28.初めての【調理】
目の前には、沢山の食材。
水、小麦粉、砂糖、卵に牛乳、バターetc.....
見てるだけでもワクワクする。
隣の踏み台に乗ったマイカちゃんも、同じように目を輝かせていた。
だが……砂糖。
本当はグラニュー糖も欲しかったんだけど、この世界に無いのか、あのお店にはなかっただけなのか、見つけられなかった。
仕方なく白砂糖を多めに買ってきたけど、グラニュー糖って砂糖より粒が小さくて水分が少ないんだっけ?
サクッとした食感を出しやすいし、ホイップクリームにも向いてる。
……やっぱりグラニュー糖、欲しかったなぁ。
「……ただの砂糖に似てるし、どうにかならないかしら?」
独り言のように呟き、砂糖を入れたカップを手に持った瞬間──
「うわ!」
ステータスより小さめなポップアップが、シュッと現れた。
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【生産】スキルを使って、砂糖をグラニュー糖に変化させますか?
YES/NO
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「…………!?」
『YES』、『YES』だよ!!
連打したい気分で、『YES』の文字をポチッと押した。
すると、表示が変わる。
『砂糖をグラニュー糖に変化させました。』
【生産】スキル、ナイスー!!
念の為、そのカップに入った白い粉を、じっと見つめ、【解析】を試してみる。
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【グラニュー糖】
精製糖の一種。
ザラメ糖のうち、最も結晶が細かい。
味にクセが無くサラサラとしてるので、料理の風味を損ねずらい。ダマにもなりにくく溶けやすい。
(品質)
★★★★
(備考)
お菓子作り等に最適。
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パンパカパーーン!
やったね。グラニュー糖、ゲットだぜ!
「ティアナお姉ちゃん、どうしたの?」
マイカちゃんに不審そうにこちらを見ている。
しまった。私、変な顔してた?
「何でもないよ。さーて、作るぞー!」
そう言って袖をまくり、料理を始めた。
まず、ボールに卵、塩、酢、レモン汁……違った。レモニという、レモンみたいな青い酸味の強い果実を搾ったものを入れる。
それを泡立て器でよく混ぜ合わせる。
これが意外と大変なんだよなぁ。
ハンドブレンダーがないと腕が死ぬかも……と思ったけど、思いのほか簡単にできた。
もしかして……これが【調理】スキルの力?
そう思いながら作業を進め、少しずつサラダ油を加えていく。
白っぽくクリーム状になったら、完成!
と思った瞬間、また小さなポップアップが現れる。
『【生産】で【マヨネーズ】を作った。──成功!』
「それ、なーに?」
マイカちゃんの問いかけに、気を取り直し答える。
「マヨネーズだよ。野菜や玉子につけるだけでも美味しいんだよ!」
「ふーん?」
うーん、イメージが湧かないか。確かに食べたこと無ければ、ピンと来ないよね。
では、きゅうりをスティック状に切って……
「はい。どうぞ」
マイカちゃんにマヨネーズをつけて渡す。
「えっ!?」
「リズも食べてみる?」
戸惑うマイカちゃんを余所に、リズにもマヨネーズをつけた、きゅうりスティックを渡した。
そういえば先程買い物に行って発見した事。
どうやらこの世界、果物は違うけど野菜はほぼ日本と同じらしい。
今までは、これはきゅうりに見えるけど、きゅうりなのかなぁ?
と思って見てたけど、野菜は見た事ない物もあるものの、見た目や味の特徴も日本の野菜とほぼ一緒の為、【翻訳】されているのか、野菜は思ったままで言うと通じた。
だが、果物はりんごみたいな梨の形の赤い果物が、ナポル。の様に、日本の果物と違う特徴がある物は別の名前で呼ばれてる。と分かったのだ。
で、先程のきゅうり。
ポリっ
「酸味と塩気と……複雑な味がします。マヨネーズをつけただけなのに、いつもよりきゅうりが美味しいです!」
そんなリズを見てたマイカちゃんも、きゅうりをジッと見つめて、パクリ!
「……! おいしい……おいしいよっ! ティアナお姉ちゃん」
お目目キラキラで言った。その表情から嘘じゃない事がよく分かる。クスっと笑っていると傍で見ていたマイカちゃんパパこと、オリバーさんがマイカちゃんに言った。
「マイカ、本当か?
お前、きゅうりは苦手だったよな?」
「そうなんだけど……マヨネーズつけると、すごく美味しいの!」
あら、そうだったの?
躊躇してたのはマヨネーズのせいではなく、きゅうりが嫌いだったからなのかな?
でも、きゅうりもマヨネーズのおかげで克服できそうだね!
余程気に入ったのか、追いマヨをすると凄い速さでマイカちゃんの手の中のきゅうりは無くなった。
私は追加でもう少しきゅうりをカットし、お皿にマヨネーズと共に盛ると、マイカちゃんに差し出した。
「もっと美味しいもの作る予定だから、少しだけね?
オリバーさんも、ぜひ食べてみて下さい」
「いいんですか!? いただきます!」
オリバーさんが勢い良くきゅうりスティックを食べ、マイカちゃんによく似た……て本当は逆だけど、マイカちゃんと同じように目を輝かせ「うまっ!」と呟いた。
本当は最初っから食べたかったんだろうな。
料理人としては、未知の料理は気になるよね?と思いながら、次の作業を進める。
卵を割り……と1つ目の卵を割った所で、ふと思う。
「マイカちゃん、卵割ってみない?」
「やりたいけど……マイカ【調理】スキルないから出来ないよぅ」
それね。【調理】のスキルがないと卵も割れない。って聞いてるけど、それって……本当?
凄い気になってる事……
『スキルは成人の儀で授かる訳ではない。産まれ持っていたり、努力の過程で入手するものだ。
元より持っていた物を、成人の儀で天職を獲る事により初めて認識しているだけだ 』
シャーロットの【魅了】の話しをしてた時に、聖獣様が言ってた言葉だ。
卵を割るなんて……元の世界なら、料理が全く出来ない人でも普通に出来る事だ。
【調理】のスキルがないと綺麗に食材が切れない。
とかならまだ分かるが、それも【調理】スキルを持ってないという果物屋のおばさんも、刃物を使い慣れてるリズもナポルをちゃんと切る事が出来るという。
いやいや、卵割るよりリンゴを剥く方がよっぽど難しくよね!?
そんな訳で私がたてた仮説。
【調理】スキルがないと卵割れない。ってこの世界の人の……思い込みじゃないの? 説。
「やってみたいなら、お姉ちゃんがやり方教えるから一緒にやってみない?」
「でも……卵……高いし……」
あー、なるほど。それも原因なのか。
卵が高いから、日本の子供みたいに気軽に練習出来ないのか。
「大丈夫よ。上手く出来なくて潰れちゃっても、卵を潰して使う料理に使うから」
だから、頑張れ!
と、マイカちゃんを見つめると……
「……うん! マイカ、やってみる!!」
ふんすっ! と鼻息荒く宣言した。
次回、29.卵の割り方
色々気づく、異世界での料理を習う問題点。です




