№6 いやーんバカンス。夏だっ!海だっ!水着だっ!~前編~
無理矢理ねじこむ。
ピノたちはパルムへの帰国を決めた。
旅支度を整えガリィガリィ3世に別れの挨拶を告げに玉座の間に赴いた。
大臣ミカンがガチャリと扉を開く。
「おっと、こりゃまた失敬」
ピノは赤面する。
玉座に座る3世の膝の上には、しぐれがワンワンよろしく乗っており、彼にONEちゅーるをあーんしていた。
「うおっほん!」
ミカンは大きな咳払いをする。
2人は慌てて離れ、その場を取り繕う。
「どうした。用件を申せ」
「殿下」
「なんだ」
「仲睦まじきことは良き事、じゃが、結婚をまじかに控えて、チョメチョメしようとするのは時期尚早・・・自重するのも肝要かと思いますぞ」
「チョメチョメっ!山城○吾ね」
ピノは目を輝かせて呟いた。
「許せ」
「ごめんなさい」
ガリィガリィとしぐれは老臣に謝った。
「分かれば、よろしいですじゃ」
ミカンは尻尾を振って、ピノたちに一礼をする。
「お別れを言いに来ましたの」
ピノ、せばすてぃあん、マリーは並び挨拶を告げる。
「おお、親愛なるピノとその仲間たち、名残惜しいのう。もうしばし滞在されては」
ガリィガリィは寂しそうに言う。
「そろそろ国さ、けぇらねぇと」
マリーは言った。
「そうですか」
立ち上がった、しぐれの耳と尻尾が寂しそうに垂れる。
「王様、そして次期王妃様、我ら旅立ちの時が来たのです」
せばすていあんは恭しく一礼をする。
「ま、そういうことですわ」
ピノはドレスのフレアスカートを両手に持って挨拶をした。
「困ったな」
ガリィガリィ3世は呟いた
「ええ」
と、しぐれ。
「なにがですの」
ピノは訝し気に尋ねた。
「いや、作者の都合で件の回は、ムフフな水着なお話にするべすと、次回予告をうった訳で・・・」
「そんなの関係ありませんわ」
ピノは言い放った。
「然り」
せばすていあんは頷く。
「しかし、せばす殿。水着回ですぞ」
「・・・みずぎ」
せばすていあんは、その甘美な言葉に顎に手をあて思案し、ピノをチラ見する。
「良き」
彼は呟いた。
ピノはせばすてぃあんの熱い視線を感じつつも、マリーやしぐれのぼっきゅんぼん的ボディに比べ見劣りするのが恥ずかしかった。
お子様ぼでぃに水着回は酷すぎる。
出来れば水着回は御免こうむりたい。
(失敬するべき)
そう思い至った彼女は、
「ささ、お暇しましょう」
と、2人を促す。
「待ってくださいですじゃ。ここから南へ5㎞に、アカーギ国一番の観光地、くりーむシチーアジ・ビーチがあるのですじゃ」
ミカンが待ったをかける。
「ほう」
「だど」
せばすてぃあんとマリーが興味を示す。
「し・か・もっ!」
3世は、ピノの眼前に顔を近付け、
「メシは旨いし、リゾートホテルで温泉もショッピングも充実っ!」
まさに通販番組のノリでグイグイやってくる。
「わぁ♡すごい陛下~」
某ゆ○グループ社長の愛人、演歌歌手ばかりにしぐれは、ヨイショを怠らない。
「しかも~今なら~タダっ!た~だのVIP待遇!」
「うそ~陛下の太っ腹~」
「でしょ。でしょ」
2人は右手を掲げて、ピノにどうですかアピールをした。
「はあ」
ピノは脱力する。
「すごいな」
「すごいだす」
明らかに前向きなせばすとマリー。
「でも、ま、今回は急ぎますので」
あくまでも丁重に断ろうとするピノ。
「待ちなさいのですじゃ・・・最後まで話を聞いてくだされ」
ミカンは後ろ扉に仁王立ちし行く手を遮る。
「・・・よくてよ」
ピノは両手を組んで付き合うことにした。
「あれは一か月前のことですじゃ。夏が押し迫ったある日、作者は無性にバカンスしたいと思ったのですじゃ。だけど、ままならぬ現状、せめて物語の中だけはと、思いを馳せ水着回にしたいと切望したのですじゃ」
ミカンは潤んだ瞳をピノにむけた。
「関係ないわ・・・いや、カンケーないね。キョウヘイ・シバタっ」
しーん。
「なあ。ピノ殿。今からでも(話)はやり直せる」
3世は前かがみで、右手を広げ訴える。
「なんだか崖の上に立っているみたいだわ」
ピノは呟いた。
「そうよ。まだ若い。何度もやり直せるわ」
しぐれも訴える。
「そうね。カメラマンとジャーナリストが見えたわ。ナギサー&Aイチロー」
ピノは瞳を閉じあの頃を思いだす。
「ピノ様」と、せばすてぃあん。
「御決断を」と、マリー。
「御決断を」と、2人。
「まさかの軽運送っ往年のCМっ!だけど、アタシ達には国でやるべきことがあります。そうでしょ?せばすてぃあん、マリー?」
彼女は真っすぐ2人を見た。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「さ、行きましょう。せばさん、まりさん」
ピノの頭の中には、あの漫遊時代劇のテーマソングが流れだした。
