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第100話 これからは天麻くん

「えっ」


 流石に戸惑う。

 何で?


 俺の様子に彼女は


「だって、名字変わったんでしょ?」


 うん。

 そうだね。


 彼女には知っておいて欲しかったから、自分の名字が変わることは伝えていた。


 だからまあ、霧生をさっき迎え入れるとき


 吉常くん


 って呼ばれたけど。

 正確には「頼朋くん」だ。


 混乱があるから、在学中に学校での呼び名をそっちに切り替える気は無いし、多分迷宮パーティ内でも訂正はしないつもりだったからスルーしてた。


 だけど霧生はそれは嫌だそうだ。

 俺を旧姓で呼び続けるのは嫌なんだって。


 で、名前で呼びたいと。


 名前呼び……


 まあ、名前呼びでないと霧生だけ今の名字で呼んだら混乱を呼ぶよな。

 一体誰のことを言ってるんだ? って。


 だとすると、ここで名前呼びに切り替えるのは自然かもしれない。

 一番混乱を呼びにくいから。


 だから


「分かった。そうしよう」


 俺は彼女の意志を受け入れることにした。

 そしてそれは


「じゃあ、今後は私のことも名前で呼んでね。天麻くん」


 ……そっちもセットだよな。

 常識的に考えて。


 笑顔の夏海に俺は、ちょっと照れ臭かったけど頷いて


「分かった。夏海」


 そう返した。




「天麻くん、ゴミの日は月水金だよ?」


「そういうのは元々俺がしてたから心配無用だよ。夏海」


 食べきれなかった味がしつこい麻婆豆腐をラップして冷蔵庫に仕舞った後。


 ゴミ出しの話になった。

 夏海はお兄さんが家を出るときに、彼女の母親に言われていた注意事項の確認をしてきたんだ。


 やれゴミの分別をしっかりやれとか。

 トイレとお風呂、シンクの掃除は絶対にサボるなとか。


「水回りは運気に関わるって言うし。別に風水を信じてるわけじゃないけど、気分悪いでしょ」


 他にも、地域住民の草抜きやゴミ拾い等の労働奉仕のときは自分を呼び出してくれとか。

 ここはマンションなんだから、ひょっとしたら理事長の役目が回ってくるかもとか。

 町内会の寄り合いの話なんかは来てるのかとか。


 ……なんというか


「やってること、母親っぽくない? 夏海?」


 ふと、世間一般の母親像に近いことを言ってる気がして、そう言ってしまったんだけど。


 そこで


 牝豚のことが頭にちらつき


「悪い」


 詫びた。

 俺が言うと、アイツと同じって言ってるように聞こえるよな。


 だけど


「気にしないで」


 夏海はそう俺に言って来て


 俺に身を寄せて、俺の頬に手を寄せて。


 キスをしてくれた。


 そして


「……母親はこんなことをしないでしょ……? って、そういう意味で言ったんじゃ無いよね」


 そう微笑みながら言ってくれたんだ。


 ……なんだか、包み込まれているような気になった。

 彼女の想いに。

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更新お疲れ様です&累計100話到達おめでとうございます! そう言えば天麻くんと夏海ちゃんだったかファーストネーム…この回までぶっちゃけ忘れてました(笑) しかしホントに良い娘を捕まえましたね吉常くん…
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