31.食後のお茶と思わぬ食いしん坊
「ティアナさん、ありがとうございました。
美味しい料理をご馳走になったうえに、マイカまで料理をさせていただいて……あの子、とても喜んでいました」
そう言いながら、ちらりとルークくんと楽しそうに話しているマイカちゃんを見る。
私たちは昼食を食べ終え、今度は子供組と、大人組に別れて食後のお茶を飲んでいた。
紅茶と一緒には、ソフトクッキーを出した。
「マイカはいつもよく私達の仕事を手伝ってくれて、ルークの面倒もよく見てくれるんです。
仕事が忙しい事を言い訳に、遊びに連れて行く事も出来なくて……。
あんな楽しそうな姿を、久しぶりみました」
「そうだな。それにしてもティアナさんの料理には驚きました。
どれも見た事ない料理なのに、全部美味しくて……このソフトクッキーというものも、バターの風味がとても良いです。紅茶に合いますね」
「紅茶にはもちろんですが、ナッツの塩気もあるので意外とワインなんかにも合いますよ?」
私がそう言うと、オリバーさんはワインの置かれた棚に視線を向けた。しかし、それに気づいたマリーさんがジロリと睨む。オリバーさんは苦笑いしながら頭をかいた。
「残念ですが……まだまだ仕事があるので、我慢します。
僕は、若い頃は王都で修行したり、この国以外の国を旅して、色々な料理を見てきました。
でも、ティアナさんの料理は見た事もありません。どこで修行されたんですか?」
「えーと……」
どうしよう。修行なんてしてない。
日本という国で覚えました。とも言えないよね?
思わず横に座るリズを見る。
するとリズが、紅茶をソーサーに置くと口を開く。
「私、実はエルフとのハーフなんです。
なのでエルフのアカデミーにも通った事がありまして。
エルフのアカデミーには平民も通えますので、図書館には様々な蔵書があるんです。
それで色々な国の料理本を読んだことがあったんです」
「まぁ……!エルフのアカデミーに通えるなんて優秀なんですね」
すごい、リズ……!と、私は驚いて彼女を見つめた。
もちろん私はリズがアカデミーに通ってたどころか、日本でいう大学院のような研究所にも居た事を知ってるので、アカデミーに通ってた事に驚いたのではない。
さりげなくエルフはアカデミーに平民が通えてた事を話し、嘘はつかずして、アカデミーに通ってたけど平民も通えた。と聞いたオリバーさん達は、リズが平民だと思った事だろう。
私は今、平民のフリをしている訳で、まさか貴族が平民に仕えてるとは思われないだろう。
「アカデミーでは、料理本で美味しそうな料理を色々見たのですが、私に再現出来るわけもなく、熟練した【調理】スキルを持つ、ティアナさんに再現やアレンジをしてもらったんです」
「アレンジまで出来るとは……!
お若いのに本当に凄いですね」
…………。
ごめんなさい。
本当は私、そんなに料理得意でもないので、ほとんどクック〇ッドの受け売りです。
歳もジルティアーナは若いけど、中身はもう30歳になるおばさんなんです。
と、心の中で懺悔した。
◆
『ほう、これが異世界の料理か!』
私達は部屋に戻り、約束していた料理を聖獣様の前に並べた。
とりあえず、食べやすいフライドポテトを一本取り聖獣様に差し出す。
ぱくり。
「どうですか?」
『…………美味いな』
「本当ですか!? 良かったー! じゃ他のもどうぞ」
と、他の物もどんどん聖獣様の口に運んだ。
結局持ってきた料理はペロッと全部食べてしまった。
『どれも、本当に美味かった。礼を言う』
「いえいえ。喜んで貰えたなら良かったです」
『ただ……コーンスープとフライドポテトというものは、冷めているのが残念ではあったがな』
「あー……それは、ごめんなさい」
コーンスープはともかく、ポテトは絶対出来たてのが美味しいよね。
マイカちゃん達みんなと昼食を食べ、食後の紅茶を飲んだ後に持ってきたので、完全に冷めた状態だった。
そもそもこの持ってきた料理だって
「作った物をしっかり確認しながら部屋で記録したい」
とか自分でも訳分からん言い訳をして、どうにか持って帰ってきたのだ。
「私もせっかくなんで、出来たてを食べてほしいですが……」
さすがに皆の前で馬の姿の聖獣様に、人間のご飯をあげれません。
「ダメだよね?」とダメ元で、リズに聞いてみるが、やはり難しい顔をされた。
「クリスディアに着くまで我慢してください」
私がハッキリというと、聖獣様は下を向いた。
心が痛むけど……ごめんね! どうしようもないんです。
と、思っていると聖獣様がボソッと言った。
『…………決めた』
……何を??
と思っていると、顔を上げた聖獣様は私の目をまっすぐ──まるで黒曜石のような真っ黒のようてで、よく見ると黒みがかった深緑の瞳でみつめてくる。
『ジルティアーナ、私に名前を付けなさい』
なんなの、急に?
と思いながら考える。
うーん。そうだなぁ……あ。さっき黒曜石みたい。って思ったから──
「オブシディアンは、どうでしょうか?
私の世界で、黒曜石って意味なんですが……」
『黒曜石……オブシディアンか』
少し間を開けて、続けた。
「……うむ、悪くはないな」
そう聖獣様が言うと、横に居たリズがビクリとし周りを見渡した。
「何か……急に声が……!?」
あ。もしかして……
「もしかして急に知らない男の人の声……聴こえた?」
「……はい」
うん。それ、昨日経験したよ?
さてはネージュと同じく私が名前を付けたせいで……
と思い「実はね、聖獣様がね」と話し始めた所で聖獣様が発光した。
そして、聖獣様の体がまばゆい光に包まれる。
気づけばそこに立っていたのは──長身の男性だった。
「え、ちょ、この状況昨日も見たやつ!!」
次回、聖獣の名付け