「待ってください。今はそれよりも大事なことがあります」
「んだ」
執事と従者は真剣な眼差しを姫へと向ける。
「ふう」
ピノはやたらと食らいつくふたりに溜息をついた。
「いいですか。ピノ様。今という時間はここでしかないのです。間違った選択をすれば、かけがえのない時間は失われてしまいます。決断は・・・」
「ご決断だす」
せばすとマリーは訴える。
「ああいえば、ジョーyouね」
ピノは根負け寸前だ。
彼は畳みかける。
「私はあなたの水着が見たいんだ」
「何度も言うよ。残さず言うよ。せばすは露出が見たい。」
「ふう」
彼女は溜息をついた。
「わかったわよ」
「よっしゃああああああああっ!!!」
ピノ以外の皆たち狂喜し作者は安堵したのであった。
アカーギ国、有数のリゾート地であるくりーむシチーアジ・ビーチは、各国から貴賓たちが訪れるほどのセレブ観光地である。
ピノたちが訪れたのは、そこから舟で500mほど離れた孤島、王家御用達のプライベートビーチだった。
どこまで広がるブルースカイ、透明度の高い海、そしてサンゴ礁・・・。
「♪あ~アタシの恋は♪」
ピノは思わず口ずさむとともに、親衛隊の「L・O・V・Eせ○こちゃーん」の大合唱を思いだした。
「ふう、スクールメイツ懐かしいわあ」
そっちかいと作者はツッコミを入れ、ピノは目を細める。
「・・・だけど、せばすてぃあん」
彼女は両腰に手をあて、彼を睨む。
「どういたしましたか」
ピノを見つめ続け、うっとりとした目でせばすてぃあんは言う。
「たしかに水着を用意してってお願いしたけど、なんで、アタシはスクール水着なの」
「趣向っ!」
「誰の?」
「私めの」
「じゃ、許すっ」
「あり難き幸せ」
「さでど」
白いワンピース水着を来たマリーはウィンクする。
「みなさ、泳ぐべ」
真赤なビキニを着たしぐれは、
「負けませんよ~」
と、サムアップする。
「ふふふ、かつてフジヤマのトビウオと言われたアタシのじつりき見せてあげるわ」
一人お子ちゃま体系のピノは胸を張る。
そんな後ろ姿を眩しい目で眺める。
せばすとガリィは、
「おいおいおい」
「丸見えだねぇ」
「おいおいおい」
「すごいねぇ、すばらしーいねぇ」
と、大満足であった。
「んだば、あそこにあるブイにタッチして一番はじめに戻ってきたら勝ちだと」
マリーは海の向こうを指さす。
「分かりましたわ」
しぐれは頷いた。
「急遽はじまった女だらけの大水泳大会ね。負けないわよ」
ピノは砂浜に線を引く。
「よーい」と、藤岡せばす。
「ドンだねぇ」と、中尾ガリィ。
3人は一斉に海へと駆けだした。
ざぶん。
一番手で豪快に腹打ちダイブしたピノだったが・・・。
(あー足がつってしまいましたの~ラジオ体操第二しとけばよかったわ~)
ぶくぶくと泡を吐き出し溺れる。
「すわっ姫っ!」
目を皿のようにして瞳孔をガン開きにしていたせばすてぃあんは、彼女の危機を受け駆けだす。
「すわっ!って口で喋る人初めて見た。せばす殿、やるねぇ」
顎に手をあてサムアップするガリィ。
「きゃーん溺れてしまいましたの」
ピノは手をバタつかせる。
すっ。
せばすてぃあんが背中から抱きしめ、立ち上がる。
「おっ、お姫様だっこやーん」
ピノは頭上のせばすてぃあんを見上げ顔を赤らめる。
「ご無事でしたか、姫っ」
キリッとええ顔で微笑む。
「そこ水深30㎝だす」
「ねっ」
と、先を泳ぐマリーとしぐれに言われた。
「しゃーらっぷっ!」
「びーくわいえっとっ!」
2人は赤面し叫んだ。
マリーとしぐれはぐんぐんとスピードをあげ、ピノを置き去りにした。
「ああ、もうあんなに・・・アタシの足がこむら返りしなければ・・・」
「姫っ、諦めたらそこで終わりですよ」
「どっかで聞いた台詞ね」
「私はあなたのイルカなのです」
「せばすてぃあん、まさか、あなた・・・」
「私の背に乗って、勝利を手にするのです」
「イルカに乗った少年・・・いや、さしずめ少女ね」
「さあ一刻も早く乗ってください・・・それとも諦めるのですか・・・」
「せばす・・・水泳が・・・レースがしだいでず」
「ならば、さあ、さあ、せばすはイルカなのです」
「うん!ライドオンタイムっ!」
「むきーっ、愛の目覚めっ!」
彼女の脳内に、達郎orMAXの件の曲が流れながら、イルカに乗った少女は、信じられないスピードで追い上げた。
ガリィ談によれば、「あれは本物のイルカだった」と・・・。
時折、水面をジャンプし猛追するピノとイルカ、そして・・・。
「なっ!」
「なにぃっ!だす」
しぐれとマリーを、強引なスイミングで一瞬で吹き飛ばし、抜き去る。
「ピノ様っ」
「うん」
ブイへのターンはVモンキーで鋭角に決め、ピノはタッチする。
「仏恥義理っ!」
そのままゴールへと一直線。
まさに愛の勝利だった。
・・・な~んてね。
後編へ続く。
水着回(笑)。