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№2 蜜月の時

 いちゃいちゃ。


 ここはパルム公国王城内、ピノ女王の間である。

「うふふふ」

「ふふふ」

 ピノとせばすてぃあんは、ずっと見つめ合っている。

 姫と執事、本来ならかなわない身分の差、だけどそんなものは関係ない。

 出会った瞬間に運命の人となったのだから。

 あの薄っすらぼんやりと光のエフェクトがかかっているそんな感じ。

 小一時間ほど、らぶらぶ状態が続いている。


 給仕のマリーは眉をひそめた。

「せばす様、いい加減、仕事をするだ」

 せばすてぃあんは、ピノから視線を反らさず毅然と言った。

「私の仕事はピノ様を見守ることなのです」

 ピノはその言葉を聞いて、うっとりと頷く。

「そうですわよ」


 マリーは呆れ、両手を腰にやる。

「やってられねえだ」

 と、ひとつ溜息をつき、

「さ、仕事、仕事だど」

 と、周りのお付きの者たちに告げる。


「ああ、ピノ様、あなた様の美しさ可憐さは、世界じゅうのどの花や宝石にもひけをとらない・・・いや、むしろすべてを凌駕する。私はあなたの執事でいられる事に至上の喜びを感じざるを得ないのです」


「おお、せばすてぃあん。あなたのその整った顔立ちに、アタシはめろうメローイエロー、その透き通った目は、かつてコーラの中でも異彩を放ったタブクリア(透明のコーラ)、しゅっとした鼻はポッカコーヒーのイラスト、唇は愛のスコール、甘いマスクはまさにネクターですわ。そして、それはここにいる誰もが知っている、そうね、そーねのカプリソーネですわ」


「ピノ様の美しさに賞賛を」

「せばすてぃあん、あなたのイケメンに思わずチェルシーあげたい」

「最高の褒め言葉です」

 そう言いつつ、ずっと視線を反らさない、せばすてぃあんは、端正な自分の顎に右手の平を包んだ。

「んー、マンダム」

 すかさずピノはかます。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「ふふふ」

「てへっ」

 見つめ合う瞳の瞳に、ピノは頭の中で5人の仲間が集結しそうになった。


 そんなピノとせばすてぃあんに、

「いい加減にするのだ!2人とも」

 部屋中に重苦しい声が響き渡った。

「お父様・・・」

「お義父様」

「だれが、お義父様じゃあ!」 

 王は怒りのツッコミを入れる。

「ひどいっ!お父様!」

「いや、あのピノじゃなくて、お前じゃ執事っ!」

 王はビシッとせばすてぃあんに指をさす。

「せばすてぃあんでございます」

 慇懃に礼をする執事。

「すごいなんか、三波春夫でございますのように、へのつっぱりはいらないような自信に満ち溢れているわ。彼」

「お前は自分の身分というのを弁えておるのか?」

「といいますと」

 彼の端正な顔は全く動かず、平然と言いのけた。

「我が娘は王の娘なるぞ。下賤のお前みたいな者には、遠く遠く絶対に届かない。触れる事すら許されない。高貴な娘なのだ」

「ふむ。懸命な配慮。実に美しい愛情です。お義父様」

 せばすてぃあんは、自分の長髪を撫でつけた。

「貴様っ!バカにしとるのか」

「いや父の愛、実に美しい」

 彼はそう言うと、王を逆なでするような、乾いた拍手を送った。

「まるで昭和天皇のような・・・手さばき」

 うっとりと呟くピノ。

 

睨み合うは王と執事。

「即刻、この国よりでていけっ!」

 王は執事に通告する。

「それは出来かねますな」

 せばすてぃあんは断固はねのける。

「何故っ!王の命令が聞けぬのか」

「それは・・・姫様が好きだから」

 白い歯がキラリと光り、せばすてぃあんは臆面もなく言い放った。

「チャン・〇ンゴーン」

 ピノは万歳して言った。

「?」

「?」

 それまでのバチバチの応酬を止め、男達はピノを訝し気に見る。

「失礼遊ばせ、おほほほ」

 彼女はその場を取り繕う。

「どうしても、この場から去らぬというのか」

「無論」

「オ〇ロン」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「ごめんあそばせ、つい」


 王は静かに右手をあげた。

 即座に衛兵たちが集まる。

「ならばこうするしかあるまい」

「何をする気?お父様っ!」

「すまんなピノや。お前の執事は度を越しておるので、処断せねばな」

「・・・そんな」

「であえ、であえっ!」

「でたっ。時代劇のクライマックスで悪党がだいたい吐く台詞」

「ふむ。美しい姫様の顔を愛ですぎて、少し身体がなまっていたところ。お相手しましょう」

「待て」

「む」

「マリーの時のように暴れられては敵わんのでな。抵抗するとピノの命はない」

 王は短銃をピノに向けた。

「どゆこと」

「すまないピノや。これもまた策略。王の英断よ」

「お父様・・・それは悪手っ、ゲスの極みっ!」

「・・・・・・」

 せばすてぃあんは、両手をあげて無抵抗を示す。

「そうだそれでいい」

 王は満足そうに頷く。


「いい頃合いか」

 せばすてぃあんは口元を緩ませ呟いた。

「?」

 その余裕のそぶりに王は違和感を覚えた。

「そろそろ、もう、いいでしょう」

 マリーはこくりと頷き、せばすてぃあんの右側へ寄る。

「ひかえ、ひかえおろうだ!」

 マリーは懐に手をあてる。

「えっ、まさか、まさかのっ!」

「このお方を誰と心得る?天下の大国ハーゲンダッツ王子にして謎多き、せばすてぃあん(自称)様なるぞ!」

 マリーは大国の紋章のついたクリスタルを見せた。

「あっ・・・あれは、まさに王家の・・・」

「なんとっ!」

「静まれ静まるだっ!」

 ピノはいてもたってもいられず、せばすてぃあんの左側へ駆けつけ、

「頭が高い。ひかえおろう」

 言ってやってやった。

「はっ、はー」

 と土下座する一同。

「カッカッカッ~これにて一件落着っ」

 と、何故かピノが高笑いする。

「・・・姫様」

「・・・姫さ」

 と、呆れる2人だった。

 土下座する王は、額をこすりつけながら歯軋りをしつつ憎悪を抱いた。

 

 こうして2人の仲は公認となったとさ。

 だが、しかし・・・そうは問屋が卸さない。

 次回へ続く。



 あわわ!時代錯誤っ。

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