24.貴族の名前と権力と
誤字報告ありがとうございます。
漢字間違えはともかく、エレーネの名前めっちゃ間違えてた・・・。
そして、その報告されたのを修正するのが快適すぎてビックリ‼️
本当にありがとうございました。
「申し訳ございませんでした……」
宿屋への帰り道。
今度はエリザベスさんがしょんぼりしていた。
いつもキリッとして「できる女!」って感じなのに……ちょっと可愛い。
彼女が落ち込んでいる理由は、先ほどの果物屋でのおばさんの話だ。
おばさんは『あんたの事が好きだ 』と言ってくれた後、こう教えてくれたのだ。
「で、本題だ。あんたたち、お忍びなんだろ?
だったら、本名は名乗らない方がいい。ジルティなんとかなんて長い名前は、貴族です。って言ってるようなものだよ」
──つまり、エリザベスさんが私の名前を口にした事が、貴族とバレてしまった1番の原因だったらしい。
なんでも、フォレスタ王国では、平民は短い名前。貴族は長めの名前にするのが普通らしい。
確かに、ジルティアーナの記憶をたどると、身分が高い方が長めにする傾向にあり、アカデミーの同級生などは皆、長い名前が多かった。
たとえば、元王女のお祖母様はクリスティーナ。
上級貴族である私の名前はジルティアーナ。
貴族の名は、親や先祖など功績を上げた人物の名を由来とすることが多いらしい。
言われてみれば、クリスティーナとジルティアーナ、確かに似ている。
私の名は、尊敬すべき【聖女】クリスティーナ様から取られたものだったのだ。
一方で、元下級貴族の義母イザベルや、下級に近い中級だった父ローガンやミランダお姉様は短めだ。その事をイザベルがコンプレックスを持ってると教えてくれたのだった。
「とりあえず、外ではちゃんと名前を呼ばない方が良さそうね。そうだなぁ……ジル、いやティア? ティアーナ……あ! ティアナはどうかしら?」
「……」
……だめ? 落ち込んでるのか、私の案がダメなのか
……反応がない。
「でも、最初に親切なおばさんに出会えて良かったね? お忍びでみんな気付いてないと思って行動してて、バレたら恥ずかしいもん」
「それは、ジル……いえ、ティアナさんだったからだと思いますよ」
……! ティアナって呼んでくれたっ!
でも……
「私のおかげ? 私は何もしてないけど?」
「あの女の子に貴女が優しくするのをみて、あの人はティアナさんの事を信用して教えてくれたんですよ。
だってあの人『貴族が嫌い 』って言ってましたよね?」
「うん」
「嫌われるのは当然だと思います。平民に一方的に命令するような貴族が多いですから。
ただ、もしもそういったお貴族様に、あのように『貴族が嫌い』なんて問題発言をすれば、処分される可能性が高いです」
「し……!? 処分って、何するの?」
思わず叫びそうになり、口を押さえ小声で聞いた。エリザベスさんは目を伏せていう。
「貴族が『あの者が私へ暴言を吐いた 』と兵士に通報すれば、あの人は取調べを受け、良くて牢屋行きでしょうね。
さらに『私は上級貴族だ』と言えば、生意気な平民を殺す事もできます」
あまりの事に固まる。震えそうになるのを堪えて、聞き返す。
「……何よ、それ……たった一言で、そんなことが許されるの?
殴られたわけでもない。ただ『貴族が嫌い』って言われた。ってだけで……そんな事が、出来ちゃうの……?」
「もしも殴られたのなら、弁解の余地もなく殺されますよ。そもそもあの人が『嫌い』と本当に言ったかはあまり問題ありません。
単純に、何となく気に食わない。
というだけで、『あいつが貴族に対して無礼な行いをした』などとでっち上げるだけで、平民に嫌がらせをすることも、命を奪う事も出来てしまう。
それが貴族……権力を持つということです」
ふと、以前した会話を思い出す。
エレーネさんと初めて会った時にエリザベスさんが言ったこと……
──……平民を同じ人だと思っている貴族は少ないですから。
──……貴族の気分次第で理不尽な目にあっても平民は文句を言う事も許されません。
それって……こういう事だったんだ。
悲しいような悔しいようなモヤモヤした気持ちになる。
「……でも」と、
エリザベスさんが私を見つめる。
「あのお店の方は、ティアナさんだったらそういった事を絶対しない。そう信用したから、危険を犯してでも自分が気付いたことを正直に、教えてくれたんだと思いますよ」
その優しい瞳を見た瞬間……
涙がこぼれそうになるのを、ぐっとこらえた。
誤字報告されたこのタイミングで、まさかの王族・上級貴族は名前長くてめんどいのよ。って話。
いやいや・・・、平民の短い名前でも間違えてるぞ?っていう((;゜Д゜)
そして、この話も1回だけでたのガッツリ、セレーネでした。あっぶねー。
次回、宿での夕食。
初めてのヴィリスアーズ家以外での食事です。