表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

9 追跡

 軽トラが走り出したのを見て、カラスが誘導を始めた。カラスについていく。


 優斗はスマホで長らく放置していたSNSのアカウント「お使いキツネ」にログインした。だいぶ前に、稲荷神社へのお願いに対応するため、迷子のネコを見た人を募って以来だ。そのときは無事に近くでネコが見つかった。


 優斗は、先ほどの白いワゴン車の写真を掲載するとともに、さんちょこ探偵団バッジ等の特徴を書いて、目撃者を募った。


 投稿が終わり、優斗は前を見た。ちょうど豊島橋を渡っているところだった。カラスの飛ぶ先を見ると、このまま江北橋を渡るみたいだ。


「このまま足立区に入りそうだな。目的地は埼玉かもな」


 祖父が言った。優斗が父親にスマホで連絡した。


 父親からすぐに返事がきた。犯人のワゴン車は、主要道を通っていないようだ。可能な限り大通りを避けている模様とのこと。なお、車のナンバーは偽造で、Nシステムでも追跡できていないらしい。


 東京在住の優斗の親戚一同も捜索してくれているが、新しい情報はないそうだ。


 犯人は足立区経由で埼玉へ向かっている可能性があることについては、父親が刑事課に伝えてくれるとのことだった。


 車は江北橋に入った。今まで誘導してくれていたカラスが江北橋のアーチに止まった。同時にアーチに止まっていたハトが飛び立った。交代のようだ。

 優斗は車の窓を開けて、大声で叫んだ。


「ここまでありがとう! ここからよろしく!」


 アーチに止まったカラスが激励の声をかけてくれた。



† † †


 日が暮れてきた。もうすぐ埼玉県だ。


 何度か交代しながらここまで誘導してくれたハトが電線に止まった。すぐ近くの電柱に止まっていたカラスが飛び立った。優斗が窓を開けて大声でお礼を伝える。


 カラスは、夜でも車から見えやすいように、危険を承知で低空を飛んでくれた。


 完全に日が暮れた。カラスは何度か交代しながら引き続き慎重に低空飛行で誘導してくれる。埼玉県に入りしばらく北上を続けている。周囲に田畑が増えてきた。


 優斗はスマホでSNSを確認した。足立区を走行しているのを見たという情報が出ていた。取り急ぎお礼の返信をした。


 先導してくれていたカラスが急に加速して上昇していった。優斗と祖父がカラスの向かった先を見る。道の先の倉庫の上で、何羽かのカラスとハトが夜間にも関わらす上空を旋回して待ってくれていた。



† † †



 祖父は、倉庫の少し手前の路上に軽トラを止めた。優斗が車を下りる。小走りで倉庫まで走った。

 倉庫の前まで来た。上空のカラスやハトに手を振ってお礼をした。カラスやハトはそれぞれ激励の声をかけてくれた後、飛んで行った。


 敷地内を覗き込む。白いワゴン車が駐車されていて、事務所のような建物もあった。ちょうど黒いパーカーを着た男性が事務所の中に入って行くのが見えた。犯人たちも着いたばかりのようだ。


 ワゴン車の周りには、さんちょこ探偵団のバッジが捨てられていた。御神託の写真どおりだ。


 優斗は、人がいないことを確認すると、スマホで写真を撮った。すぐさまSNSに投稿して、警察への通報を促すとともに、父親に連絡した。


 父親からすぐに返信があった。ネットで投稿を見た体で刑事課に連絡してくれるとのことだった。


 優斗は、祖父の軽トラに戻った。助手席に乗り込む。


「どうだった?」


「御神託のとおりだったよ。いまお父さんに連絡した」


「後は待つだけだな」


「うん」


 優斗たちは車内で待機した。1分がとても長く感じる。

 ちょうど3分が経ったとき、1台のパトカーが赤色灯を消したまま軽トラを追い越して行った。倉庫の前で止まる。


「もう大丈夫だ。ワシらが疑われてはマズイから移動するぞ」


 祖父は軽トラのエンジンをかけて、赤羽に向かって走り始める。


 走り始めて数分後、緊急走行する捜査用車やパトカーとすれ違った。

 その後しばらくして、父親から犯人確保、大友君の妹を含めて全員無事との連絡があった。


 優斗はホッと胸を撫で下ろした。祖父に話しかける。


「お父さんから連絡がらきたよ。連れ去られた男の子の妹も含めて全員無事だって。犯人も逮捕されたらしいよ」


「良かったなあ! 優斗、(しん)使()のお役目を無事に果たせたな。本当にお疲れ様」


「ありがとう! 皆のおかげだよ。本当にありがとう」


「ははは、嬉しすぎて(へん)()が解けかけてるぞ」


 優斗は、安堵と喜びと感謝が入り交じった感情が溢れてきて、泣いてしまった。感極まったせいか、尻尾が出てしまい、祖父に笑われてしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