40.アイスペシェルティー
「よし!」
次の日──……私とリズは朝食の後、市場に出かけ色々食材を買いに行き、買ってきた物をテーブルの上に並べた。すると……
「すみません! 私が料理を教えて欲しい。とお願いしたのに材料の買い出しまでして頂いて……っ」
「いえいえ、大丈夫ですよ。気にしないでください」
パタパタと足音と共に、現れたのはマリーさん。私達の事を気にして走ってきてくれたようだ。
走ったせいで暑そう……。
そんなマリーさんにお茶を差し出した。
「これは……? 紅茶ですか!?」
マリーさんは香りで紅茶だと気づいたが驚いた様子だった。なぜなら私が渡したのが、いつもの紅茶と違ったからだ。
差し出したのはアイスピーチティー。……ならぬ、アイスペシェルティーだった。
濃いめの紅茶に蜂蜜を混ぜて、小さめにカットしたペシェルと氷が入ったグラスに注いだアイスティーだ。
この国ではお茶は、温かいもの。冷たくして飲むという習慣がない。なので実は、先程にリズにも出したのだが、やはり同じような反応だった。
マリーさんはグラスに触れた瞬間、冷たさに驚き、一瞬ビクリとしたが、そっと両手でグラスを包み気持ちよさそうに微笑んだ。
私達をなるべく待たせないように走ってきてくれた、火照った身体には気持ちいいよね。だからきっと……。
マリーさんがグラスに口をつけ、ゴクリとアイスペシェルティーをひと口飲んだ。
「……っ! とても美味しいです! 甘くて、冷たくて……ほんのりペシェルの甘みと匂いもしますっ。冷たい紅茶を初めて飲みましたが、冷たくても美味しいのですね。たくさん飲んじゃいそうです」
「ええ。紅茶は冷やしても美味しいんですよ。
特に今のマリーさんのような、仕事や運動をした後の喉を乾いた時って、喉が渇いていても温かい紅茶を飲む気にはあまりならないでしょ?そんな時はアイスティーがオススメです。
氷で薄まっちゃうので、濃いめで入れるのがコツです」
そう言いながら、私はマリーさんに長いスプーンを手渡す。
「……?」
「ペシェルを少し潰したり、そのまますくって食べても美味しいですよ」
言われるままに、少し潰してアイスティーを飲み、そのあとペシェルを口に入れたマリーさん。
マイカちゃんみたいに目がキラキラしたのが分かった。
「つぶすとペシェルの味と香りが強くなって、いつもの紅茶とは別の飲み物みたいです!
そのまま食べても、ペシェルにも紅茶の風味と香りがついていて……それも、とても美味しいです」
うんうん。
やっぱり疲れてる身体には、ペシェルの甘さと冷たい紅茶はいいよね!
と、おかわりをするマリーさんを見ていた。
「アイスペシェルティー、本当に美味しかったです。ありがとうございました」
「いえいえ。では、さっそく料理をしてみましょうか?」
「はい! よろしくお願いします」
「では、最初に……」
さっそくマリーさんに卵を渡した。
マイカちゃんも私が教えるまで出来ず、マリーさんも出来ないらしい……
「卵を割ってみましょう」
……ぱかっ。と音をたてた殻から、卵がボウルへこぼれ落ちる。うん、ちゃんと黄身は潰れてないし、殻も入ってない。
「……!! できた……。できました!」
ぴょんぴょん飛び跳ねそうな勢いで喜ぶ、マリーさん。……なんだかマイカちゃんみたいで可愛い。
ちなみに、ただ卵を渡し「割ってみて?」と言ったらマイカちゃんと同じだった。
凄い勢いでボウルの角に、卵をぶつけようとしたマリーさん。で、いつもは卵が潰れてグシャリ……だったらしい。
そりゃそーだ……。
そこで昨日マイカちゃんに教えたのと同じように卵同士をぶつけて、ひびを入れて、両手で割る方法で簡単に卵を上手く割ることができた。
「主人も弟も……以前働いていたお店の料理人達も……みんな片手で卵を割ってたので、両手割りなんて初めて見ました! この方法はティアナさんが考えたんですか!? 天才です!」
いや……もちろん私が考えた訳じゃない。
日本での常識を少し話しただけで、まさかの天才扱いをされてしまった。
「とりあえず、卵が割れれば卵料理は簡単ですから色々出来ますよ。オムレツはちょっと難しいかもしれませんが、目玉焼き、スクランブルエッグなら簡単かと思います」
「そうなんですか! すごい……卵で色々作れるようになるんですね……っ!」
「…………よかったら、作ってみます?」
「いいんですか!? お願いします!」
目玉焼きとスクランブルエッグを作る予定はなかったのだが、お目目キラキラで見られて、予定外に作る事になってしまった。
次回、目玉焼きの作り方




