37.2回目の宿での夕食
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「美味い!!」
「ディアン、しーっ!」
「ディアン様、声が大きすぎます!」
待ちに待った夕飯の時間! (特にオブシディアンにとっては)
最初に運ばれてきたのは、熱々のフライドポテト。
それを1本つまみ、口に入れた瞬間──
オブシディアンは、店中に響き渡りそうな声で叫んだ。
「美味い!」
私たちの静止もどこ吹く風。
興奮気味に、フライドポテトについて語り出す。
「やはり、フライドポテトは出来たてに限る! 冷めたものの何倍も美味い!!」
その意見には、内心激しく同意しながら、私はお昼と同じようにケチャップとマヨネーズを添えた。
(あ、そういえば昼にフライドポテト出した時、ソース忘れてたんだった……まあ、黙っとこ)
小皿にケチャップとマヨネーズをスプーンで1杯ずつ取り、さくっと混ぜる。
ついでにオーロラソースも作った。
「これは?」
「見てのとおり、ケチャップとマヨネーズを混ぜただけのオーロラソースだよ」
オブシディアンはマヨネーズを、リズはオーロラソースをポテトにつけて口に運ぶ。
「これは……昼のブロッコリーにかかっていたソースか!
昼のマヨネーズが焼けていたのも美味かったが、ポテトにつけても美味いな!!」
「フライドポテトはそのままでも美味しいですけど、マヨネーズをつけるとまた違った味になりますよね。
オーロラソースも、トマトの酸味とマヨネーズのまろやかさが合わさって、全然別の味になるのが面白いです」
「でしょ? やっぱ調味料も大事だよね~」
そんな話をしているうちに、次々と料理が運ばれてきた。
今日のメニューは──
細切りフライドポテト
ブロッコリーとゆで卵のマヨネーズ和え
ソーセージと野菜のポトフ
アボカドのチーズ焼き
ショートパスタのアラビアータ
さすがオリバーさん。
昼に出たブロッコリーのベーコン焼きを、見事にアレンジしてきたらしい。
緑のブロッコリーに、ひと口サイズに切られたゆで卵の白と黄が映えていて、色合いも鮮やか。
ゆで卵も固すぎず、ちょうどいい茹で加減でおいしい。
ポトフは、いつものあっさり塩味。
でもソーセージからもしっかり旨味が出ていて、たっぷり入った野菜も、あのヴィリスアーズ家のドロドロ煮込みとは違ってホクホク感があって嬉しい。
アボカドのチーズ焼きは、食べ頃のアボカドに香ばしく焼けた濃厚チーズがとろりと絡み、ワインにぴったり。
そして──
「ペンネ・アラビアータ!?」
ピリ辛トマトを絡めたペンネ……ショートパスタが出てきた。
(……うわぁ、この世界にもパスタあったんだ!?)
「なんだこれは。なんか、舌がピリピリするぞ!?」
「うん、鷹の爪が入ってるからね。辛すぎたら、赤い輪っかの部分を避けるとマシになるよ」
「確かに辛いですが……このペンネというパスタ、もちもちしていておいしいです。
辛いのに、なぜかもう一口食べたくなりますね」
「そうだな。辛いが……この“赤ワイン”という飲み物と一緒に食べると、美味いぞ」
──などと言いつつ、オブシディアンは赤ワインやエールを次々に飲み始めた。
ちょっと心配になって止めようかとしたけれど、聞いてみると「毒耐性のスキルがあるから問題ない」とのこと。
……って、それ。それならお酒飲む意味、なくない……??
「お待たせいたしました」
そう言ってオリバーさんが、自ら運んできてくれたのは──
例の、ボウルいっぱいに山盛りされたフライドポテトだった。
(うん……改めて実物を見ると、やっぱすごい量だわ……)
オブシディアンは「おおお〜!」というテンションで目を輝かせながら、そのポテトを見つめる。
そしてふと、手を宙に掲げ──ふわりと風が舞った、その瞬間。
ガシッ、とリズがオブシディアンの手を掴んだ。
「ディアン様? マジック鞄をお使い下さい」
あの、何も言わせないような笑顔で、ぴたりと迫るリズ。
「ん? ……おお、そうだったな!」
オブシディアンは特に気にした様子もなく、自然に頷いた。
あの笑顔を前にしても動じないとは……さすが聖獣。
そして、腰に下げていた黒いポーチ──私と一緒に雑貨屋で買ったやつの口を引っ張ると、
ぐにーんと口が広がり、大きなボウルをそのまま飲み込んだ。
……もちろん、カモフラージュだ。
あれはただの普通のポーチ。
でもオブシディアンは、空間魔法を自在に操る聖獣。
だから本当は、ポーチなんて使わずとも、宙に手をかざすだけで異空間を開いて、物を収納できる。
私にくれた マジック鞄 と同じように、
その中では時間も止まり、容量も……なんと無限。
でも、そんなぶっ飛んだ能力を人前で使えば騒ぎになるのは必至。
だから、『マジック鞄を使ってる風にして下さい』と、リズが事前に指導していたのだった。
次回、お魚食べたい




