戦いの終わり
ウルスラは巨大な炎の剣のひとつを持ち上げた――その巨大さは、まるで地平線さえも揺るがすほどだった。
彼女は一瞬の迷いもなく、その剣を隕石のように投げ放った。
危険を察知したシアンはすぐにしゃがみ込み、両手を地面につけた。
「大母なる樹よ――《大地の極み》!」
大地を突き破り、山のように巨大な木が現れた。枝は空に届かんとばかりに伸びていた。
だが、その剣はあっさりと木を真っ二つに切り裂いた。まるで紙のように。
それを見たシアンは剣の上に跳び乗り、その上を駆け抜けていく。剣が地面を削りながら進んでいく中、彼はその勢いに乗った。
だが、途中で彼は横を見る――
もう一振りの巨大な炎の剣が、怒りの炎をまといながら彼に迫っていた。
「これでも耐えられるかな…?」
シアンは手をかざすと、地面から巨大な蔓が生え出て、剣に巻きつき、その動きを封じようとした。
一瞬だけ、それは成功したかに見えた――
だが、すぐに蔓は燃え上がり、乾いた紙のように焼き尽くされた。
剣は自由を取り戻し、そのままシアンへと突き進む。
だが、彼はそれを片手で受け止めた。
衝撃は地面を揺るがすほどだったが、
シアンは叫び声とともにその剣を脇に投げ飛ばした。
剣は地面に激突し、広範囲を破壊した。
間髪入れず、シアンは先ほどの剣の柄へ走り、その反動を使ってウルスラへ跳躍する。
「これで終わりだ!」
だが、彼女に届く直前、もう一振りの巨大な炎の剣が横から現れた。
シアンは腕を交差させて防御しようとする。
しかし、その刃は彼を直撃し、彼の体を弾丸のように空へと吹き飛ばした。
彼は稲妻のごとく飛ばされ、山に衝突して巨大な土煙と岩の爆発を引き起こした。
ウルスラは空中に留まり、落下地点をじっと見つめていた…
だが、土煙の中から影が彼女に向かって飛び出した。
彼女は目を見開き、驚愕する。
「なっ…!?」
巨大な岩――まるで隕石のような塊が彼女に向かって飛来していた。
避ける暇もなく、彼女は直撃を受け、そのまま空中に吹き飛ばされた。
瓦礫の中からシアンが現れた。体は埃まみれだったが、彼の顔には勝ち誇った笑みが浮かんでいた。
彼はそのまま、指を岩に向けて突き出す。
その胸元から、淡いピンク色の花が咲き始め、腕に巻き付き、指先まで伸びた。
「さよならだ、炎の女王…」
花が一瞬輝いたかと思うと、ピンクの光線が放たれ、岩を貫いた。
戦場を覆うほどの爆発が起きた。
その衝撃で空の雲は吹き飛ばされ、青空が広がる。
岩の破片はミサイルのように飛び、風の衝撃波がすべてを薙ぎ倒した。
地面は割れ、崩れ落ち、大地そのものがその力に怯えているかのようだった。
ウルスラの姿は、爆発の中に消えた。
シアンは腕を下ろし、息を切らしながら荒廃した光景を見つめた。
「…終わったのか?」
その瞬間、炎の刃が彼の首元に触れた。
シアンの体が凍りつく。
ゆっくりと顔を向けると、そこには短剣サイズの炎の剣を首に突きつけるウルスラの姿が。
「どうして…?」とシアンは呟いた。困惑と驚愕の表情。
「終わりよ。あなたの負け。」
ウルスラの目は冷たく、殺意を孕んでいた。
だがその時、シアンの肩から蔓が伸び出し、剣に巻きついて攻撃を止めた。
その隙にシアンは飛び退き、距離を取った。
「降参する気はなさそうね。」
ウルスラは炎に包まれる蔓を見ながら言った。
「当然だろ!俺、死ぬにはカッコよすぎるからな!」
そう言ってシアンは両手で自分の顔を覆い、キラリと笑った。
「まだ俺を知らない美人たちがたくさんいるんだ!」
ウルスラは眉をひそめ、明らかにイライラしていた。
「……もういい、今度こそ本気でいくわよ。」
ウルスラが真剣な表情で剣に手をかけた。
しかし――
「わかった、降参する。」
「…は?急に何それ?なにか企んでるの?」
ウルスラは警戒し、少しだけ構えを緩めた。
シアンは腕を組み、真面目な声で言った。
「お前が本気で戦うなら、俺が勝てるわけない。
それに…その剣を使う気なんだろ?
お前がそれを鞘から抜いたら、生き残ったやつなんていないって噂じゃん。」
ウルスラはその目を細めたが、剣は抜かなかった。
「いいわ。じゃあ、欲しいものを渡して。」
「だから言ってるだろ?俺は持ってないって。」
シアンは呆れたように目を回した。
「そんなわけ…」
「言うと思った。」とシアンが遮る。
「だったら、《個の存在接続》を使おう。
俺が嘘をついてないって、すぐにわかる。」
《個の存在接続》――
それは、互いの無意識を繋げ、真実だけでなく隠された記憶までも映し出す力。
そして何より…嘘がつけない。
ウルスラは数秒沈黙し、考え込む。
「……いいわ。」
彼女は静かに答えた。
二人は手を取り合い、柔らかな光に包まれた。
時が経ち…
二人は湖の前の岩に座り、石を投げて遊んでいた。
ウルスラは大きくため息をついた。
「信じられない…本当に持ってなかったのね。」
シアンは肩をすくめ、また石を投げた。
「だから言ったじゃん。」
「なら最初からそう言えばよかったでしょ!
無駄に時間かかったじゃない!」
ウルスラは怒り気味に言う。
「はぁ!?最初に言っただろ!
お前が聞かずにいきなり攻撃してきたんじゃん!」
シアンは抗議した。
ウルスラは少し考え込んだ…
そして、最初のやり取りを思い出し――
確かに彼は「持ってない」と言っていた。
彼女は顔をそむけ、腕を組んで拗ねたように言った。
「それでも…あんたのせいよ。」
「はぁ!?なんで!?」
シアンは叫び、ため息をついて首を振った。
「…わかったよ。お前が正しくて、俺が間違ってた。これで満足?」
「まあ…少しね。」
ウルスラは立ち上がり、鎧の埃を払った。
「…もう行くわ。」
シアンは黙って地面を見つめていたが、やがて笑顔で立ち上がる。
「仕方ない、ついて行くしかないな。」
ウルスラは驚いて彼を見た。
「え…?勝手に決めないでよ。」
「俺も一緒に断片を探したいんだ。
強い味方がいれば心強いだろ?
特に、そいつがこの俺ならな!」
そう言って、自信満々に笑った。
ウルスラは小さく鼻で笑い、腕を組んだ。
「さっきまで降参してたくせに、よく言うわね。」
「戦略だよ戦略!生存戦略!」
シアンはヒーローのように腰に手を当て、笑ってみせた。