帯にここに居るのか訊いて来た。

 俺は


「……朝飯の味噌汁の鍋をひっくり返した……具材の豆腐が熱で柔らかくなってて、絨毯が……」


「あらら」


 俺の不運話を、夏海が気の毒そうに聞いてくれる。


「それはツいて無かったね」


「ああ、片手鍋で汁物を作るのはもうしない」


 話して少しだけ、イライラが収まる。

 ありがとう、と口にして


「……夏海は今の時間が普通なの?」


「うん。ランク4になってフライトを習得したから、普段使いさせて貰ってる」


 語る夏海は楽しそうだ。


 前に言ってたけど、フライトではその気になれば原付くらいのスピードが出るみたいで。

 気持ちいいらしい。


「フライトで飛んで登校する場合、直線距離を飛べばいいから時間かからないし疲れないし危なくない」


 なんせ、ランク4の魔術師を持ってる人があんまりいないからね。

 この街では多分私1人だし。


 ……空の世界に入門しているのはこの街ではきっと私だけだから、混雑しないわけですよ。


 確かに。


 ひょっとしたら、ランクが高くなると普段使いで圧倒的に有用なのは魔術師かもしれないなぁ。

 ランク5になるとテレポートもあるしな。


 そんなことを考えていたら


「天麻くん、信号無視したいの?」


 夏海が俺に、道交法を無視したいのかと訊いて来た。

 訊き方ァ……


 俺は


「できれば」


 なんとなく、夏海が何を提案して来るのか予想しつつそう返す。

 彼女は多分、フライトで道路の向こう側に運ぼうかと言ってくれている。


 フライトは魔法で飛ぶわけだから、女の子の力でも実現できるよな、それ。


 するとそれは予想通りだったんだけど……


「じゃあ、ハグしよ」


 そう言って彼女は両手を広げて来たんだ。

 えっと


「……何で?」


 ちょっとドキドキしながらそう訊くと、しれっと彼女は


「天麻くんの体重を、私が持ち上げられるわけないよね? 私、戦士持ちじゃないんだから」


 ……なるほど。

 彼女が俺を引っ張り上げるのではなく、俺が彼女にしがみ付いて、彼女のフライトに便乗させてもらう。

 その形式しか無理なのか。


 納得。


 ……だけどさ。


 彼女に密着したことはこれまで多分無かったはずなんだ。

 少なくとも彼女への恋心やらを自覚した後は。


 だからまあ……

 ちょっとだけ勇気が要った。


「失礼します」


 そう言って彼女を抱き締めるようにしがみ付く。


 彼女の身体は俺より小さくて、壊れそうに感じた。

 すると


「じゃあ、いきまーす」


 フワッと。


 彼女の身体が上昇していく。

 俺は彼女から落下しないように少し強めに抱きついた。

 彼女の体温や、身体の柔らかさが伝わって来る。


 ……特に一部、異様に柔らかい存在を感じてしまった。


 そこだけ神経が数倍敏感になっていた気がする。


「……はい、着いたよ」


 移動時間は10秒かかっていなかったハズだ。

 だけど……


「ありがとう。ちょっと先に行って」


 向こう側に着いた俺は、すぐには走り出せなかった。

 だから彼女に、俺を置いて先にフライトで登校を再開してくれと言ったんだ。


 ……ちょっと前屈みにならないといけない状態になっていたせいで。

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更新お疲れ様です。 >天麻くんのもう一本の魔剣が臨戦態勢に 若いからね、しょうがないね(温かい目) でも服越しに「ウホッ…!!」と感じるお山が二つ……夏海ちゃんのはわりかし標高が高い(意味深)んです…
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