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№7 いやーんバカンス。夏だっ!ホラーだ!恐怖だっ!~後編~

 夏はホラーだね。


 ☆

 ここはとある孤島にある高級ホテルなのです。

 しかし、ここにはとんでもない秘密が隠されていましたとさ。

 そう、ホーンテッドホテルなのです。

 ザ・ホラーナイトComingナウ。

 



 昼間、大暴れしたピノたちは、夕食後、ホテルでバタンキューと倒れていた。

 真夜中、外は昼間の晴天から一変し、大嵐となり、豪雨と雷が打ちつける。

 さながら絶海の孤島の様相を呈している・・・ゆうても500m先は陸があるのだが・・・。 


 実はホテルの裏には古い大きな墓地があった。

 どこでも似たような話はある。

 リゾートをすすめる外から来た大企業に、昔から住んでいる人々は、なす術もなく大金をつかまされ島から追いだされてしまった。

 おかげで墓地は荒れ果て、しかもその半分は建設したホテルの下に眠っている。

 そして・・・偶然にもピノたちが、プライベートビーチで水泳大会をした遊泳コースが、死者を蘇らせる禁断の呪法である魔法陣を描いてしまったのだった。

 暗闇に稲光が走る。

 大雨の中、墓場の盛土から無数の手が現れる。

 デーデーン!


「スリラーかよっ!」

 うなされていたピノは思わずツッコミをいれて起き上がる。

「夢・・・」

 そっと窓際を見ると、稲光が次の瞬間、カーテンには人影のシルエットが映しだす。

 ドンドンドンドン!!。

 窓が激しく叩かれる。

「ぽうっ!」

 ピノは思わず、ベッドから飛び起きムーンウォークをしながら叫んだ。


 ちょうどその頃。

 ガリィは豪奢なバスローブを着て、でかいワイングラスを回して悦に浸っていた。

 きっとピノがその場にいたら、YOU次郎と言われていたに違いない。

 しぐれは浴室でシャワーを浴びていた。

 そう、ちょっこし昔のB級ホラー映画でよく観たアレだ。

 美しいしぐれの裸体が足元から舐めるようにあがってくる。

 鼻歌まじりに彼を呼ぶ。

「♪ガリィ~ガリィ~♪」

 すると、彼女の目の前に壁を突き破り両手が飛び出す。

「きぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁっ!」

 ただしB級ホラーと一味違う、なんちゃって、なろうファンタジー拙作であるいけせばのしぐれは、出てきたゾンビの腕を両手で掴むと、片っ端にへし折って逃げた。


「どうしたしぐれっ!」

「しゃ社長・・・じゃなかった殿下・・・でた・・・でたっ!」

「なにが、う〇こか?いきなりそんなプレイを・・・私は・・・いや、まんざらではないぞ」

「このスカポンタンっ!ゾンビ、ゾンビがでましたっ!」

「なぁにぃ!やっちまったな」

「2人は黙って・・・」

「逃亡っ!」



 ピノの危機をマッハで感知したせばすてぃあんは、すぐさま彼女の元へ駆け寄る。

「ピノ様っ!」

「せばすてぃあん!」

 瞬間、窓ガラスが破られ、ゾンビたちが大挙して押し寄せる。

 間一髪、ピノはせばすてぃあんと手を握りしめ部屋を脱出する。

 扉をしめる。

 ドンドンドンっ!!

