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スキルをよみ解く転生者〜文字化けスキルは日本語でした〜  作者: よつ葉あき
海の街、クリスディア

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145.全部あいつのせい?


ネロくんはクラース団長から視線を外すと、今度はダンさんを見つめた。


「だって、ダンおじさんが俺とルトに仕事をくれて、ご飯だってたくさん食べさせてくれたから」


そこまで言うと、再びクラース団長をまっすぐ見つめ、はっきりと言った。


「……それって、クラースおじさんが、ダンおじさんにお願いしてくれてたんだよね?」


クラース団長は驚いたように目を見開いた。どうやらネロくんに知られているとは思っていなかったらしい。


「……ネロ、お前……知ってたのか」


声が出ないクラース団長の代わりのように、ダンさんがぽつりと呟いた。

ネロくんはにっこりと笑って言った。


「うん。他の兵士たちが教えてくれたんだ。それに、こんなふうにも言ってた。


『副隊長の怪我は自分たちのせいだ。君たち一家がスラム街に行くことになったのも自分たちのせいだ。ごめん』って」


その言葉に、クラース団長とロベールさんは息を飲んだ。

ネロくんは視線を床に落とし、ぽつりと呟いた。


「……そんなわけないのにね。だって父ちゃん、いつも言ってたもん。


『俺は副隊長だから、町のみんなはもちろん、兵士たちも守るんだ!』って。


父ちゃんが大怪我したのは悲しかったけど……でも、約束を守ったんだって思ったら──


“俺の父ちゃん、すごいんだぞ!?”って、誇らしかったよ」


……私はちらりとロベールさんを見る。もう、泣きそうだ。

ネロくんがいろいろ知っていたこともだけど、息子にこんなふうに言われたら……そりゃ、嬉しくて泣いちゃうよね。


「悪いのは、クラースおじさんでも兵士たちでもない……っ!

弱いくせに、のこのこ魔獣の前に出てきた──あのゴルベーザとかいう貴族のせいだ!!」


ネロくんが、きっぱりと拳を握りしめて言い切った。

それに慌てたのはクラース団長だ。


「……ネロ、やめなさい! お貴族様に聞こえたら──」


「その通りだ!! よく言った、ネロ!

悪いのは全部、ゴルベーザっていう領主代理のバカ息子のせいだ!!」


「……ダンっ!!」


私たちをちらりと確認しながら、ネロくんを止めようとしていた団長だったが、

ダンさんが力強く同意したせいで、思わず彼の名前を叫んでしまった。


どうやら私たち──貴族である私やリズに、ゴルベーザの悪口を聞かれるのはまずいと判断したらしい。




「……あっ、あの、その……」


取り繕おうと焦っているのが、見ていて、丸わかりだ。

兵団の団長という立場の人が、こんなふうにおろおろしてるのがなんだか可笑しくて……思わず笑ってしまった。


「……ふふっ。そうね。ネロくんとダンさんの言う通りよ。

悪いのは、全部ゴルベーザよ!!」


私もネロくんの真似をして、拳をぎゅっと握りしめながら言った。


そんな私を、クラース団長はぽかんとした顔で見つめていた。

その様子に、ロベールさんも思わず笑ってしまった。


「大丈夫だよ、クラース。ティアナちゃんとリズさん、おふたりは確かに貴族だけど──俺たちの味方だ」


「……は? おふたりはお貴族様なんですか!?」


えっ、そこに驚くの!?

てっきり、私たちが貴族ってことくらい分かってると思ってたのに……そうではなかったらしい。


さっき『お貴族様に聞こえたら』発言も、私たちが貴族本人だと思ったわけじゃなくて、エレーネさんのように、”貴族に仕える平民の使用人”だと思ってたらしい。


「重ね重ね、大変失礼致しました!」


そう言って、最初にこの部屋に来た時よりもさらに深くお辞儀をする。


……大丈夫かな? テーブルにおでこがついてる気がするんだけど。


「おいおい、クラース。さっきロベールが言ったように、このお嬢さんたちにはそんなに気を張らなくて大丈夫だぞ?」


「お前らこそ、何言ってんだ!? お貴族様にそんな口きいていいわけがないだろ!」


うん、またこのやりとりか。


「俺も最初は、ティアナちゃんたちに対するダンの態度に驚いたさ。

でも、ミーナがジルティアーナ様の【料理人】として、毎日屋敷に通い、この方たちと一緒に働いてるっていうから……」


「……は? ミーナが貴族の屋敷に通ってるだと!?

無理だって! あいつに貴族の対応なんて……できるわけがない!!


細い目を見開き、「何を考えてるんだ!? 」と、言いたげな目でダンさんを見た。


そんな視線を向けられ、ダンさんは気まずそうに目線を泳がせながら、頭を搔いた。


「いやぁ……俺もな、マズいと思ったんだが……。

クリスティーナ様の専属が残したレシピやオーブンがあるって聞いたら、ミーナが行きたがっちまって……」


そう言ったダンさんをクラース団長は責めるような目で見ている。ダンさんは弁解を続けた。


「普通は【料理人】が貴族と直接やり取りすることはあまり無い。多少は侍女なんかと関わることもあるかもしれないが、その時はアンナが対応すればどうにかなるだろうってことになったんだよ!

だけど……」


ダンさんがちらりと私を見てきて目が合った。


……もう、何を言われるか分かった気がした。



「まさか厨房にジルティアーナ様の侍女が現れ、ミーナたちと料理を一緒に作るなんて……予測できるわけがないだろ!?」



……はい、私のせいですね。ごめんなさい。


残念ながらゴルベーザだけでなく、私にも問題があったらしい。




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