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第101話 テキニカツ

 俺が自分の家を手に入れた後。

 俺の、というか俺と夏海の生活に、新しい習慣が追加された。


 ……毎週週末金曜に、夏海が俺の家に来て


 夕食を作ってくれるようになったんだ。


「今日はステーキにしよう」


 下校途中、スーパーに寄って買い出しをするとき。

 夏海は俺にそう言ったんだ。


 自分の買い物籠に国産牛のステーキ肉を2枚放り込みつつ。


 続けて


「あと、豚のヒレ肉。トンカツ作る」


 そして続けて豚ヒレ肉のブロックを籠に。


 えっと


「肉と肉?」


 飲み物として、グレープジュースの1リットル紙パックを確保しながら俺は訊く。


 ステーキとトンカツって。

 野菜なしか。


 俺のそんな指摘に


「いや、野菜も当然使うよ?」


 冷蔵庫にキャベツ入って無いの?

 無いならそれも買うけど。


 ……あくまで、ステーキとトンカツ。

 その2種が大事だから。


 俺の目を見て力強く言う夏海。


 その理由は……


「ゲン担ぎ」


 ……俺たち、明日サファイアドラゴン戦に挑むんだよな。

 そのゲン担ぎってことか。




 敵に勝つ。


 ステーキのテキに。

 トンカツのカツ。


 そこから来るゲン担ぎメニュー。


 ……ゲン担ぎするのは分かるけど、ステーキとトンカツにそんな意味があるんだな。


 家に帰って、夏海がステーキ肉と豚ヒレ肉の処理をしている中。

 夏海に言われて、トンカツを揚げるための準備をした。


 卵割って、ボウルで溶いて。

 薄力粉とパン粉の準備をして……


 下処理をしたヒレカツに、ボウルとバットの上で卵、薄力粉、パン粉をつけていく。


 その間に夏海はステーキ肉を焼いていた。


「ねぇ」


 フライパンで肉を焼きながら夏海は


「7階層に行ったらさ、これまでよりもっと収入上がるでしょ?」


「そりゃね」


 どのくらい上がるのか知らないけど。

 8階層で戦う迷宮探索者は、トップレベルで年収10億に届くとか聞いたことあるし。


 7階層でも今の十数倍くらいは行くんじゃないのかなと思ってる。

 するとだ。


 夏海は


「そうすると、銀行1つじゃ足りなくない?」


「……何で?」


 恥ずかしながら、俺は知らなかった。

 このことを


「銀行って、1000万円までしか預金を保証してくれないんだよ?」


 ……何でも。

 銀行が潰れた場合も預金している人は預金を守って貰えるけど。

 その上限が1000万円らしいんだ。


 それ以上は保証されないらしい。

 なので、銀行が潰れるなんてほぼ無いと思っていいと思うけど、念のために1000万円超えたら新しく他の銀行に預金口座を作るのが、高額所得者のあるあるなんだってさ。


「……良くそこまで気が回ったな」


 俺の言葉に夏海はえへへという感じで笑って


「……実はお兄ちゃんの受け売りなんだよね。お兄ちゃん、お給料殆ど貯金してて、銀行1つ口座を満タンにして」


 そこで夏海の今の状況を知り、銀行の預金が1000万円超えるようなら新しく口座を作れとアドバイスしてきたんだと。

 そうなのか……


 しかし……


「夏海はお兄さんと仲良いんだな」


「良いよ~。昔、ゲームのセーブデータを間違えて上書きしたときは、おもくそ叩かれたことあるけど」


 なんか笑顔で対応に困ることを言われた。


 まあ、正直。

 いつかは会って挨拶したい。


 ……認めて貰えるなら嬉しいんだけどな。


 そんなことを、食卓にも使ってる俺の家のローテーブルに、2人で作ったトンカツの大皿とステーキ2人分、茹でたキャベツを並べつつ。

 なんとなく考えた。

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