№10 仁義なき闘争の果てに~中編~
それぞれの戦い。
マリーは敵軍の動きに一瞥をくれると、踵を返しテラオー王の本陣へと一直線に駆けて戻る。
その速さ、まさに韋駄天であった。
「王様っ!」
「マリーか無事で・・・」
「敵の本隊が突撃してくるどっ!」
「くっ!籠城すべきか」
「駄目だど。ここは前進して戦うだ」
「何を馬鹿な事を!わずか5千の兵で12万の敵と戦うなど正気の沙汰とは思えんぞ」
「馬鹿はおめえだ。王様っ」
「なっ!」
「おふたりはたった一人で5万の軍と戦うんだど。それに比べたらたいしたことねえだ」
「・・・たいしたことじゃないって・・・」
「左右に分かれた敵軍は姫様とせばす様がなんとかするだ。んで合流する一時、本隊は踏みとどまればなんねぇど、そすたらきっとなんとかなるだ」
「退けばどうなる?」
「ここで退けば皆やられるだ」
「・・・分かった」
マリーの説得に王は頷いた。
「全軍応戦用意っ!左翼右翼にあたっている最大火力を持つピノとせばすてぃあんが帰陣するまでなんとしてでも持ちこたえよ。あの2人が戻って来たら必ず形勢は逆転する。皆の者、信じよ我等パルムの勝利をっ!」
テラオーは軍を鼓舞し、下知する。
「・・・王様」
「破壊詩人マリーの言う事に間違いなし・・・であるな」
「んだ」
左翼3将軍が軍師ソウを相手にするのは、せばすてぃあんであった。
彼は懐剣ドラゴンダガーを抜いて敵軍真っ只中を走る。
「左右へ離脱」
ソウは的確な指示を与え、軍を左右に動かす。
空いた道を駆けるせばすてぃあん。
「挟撃」
ソウが羽毛扇を振ると、左右の軍が一斉に彼へ襲いかかる。
せばすてぃあんは気合いを放出する。
「覇王のオーラっ!」
襲いかかるローデの兵士がオーラで吹き飛ばされる。
「ふむ、流石はハーゲンの王子か・・・滅沙礫幕」
ソウの指示で、兵士達は地面の砂を一斉に蹴り上げる、たちこめる砂煙でせばすの視界は奪われる。
「そのオーラとやら、長くは使えぬと見た。者どもその場から離れ待機、間髪入れず弓兵よ射かけよ」
砂煙の中にいる彼を目掛け矢が雨あられのように降りかかる。
「くっ!」
20分ほど無数の矢が一点に集中し放たれた。
「おわったか」
ソウは静かに砂煙がおさまるのを待った。
「な!ヤツがいない?」
ドゴッ!
地中より音がし、せばすてぃあんが飛び出した。
「ふむ。我想定済みよ。皆の者八難八苦の陣構えよ」
「はっ!」
ソウの号令により、一糸乱れぬ統率で軍勢は動き、陣形を整えた。
「なかなかやりますね」
せばすてぃあんはダガーを強く握りしめ歯をくいしばる。
「ふははは、強者よ侮ったな死す時が来たのだ」
ソウは完璧な陣に絶対の自信を誇った。
「うおおおおっ!」
せばすてぃあんは走る。
「一陣獄」
ドラゴンダガーを一閃、敵兵を瞬く間に殲滅する。
「二陣滅」
せばすてぃあんは激しく回転をし、吹き飛ばす。
「むむむ、三陣壊」
彼はスライディングを仕掛け悉く退ける。
「なるほど、四陣怪」
手かざしで妖術部隊の能力を無効化し戦意を削ぐ。
「まさかな、第五陣破」
巨大砲が火を噴くが、ダガーで真っ二つにした彼は、背面蹴りで弾をはじき返し五陣を壊滅する。
「信じられぬ、第六陣刃」
一斉に斬りかかる敵に、せばすてぃあんは空高く舞いあがった。
「今だ。第七陣矢」
矢が上空の彼目掛け飛んでくる。
「覇王のオーラっ!」
せばすてぃあんは、オーラで矢を無効化し着地と同時に開放する。
激しい衝撃が起こり六陣、七陣とも戦闘不能に陥る。
「よくぞここまで・・・第八陣槍」
あっという間の惨状にソウはそう呟き、長槍を抜いた。
5万の軍は壊滅状態となり、せばすてぃあんと軍師将軍ふたりは対峙する。
「ここまでです」
「それはどうかな。幾多の血を吸い赤く染まったこのヴァーミリアンランスで貴殿を誅す。あなたのような狂った力を持つ者など。認められぬ許す訳にはいかないのだ」
「左様ですか・・・では、こちらは急いでいますので」
「ほざけ」
せばすてぃあんはダガーを構え、ソウはランスを両手に持ち上段に構える。
「いざ」
「勝負!」
激突、轟音、一閃。
二つの影が重なり合うち、ひとつの影が地に崩れ落ちた。
「流石・・・は大国の王子・・・か」
せばすていぁんは、ソウを倒した。
「・・・ピノ姫」
彼は踵を返し彼女の元へと走りだす。
ピノはバー軍と対峙していた。
すでに一触即発の罵り合いを続けている。
「我が軍門にくだれパルムの姫ピノ殿」
ウォーターメロンは最後勧告を声高々に告げる。
「アタシは負けませんわ。どんなに苦しくたって悲しくったって、平気だモン」
ピノはそう言うと手招きをする。
「・・・小娘。こちらが下手に出でおれば図に乗りおって」
「あら、とんだ豹変ぶりですわね。そんな脅しはまるで・・・まるでダメオですわ」
「・・・・・・小娘、ワシをむ愚弄するか」
「5時から男のグロウサンってかですわ」
「何を言っている・・・この大軍とローデ最強の将バーを見て、恐れ慄いておるわ」
「タイムショックね・・・懐かしいわ。ドレミファドンも良かったわね」
「さっきから訳の分からぬことを・・・」
「ノスタルジーよ!」
「は?」
「あの日に帰りたいって思う事は誰にでもあるでしょ。あなたにはなくて」
「ここは戦場だっ!」
「谷○人っ!たけし城ね」
「埒が空かぬっ!全軍総攻撃」
「ふふふ、たった一人の小娘にアナタの軍が総がかりするのね」
「黙れっ!小娘だろうが油断はせぬわ。お前一人で国を潰せる力を持っていることなどお見通しだっ!」
「・・・そう、そうねだいたいね~」
「小娘、戯言もここまで・・・」
「・・・だ・・・へっ」
目標であるピノがその場から消えたかと思うと、将軍の目の前にいた。
「ダッ!」
彼女の気合いもろともに繰り出した延髄切りが、バーの後頭部に炸裂する。
そのまま、ピノはもんどりうって倒れる将軍を押さえつけると、
「敵将っ!捕えたり!あなたたちの将の命が大切ならば下がりなさい・・・それともその刃をアタシにまだ向けようとするのならば、全軍滅ぼしてもよくてよ」
ピノはすごんでみせた。
じりじりと兵士達は後退する。
彼女の口元が緩む。
「懸命な選択ね。では、大将軍はお返しするわ。それっ飛んでけ~飛んで飛んで飛んで回って・・・いけない・・・いけないル○先生じゃなかった・・・自粛だわ」
彼方へ飛んでいくバー将軍を軍勢は必死に追いかけるのであった。
「さあ、最終決戦よ」
ピノの瞳は燃えている。
次回、堂々フィナーレの予定(笑)。