43.女の勘
「パスタがもちもちで、美味しいです!」
「ケチャップのトマトの酸味が効いてるけど、うちの子トマト大好きだし、子供達が好きそうな味だわ」
良かった! リズとマリーに試食してもらい好評だ。
あくまで試食。少量のナポリタンとアイスペシェルティーを私達は食べていた。本番はこの後、昼食の時間に合わせマリーに作ってもらう予定だ。
「それに⋯⋯」と、マリーがフォークを刺し、目の前に掲げたのは、タコさんウインナー。真っ赤なソーセージが無かったので、色はまんまソーセージだが、足がクルンとして可愛くできた。
「この近くに海がないから、タコって生き物がどういうモノがよく分からないけど。何だか可愛いわね」
そうなのだ。せっかく可愛く出来たのに⋯⋯タコを見たことがないらしく、ちゃんと分かってもらえなかったのだ。
よく分からなくても、可愛い。と喜んでは貰えそうだとマリーが言うので良しとしよう。
「後はパンと副菜にシーザーサラダとポテトグラタン、さっき作ったスクランブルエッグと目玉焼きを添えれば、ナポリタンランチプレートになるかな。
て思うんだけど、どうかな?」
「彩りも鮮やかで、見た目もよさそうですね」
「ええ、いいと思うわ!」
賛成してもらい、メニューが決まった。······が。
「うーん。本当は海老フライとか欲しかったな⋯⋯」
「海老フライ??」
はっ! また心の中で思ったつもりが声に出てたようだ。
「えーと。
海老フライってのはエビを衣をつけて揚げた料理だよ」
「よく解りませんが⋯⋯ティアナさんが求める料理なら美味しそうですね」
「エビも海の生き物だからねぇ。クリスディアで食べれたらいいなぁ。エビが手に入るなら作ってみるから、楽しみにしててね!」
クリスディアは海も森もあり、食材が豊富だというから、色々作れるはず! と、色んな食材に思いを馳せてると⋯⋯
「ティアナ達はクリスディアに行くんだったわね。
せっかく仲良くなれたのに、寂しいわ」
マリーが残念そうにそう言ってくれた。うん、そうだね。私も寂しい⋯⋯。
この世界で、ほぼリズとだけ関わり過ごした1ヶ月。
リズの事は好きだが、部屋の中だけで過ごし、しかもご飯が美味しくない環境は、やっぱりしんどかった。
一昨日の夕方に此処───ルセルの街に着いてから、たった2泊3日しか過ごしてないのに楽しかった。
初めての市場での買い物。
オリバーさんの美味しい料理。
自分で料理が作れた事。
そして何よりも、マイカちゃんやマリーと一緒に買い物へ行ったり、料理をしたりが本当に楽しかったのだ。
私の方こそ離れ難い⋯⋯
「ねぇ。昨夜にオリバーと、貴女達が話してるのを聞いちゃったんだけど⋯⋯。ティアナはジルティアーナ様の専属料理人ではない。のよね?」
急に思わぬ事を言われ、戸惑いながら頷く。そんな私を見て、マリーはニッコリ笑い言葉を続けた。
「でも⋯⋯リズさんもティアナも料理人では無いだけで、ジルティアーナ様の専属。とかじゃないの?」
「ゴホっ!」
確信を突かれ思わず食べてたナポリタンが変なところに入るとこだった⋯⋯。いや、私は本人だから正確では無いけど、リズに関しては大正解だ。
そして、私がそんな反応をしなければ誤魔化せたかもしれないけど、もう誤魔化すのは難しそうだ。オリバーさんは誤魔化せたけど、女の勘は恐ろしい⋯⋯。リズも同じ様な事を思っていたのか、仕方ないと言う様子で溜め息を吐く。持っていたフォークを置き、マリーを真っ直ぐみてはっきりと言った。
「マリーさんがおっしゃる通り私は⋯⋯ジルティアーナ様の侍女をしております」
「侍女⋯⋯!?」
マリーは、専属とは思ったようだが侍女とまでは思っていなかったようだ。驚きの表情でリズを見たあと、少し考えてから口を開いた。
「まさか⋯⋯ジルティアーナ様の侍女様ともあろう方がこんな平民向けの宿に来るとは思わなかったわ。
上級貴族の、ジルティアーナ様の侍女様って事は、リズさんもお貴族様、ということ······ですよね? ティアナ⋯⋯さんも?」
せっかく仲良くなれたと思ったのに、貴族と知られてしまい距離を置かれてしまうのだろうか?
と、思ってると隣のリズがはっきりと言う。
「はい。私達は貴族です。ですが、ここでは貴族として振る舞うつもりはありません。どうかティアナさんを友達だと思ってくれるなら、先程までのように普通に接してくれると嬉しいです」
その言葉を聞きマリーが、確認するように私を見てきたのでその事を肯定するべく、私も勢いよく頷く。
そんな私をクスリと笑いマリーは言う。
「わかったわ。貴女達がそれでいいなら、そうさせてもらうわ。お貴族様が友達なんて⋯⋯ちょっと緊張しちゃうけど、これからもよろしくね」
そう言われ、嬉しくて思わずリズを見ると、「良かったですね」と言うようにリズは私に笑いかけてくれた。
次回、44.マリーの過去




