第104話 対になってる魔法
俺は油断なくサファイアドラゴンの動きを見守っていた。
夏海を守るためにその前に陣取って。
サファイアドラゴンは放電と強風で攻めて来る。
放電は射程がおそらく5メートルくらい。
放電をしようとするとき、サファイアドラゴンは必ず接近して来るんだ。
感覚で言うけど、その射程は自分の周囲の半径3~4メートルだな。
確かめたわけじゃないが、ヤツの動きを見た感じ、そう思うのが自然だと思う。
そして使うときに一瞬タメがある。
動きが止まるんだ。
そこが隙になるので、サクラと夏海が矢と魔法での連打を狙ってて。
そのせいで、サファイアドラゴンは全力の放電が出来ない。
そんな感じの、膠着状態。
そして
あと一応、サファイアドラゴンには風を操る能力もある。
で、そっちは射程が放電よりずっとあって。
使うときに硬直が発生するようなことは無い。
なのでだ。
サファイアドラゴンのやつ、放電の隙を産むために、強風で牽制して来るんだよ。
俺は夏海の前で、風から彼女を守っていた。
魔法使用の邪魔にならないように、風から彼女を守るんだ。
風の強さは台風くらい。
身体ごと吹き飛ばされはしないけど、目を開けるのに苦労をするレベル。
砂が舞い上がって来るので、余計にそれが加速する。
サファイアドラゴンはそこから生まれる隙を狙っている。
榎本さんとサクラは、この風で行動できなくなっていた。
サクラの弓は、この風で矢を射掛けるのが不可能になってて。
彼女的には詰んでるみたいだ。
それを理解しているのか、サファイアドラゴンはあっちに注意を払っている様子が無い。
サファイアドラゴンとしては、夏海さえ倒せれば勝ちだと思ってるみたいだ。
まぁ、多分。
その通りなんだが。
「な……霧生、風に耐えられているか?」
夏海と呼びそうになりつつ、背中側に居る彼女に確認する。
すると
「……大丈夫。あなたが守ってくれてるから……」
そう言ってくれた。
その声に俺への信頼と感謝を感じて。
俺は奮い立った。
奮い立ちはしたが……
手が無い。
番人の間が、屋外であることは計算に入れて無かった。
飛行能力がある番人なんだから、あり得るのに。
飛ばれるとホント、手が無い……!
これはいよいよとなったら、1回逃げることも考慮に入れて……
逃亡した場合って、ペナルティってあるのかな……?
聞いたことは無いけど……
そう思ったそのときだ。
ふと、気づいた。
……そういえば。
僧侶の魔法と魔術師の魔法って、一部対称的になってるんだよな。
例えばランク1の魔術師の魔法に眠らせる魔法「スリープミスト」がある。
そして僧侶のランク1には、反対に覚醒させる魔法の「リフレッシュ」があるんだよ。
こういうのは他のランクでもあって
僧侶ランク2ではファイアーボールの効果を無効化できる耐熱魔法「ヒートプロテクション」が。
そしてランク3にはブリザードの効果を無効化できる耐冷魔法「コールドプロテクション」があるんだ。
つまりだ。
何が言いたいかと言うと……
「サクラさん!」
俺は声の限りに叫んだ。
「ミェンイーファンイェンシャンハイ!」