「脳みそ~っ!」

 屍たちは恨めしそうに叫ぶ。

「バタリアンね・・・懐かしいわ」

 ピノは遠い目をして言った。

「ピノ様ご無事で」

「ええ・・・ま、ゾンビなんて、アタシたちが本気でやったら、ちょちょいのジョイですわよ」

「・・・ピノ様、それをやっちゃあ、このホラー回はおしまいです」

「姉ちゃん、それを言っちゃあおしめえよ・・・ってか」

「???」

「・・・えへへ」

 取り繕うピノ。

「だが、しかし美しい」

 一向に介さないせばすてぃあん。

「扉を塞ぐど」

 見つめ合う2人をよそにマリーはテキパキと、周りにある花瓶や机で、屍の進行を止めるべく扉を塞いだ。


「こっちです!」

 するとガリィの声が3人に聞こえた。

「いきましょう」

「ええ」

「んだ」

 ガリィとしぐれと合流したピノたちは、大きな会場へと辿り着いた。


「ここは・・・」

「ここはライブ会場」

 ガリィは両手を広げると目はガン決まりで豹変する。

「は?」

「ピノ様、マリー殿、しぐれ、皆さんには今からアイドルをやってもらう!」

「はあ?」

「説明しよう。ゾンビたちは太陽の光に耐えることは出来ない。すなわち、この夜を耐え忍べば我々は助かるのです。それには惹き付けるこれに限ります。かつてここの孤島の住人たちは陽気でお祭りが大好きな人々で熱狂しやすいタイプでした。3人の力を合わせ熱いライブを起こなえば、きっとゾンビたちも襲いかかるのも忘れタイムオーバーとなり土に還るだろう」

「強硬突破は・・・」

 しぐれはおずおずと手をあげた。

「しぐれーっ!それは言わない約束でしょう」

「・・・なんか、すいません」

「わかったか!なら衣装に着替えて、観客(ゾンビたち)が待つステージにあがるのだ」

 3人は首を傾げつつ不承不承楽屋へと向かった。

「私は・・・」

 一人浮いたせばすてぃあんにガリィから手渡されたのは、サイリウムだった。

「せばす殿、貴公には最前列でピノ様たちを応援していただく」

「ありがたき幸せっ!」

 せばすてぃあんは土下座をして喜びに打ち震えた。

 

