表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルをよみ解く転生者〜文字化けスキルは日本語でした〜  作者: よつ葉あき
海の街、クリスディア

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

130/338

129.新しい仕事


「ねぇ、下級ポーションを作るのに必要な材料って、簡単に手に入るのよね?」


「はい。井戸水は裏庭の井戸からいくらでも汲めますし、セージも庭に少し植えてあります。アルカ草は市場で買えますし、町の外の草原や森にも自生しているはずです」


エレーネさんはそう言って、確認するようにリズを見た。


「ええ。アルカ草なら、この町の周辺で採れます」

「それって、私も採りに行ける?」

「えっ!? ティアナ様が採取に行かれるのですか?」


一瞬の沈黙のあと、エレーネさんが驚いたように声を上げた。


「んー。正確に言うと、私が直接採りに行くわけじゃなくて、戦闘スキルのない私でも問題なく行けるくらい、安全に採取できる場所かどうかってこと。それが知りたくってね」

「それは……何をするつもりですか?」


リズの問に、私は笑顔で答える。


「安全なら、スラム街の子供たちにアルカ草の採取を頼みたいの」

「スラム街の子供に……?」

「確かに、アルカ草の採取自体は危険ではありませんが……なぜ、わざわざスラムの子供たちに?」


私の脳裏に、先日スラム街にいった時に見かけた、やせ細った子供たちの姿がよみがえる。


「うん。スラムの子たちって、仕事がなくて食べるのもやっとでしょ? でも、もし安全な採取作業をお願いできたら、食べ物やお金を渡せるし、生活も少しは楽になると思うの」


私は穏やかに微笑みながら続ける。


「最初はね、ただ食事を提供しようと思ったの。でも、それじゃあ……クリスティーナが居なくなって、クリスディアの暮らしが悪くなってしまったみたいに、もし私が居なくなったら、すぐに今の状態に戻ってしまうと思うの。だから……」


私は真っ直ぐリズを見た。


「彼らにとっても働く機会があった方がいいと思うの。誰かに頼られること、自分でお金を稼げること……そういう経験があれば、未来の選択肢も増えるんじゃないかなって」


エレーネさんとリズは顔を見合わせ、少し考え込むように沈黙した。


「……なるほど。ティアナ様は、ただ施しを与えるのではなく、彼らが自立できる道を作ろうとしているのですね」


エレーネさんが感心したように頷く。


「まあ、そんな大それたことじゃないけどね。ただ、私にもできることがあるなら、やってみたいの」

「ですが、スラムの子供たちが町の外へ行くには、安全面の確保も考えなければなりません。それをどうするかが課題ですね」


リズが冷静に指摘する。確かに、そのまま子供たちを送り出すのは無責任だ。


「うーん、それなら……」


私は少し考えたあと、手をぽんっと打つ。


「兵士か冒険者に協力を頼めばいいんじゃない? 採取をする子たちに護衛というか、出来れば指導・見守ってくれる人をつけてもらうの。それなら、問題なく進められると思う!」

「そうですね」

「ただ、さっき兵士は人材不足って言ってたから、そんな事に兵士を使う余裕があるか心配なんだけどね。

護衛だけなら冒険者で良さそうだけど、子供の見守りや指導となると、兵士の方がいいと思うのよね」

「でも下級ポーションの材料集めでいいんですか?

せっかく人手があるなら、ティアナ様は稲を使ってお米をつくりたいのではと思ってました。それなら護衛は必要ありません。

護衛をつけるなら、報酬が必要になります」

「まぁ、そうなんだけどね。でもお米作りって

広い土地や労力が必要だし、収穫まで時間もかかるのよ。スラム街のことは早急な課題でしょ?」


お米のことは諦めたりはしてない。スラム街の事が落ち着けばチャレンジするつもりだ。

それに……


「護衛への報酬なら問題ないわ! だって、下級ポーションでも1万ペルもするんでしょ? 材料は子供たちから仕入れて、私が作れば原価はかなり安くできるわよね」


そこまで言うと、ニヤリと笑う。


「それを正規の価格、1本1万ペルでゴルベーザ・マニュールに売りつければいいのよ。そして下級ポーションは2年前の賠償の一部として、兵団に頂くわ」


2人が目を丸くした。

エレーネさんもニヤリとすると「それはいい考えですね!」と笑った。


だが、私とエレーネさんとは違いリズが厳しい顔で言う。


「いえ、それでは駄目です」

「……え」


「正式な領主であるジルティアーナ様のツテを使って、特別に(・・・)大量に用意するのです。


──2割増で売ってあげましょう」





「じゃあ、一度ロベールさんたちに相談してみて、良さそうなら兵団に依頼しましょうか?」

「はい! 早速行きましょう!」


こうして、私はスラム街の子供たちのために、新しい仕事を作る第一歩を踏み出すことになった。


そして私は思った。


……リズを敵に回してはいけない。本当に。



おもしろいと思ったらブクマや下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎で評価していただけると励みになります。よろしくお願いします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