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№3 結婚式をぶっ壊せ

 まさか・・・。

 

 ある日、ピノは王に呼び出された。


「何ですの、お父様。アタシはせばすてぃあんの尊顔を見るのに忙しいのですわ」


「お前に話があるのだ」


「では、早急にお願いしますわ」


「喜べピノ」


「?」


「お前の縁談が決まったぞ」


「?な、なんですって」

「お前は隣国、イムラー王国のアイスマンドゥ陛下と結婚するのだ」


「そんなバナナ。アッチョンブリケっ!」


「?」


「アタシには心に決めた人がいますの」

 ピノは真っすぐな目で王を見た。


「なにを言うか!いくら、せばすてぃあんが高貴な者だとしてもだ。あやつはあくまでもお前の執事である。ワシはお前の幸せ、国の安泰の為、此度の婚儀を整えたのだ」

 テラオー王は激昂して言った。


「アタシは嫌です」


「これは王命だ。逆らうことは断じて許さん。イムラー国への出発は3日後だ。よいな」


「そんな」



 ピノは寝室の豪華天蓋付きのベットで泣き続けた。


「よよよよよよ、こんなって、こんなのってないわ~・・・どぼじで(どうして)~」


 コンコンと扉がノックされる。


「誰?」


「せばすてぃあんめでございます」


 ピノは鼻をすすり、息を整える。


「今は一人にしておいて」


「姫・・・父王に会われてから、様子が変です。何かあったのかと」


「心配にはおよびませんわ」


「そんなことはない!」

 扉の向こうから、せばすてぃあんは叫ぶ。


「だから、アタクシは・・・」


「私の地獄耳があなた様の泣き声をとらえました。姫の泣き顔を思うと、我が胸がかきむしられるようだ。ああ切なさと愛しさと混在するあなたの心強さよ」


「すとりいとふぁいたあ。とんだ地獄耳。「家政婦は見た!」の秋子もびっくりだわ」


「ピノ様、さあ、オープンザドアです。そしてついでに心のドアもオープンしちゃいなさい」


「せばすてぃあん。それはまだ早くてよ」


「そ、そ、そんな馬鹿なっ!」


「まるで若林君がペナルティエリア外から決められた言い草みたいね」


「?私はあなたを愛しているのです」


「愛していると言ってくれて、ありがとう・・・でもお父様には逆らえない」


「・・・姫様」


「おお、せばすてぃあん、あなたはなんで、私のせばすてぃあんなの?」


「おお、姫様っ!ピノよ。あなたはなんてピノなんだ」


「せばすてぃあん。アタシは国の為に嫁ぐこと決めました。憐れなアタシを許して」


「おおっ!姫様、なりませんぞ。私にはあなたが必要だ」


「あいにーどゆー」

「あいらぶゆー」


「ったく、全く、うるさいずら!」

 部屋じゅうに響く大音量で、2人が語り合っているのを、マリーは呆れた顔で部屋の掃除をしながらつぶやいた。


「けっきょく南極大冒険」

 マリーのリズミカルな言葉に敏感に反応し呟くピノであった。



 ・・・3日後、パルム公国王女ピノはイムラー王国へと嫁いでいった。


「流行の服はお嫌いかね」

 イムラー王国のアイスマンドゥ王は、ピノへの豪華な贈り物の山を前にして、チャイナドレス風の衣装を両手で持ち上げ言った。


「ああ、思わずバルスしたくなっちゃったわ。それにアンタの性癖丸出しのドレスじゃないの。それっ!」

 ピノは後ろを振り向き小声で悪態をついた。


 イムラー国王アイスマンドゥ、大柄な肥満体の身体に温厚な顔立ちで、国民達からの信頼は厚く善政を敷く為政者とされている。

 表向きは・・・。


「ふむ。まあいい。お前はもう私の物だ・・・私の可愛いピノや、よいな、今は第二夫人であるが、お前の今後の行いによっては、第一、正妻にしてやってもよいのだ。それほどお前の幼なボディは私の扇情をかきたてるのだ」


「とんだド変態ですわね」


「お褒めに預かり恐悦至極だよ。ピノ。我らは結ばれる運命にあるのだ。かつて我らの王国は一つであった。光の王国パルムと裏を司るイムラーいつしか、二つの国は互いの利権を求め別れた・・・実に由々しきことだ、そうは思わんかね。ピノ」


「別に」

(思わずエ〇カ嬢っぽく言っちゃった)