「なんですか?この衣装は・・・」

 しぐれはその奇抜な衣装に驚いた。

「ギラギラのビカビカだと」

 マリーも頷き、衣装の眩しさに目を細める。

「あーこれね。ジュリーがTKIOを歌った時と~タケちゃんマンの衣装だねぇ」

 ピノは等身大の鏡に映した自分の姿を見て、くるりと一回転した。

「???」

 当然、分からない2人。

「・・・。女の子が着れば可愛いアイドル衣装になる訳ね」

 彼女はフォローした。

「なるほど言われてみれば、奇抜さの中にも可愛らしさがありますね」

「んだ」


 ガリィがパンと手を叩く。

「では、お前たち、数千人の観客(ゾンビ)がお待ちかねだ」

 しぐれが震える手をあげた。

「ちょっと待ってください。私たちはステージで何をやればいいのですか」

「決まっているだろ。アイドルだよ」

 ピノは思案しつつ、

「昭和、平成、令和、いずれのアイドルたちなの?」

「???」

 またしても妙な空気となるが、マリーがそれを打ち破った。

「んだば、いくべか」

 彼女は両手で自分の頬を叩くとマイクを握りしめ、気合をいれる。

「どうしたのマリー?」

「おらぁ、メイドさやる前は吟遊詩人をやっていたんだど。昔取った杵柄を見せる時ズラ」

「それは、心強いです」

「まさかの真打登場ね」

 ピノとしぐれは顔を見合わせ安堵する。


 ゾンビで満員の会場が獲物は今かまだかと苦悶の絶叫をあげている。

「んだば、おらぁが一丁、ふるさとの村うた歌うだ」

「よしっ!奇跡のアイドルユニット、ピノマリシグレットのデビューだっ!」

 3人は右手を差し出し円陣を組む。

「いぐどっ!ピノマリシグレットっ!ふぁいっ!」

「おーっ!」

 3人は右手の人差し指を天に高々とあげる。

 マリーは、女は度胸とばかりに、ステージに飛び出して行った。

 後に続くピノとしぐれ。


 3人の獲物に気づいたゾンビたちは、猫まっしぐらにステージへと襲いかかろうとする。

 一陣の旋風。

 次の瞬間、大半のゾンビが倒れた。

 せばすてぃあんが、七色のサイリウムでアドレナリン全開のファン(ではないゾンビ)たちに愛の鉄拳制裁をかましたのであった。

「尊い~ピノ様っ!L・O・V・E・ピノマリシグレットっ!」

 彼はひたすらサイリウムを振り回し、彼女たちを応援する。

 そんな姿を見て3人は頷く。

「みなさん。聞いてくんろ。『村娘むらむら』」

 マリーは歌いはじめる。



 村娘むらむら         作詞おそらく村長 作曲不明


 村の娘はむらむらだ

 オラの心もムラムラだど

 村祭りの夜は村の村じゅうムラムラだ

 はぁ~むらむらむらむらむらむら

 へぇ~むらむらむらむらむらむら

 娘っ子も~

 男ん子も~

 祭りばやしにむらむら

 林の影でむらむら

 あっちもこっちもむらむら

 はあーん今宵は

 村の祭りだむらむら

 朝までみんなでむらむら

 村娘

 村娘~

 今日から立派なおなごだドン



「ちょっと、なにコレこの歌」

 しぐれは泣きそうな顔をして必死にそれっぽい踊りをしている。

「完全なる選曲人選ミスね・・・かくなる上は」

 ポランはマリーが歌い終わるのと同時にセンターに飛び出した。

「あゆーれでぃ!」

 ピノは絶叫する。

「いぇぇぇっつっす!」

 3mは飛びあがってジャンプするファンの鏡せばすてぃあん。

「へいへいへいへいへい」

「ヘイヘイヘイヘイっ!」

「へいっ!」

「ヘイっ!」

「ヘイヘイホー」

「へっ・・・へいほー?」

「よさ・・・く・・・どひゃあっ」

 ピノが前傾姿勢で拳を握りしめこぶしをふるわせた時、ついにゾンビが怒りだしステージにあがって、急造アイドルたちに襲いかかる。


 アイドル、せばすてぃあんVSゾンビ群入り乱れての大乱闘となり、会場はもはや収拾がつかない状態となってしまう。

 その最中、舞台袖で仁王立ちするガリィが言葉を放つ。

「お前たちのアイドル魂はそんなものかっ!」

「ガリィPっ!」

 しぐれはゾンビからマイクを奪われそうになっていたが、ハイキックで屍の延髄にぶちかましポーズをとる。

「んだっ!」

 マリーはゾンビに腰の入った肘鉄をかまし、ジョジョ立ちをする。

「アタシの・・・アタシたちの歌をきけ~っ!」

 ピノは両手にマイクを持ち、顔に近づけて叫んだ。

 彼女たちの気迫におされ、ステージにあがったゾンビたちは次々と吹き飛ばされる。


 ステージ上にはピノマリシグレットとせばすてぃあんが立っている。

「ピノ様っ!」

 彼はサムアップする。

「うん」

 彼女も笑顔でサムアップ返しする。

 せばすてぃぁんは、ステージを降り、ゆっくりとサイリウムを振る。

「すうっ」

 ピノはステージの空気を吸い込んだ。



 いけせば~はじまりのうた~    作詞ピノマリシグレット 作曲ガリィP


 私はあなたに首ったけなのですう

 愛は突然

 であったその瞬間から

 刹那の閃き

 サンダーボルト

 ビリビリきちゃう

 だっちゃ

 っとあるある歌いたい

 それが乙女なの

 アイドル恋愛禁止

 それが何?

 アタシたちの愛は誰にも止められない

 邪魔させない(マリー)

 ツラヌキ通すの(しぐれ)

 いけせばいけせばせばすてぃあん

 いけせばいけせばせばすてぃあん

 いけない人だわせばすてぃあん

 ゴーゴーレッツGOレッツGOレッツGO

 ゴーゴーレッツGOレッツGOレッツGO

 私たちのはじまりの言葉

 いけせばいけないせばすてぃあんっ!

 るるるる~

 アイシテル

 君だけを

 アイシテル



 しぐれは華麗なステップを踏み続け、マリーは体格を生かし豪快に踊る。

 そして歌い終わったピノはマイクを高々と掲げる。

 ドンっ!

 歌が終わり、一瞬の間と余韻・・・のち襲うのを忘れてしまったゾンビたちの熱狂の絶叫が渦巻く。

 せばすてぃぁんは涙を流し続けている。

 ガリィは大きく頷く彼女らアイドルの成長を確信した。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・。

 やがて朝陽が差し込むと、ゾンビたちは皆、心を震わせながら土へと還って行った。



 こうして再びリゾート地に平穏が訪れたのでした。

 デッドゾンビナイト・・・。

 歌姫たちの夢一夜、いかがでしたでしょうか。

 たまにはこんなお話もいいよね。

 



 ゾンビナイトっ。

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