「光と闇が一つになる時が来たのだよ。ピノリウス」


「ああ、せばすてぃあん・・・もうドロボーさんでもいいから助けて欲しいわ・・・って、ピノリウス?」


「君の王家はそんなことも忘れてしまったのかね。パルムイム=ピノリウスハムニダ。古い王家の名だよ」


「うわぁ、もう、なんか、ごちゃまぜで、韓流の香りまでも漂わせているわ~」


「ピノ、愛している」


「ヨーモニー」

 ピノの頭の中には「冬のソ〇タ」のオープニングが映し出された。


「よいか、ピノ式は明日だ。覚悟を決めよ」


「・・・アタシには・・・好きな人が・・・いますの」


「ふん。人は何色にも染まる。ワシがお前をワシ色に染めてくれようぞ。空に太陽がある限りっ!」


「まさに栄華を極めた王者の風格・・・だが、あきらが見えますわよ」


「もはや。これは運命なのだよ。ピノ」


「ディスティニーは人に委ねるものではありませんわよ」


「は、お嬢様風情が意識だけは崇高だな」


「アタシは・・・」


「もう、そこまでだ。ピノ。私は忙しい。お前にかまけている暇などないのだ。たかだが第二夫人の・・・」


「なんですって!」


 刹那、アイスマンドゥは剣を抜き、ピノの喉元へ突きつけた。


「それまでだ」


「・・・・・・」


 彼は踵を返しその場を立ち去る。


「よいな。運命には決して抗えん。明日までは気持ちも心も切り替えるのだ」

背中越しに威圧の言葉を言い放つアイスマンドゥ。

ピノは拳を震わし、唇を噛みしめた。



 一方、その頃、イムラー国の片田舎の廃墟にて。


「せばす様、式は明日とのことずら」

 マリーは片膝をついて、せすばすてぃあんに諜報した情報を伝える。


「そうか、ならば急がねばなるまい」

 せばすてぃあんは頷いた。


「だす!」


「こんな式ぶっ壊してやる」


「やるべす!」


 2人は頷き決意を固めて、廃墟を出ていった。



 翌日を迎えた挙式の日。


「さあ、ついに光と闇が一つになる日が来たのだ」

 アイスマンドゥは下品にも腰をクイックイッと動かしながら、白いウェディングドレスに身を包んだピノに近づいた。


「・・・・・・」

 ピノは言葉が喋れない。

(一服盛りやがったな。このハゲ親父・・・って、このハゲ―!)

 彼女は頭の中で悪態をつく。

 

「おしゃべりなお前の為だ。式では無言の沈黙がYESとなる。すなわちお前は黙っていればいい」


「・・・・・・」

 ピノはキッと王を睨んだ。


「よい。その目・・・だが、やがて私の調教により、いずれ従順な雌犬へとお前は変わる・・・変わらざるをえないのだ・・・何故だか、分かるか」


(何言ってんの。こいつ)


「お前の後ろにあるもの。ゆめゆめ忘れるな。私はお前が裏切ったら容赦はせぬ」


(・・・・・・)


「ふはははは、ピノよ観念するのだ。お前は私の物、この事実はどう足掻いても揺るがない」


(・・・・・・)


「そろそろ、時間だ。ピノ晴れの舞台にまいろうぞ」



 白い大理石の宮殿には、入り口から長いレッドカーペットが敷かれている。

 世紀の挙式に、イムラーの民はもちろん、来賓並びに貴族、王族たちも2人の登場を心待ちにしていた。

 普段の職種と同様、執事と給仕に成りすまし、宮殿に忍び込んだ、せばすてぃあんとマリーは、その時を待ち固唾を飲む。


 やがて大司教が姿を現して、宣言する。

「アイスマンドゥ陛下とピノ妃入場です」

 

 万雷の拍手が沸き起こる。

 が、それは信じられない阿鼻叫喚な地獄絵図のようだった。

 シンジラレナーイ。

 

アイスマンドゥの首根っこを抑えたピノがナックルパートを陛下の額にお見舞いをしていたのだった。

 会場から悲鳴があがる。


「オラ、元ヤンなめなんよ」


「待て、待て、話せば分かる」


「もう、堪忍袋の緒が切れたわ」


「こんな事をしてどうなるか分かっているのか!お前の国がどうなっても・・・」


「五月蠅いっ!」

 ピノの髪の毛は逆立ち、怒髪天となった。


「あわわわわっ!」


「この権威を笠に着る為政者が!叩き斬ってやる」

 ピノは背後から制止に入った、近衛兵にノールックで後ろ蹴りをする。

兵がレイピアを持ち振りあげた右手首に足裏があたり、彼は宙に武器を放つ。

真上で2、3回転し、ピノは片手でレイピアをおさめ、アイスマンドゥの喉元に突きつける。


「なんという無礼横暴極まりないっ!お前は立場を・・・ぐっ」

 剣先を喉にあてる。


「〇すぞ」

 ピノはドスの利いた重い声をあげる。


「・・・・・・」


「王を救えっ!」

 兵士達がピノと王の周りを取り囲む。

 式場は騒然となり、聴衆は息を飲んだ。


「覚悟しいや」

 ピノは極妻の名台詞を吐き捨てると、レイピアを振り回し兵士達を次々と倒していく。

 彼女の頭の中には、暴れん〇将軍の大立ち回りのBGMが流れ続ける。

 最中に割り込んで加勢に入ってきた、せばすてぃあんとマリーはさながら御庭番のようである。


「おのれ」

 ついに側近の部下も倒れ、アイスマンドゥは孤立する。

 徐々に壁際に追い詰められる。


「成敗っ!」

 ピノはそう言うと、仕上げを御庭番衆にまかせず、右手での強烈な平手打ちを食らわせた。


「ふべらっ!」

 顔がぐるりと半回転する。


「ピノ様」

 駆けつける2人に、


「安心せい。峰打ちじゃ」

 と、彼女はうそぶいた。


「んな、アホな」

 とツッコむせばすてぃあんとマリーであった。


 破壊し尽くた王宮を背に、ピノたちは歩きはじめる。

「さっ、次!」




 急転直下のオチ(汗)。

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