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12. 朗報と沈む心



そんな事を考えている間に、エリザベスさんがエレーネさんに夕食の片付けを指示し、エレーネさんはワゴンを持って退室した。

普段だと、エリザベスさんが夕食が終わるとワゴンを部屋の外へ持って行き、他の侍女に片付けさせていた。

だが今日に限っては、夕食のワゴンが部屋の中に残されていた。てっきり一緒にエリザベスさんも食べたからなのかと思っていたが、そうでは無かったようだ。



エリザベスさんはこの1ヶ月、私の世話を可能な限り自分で行い、極力他の人に会わせないようにしてくれていた。

ジルティアーナの記憶がありジルティアーナのフリをする事は出来るが、ジルティアーナの記憶を呼び出すのに少し考える時間が必要な為にボロが出る可能性がある。

エリザベスさんと相談し、クリスディア領に移るまでは、他の人に接して違和感を持たれないように、

ジルティアーナはロストスキルのショックから立ち直れず、エリザベス以外には会うのが恐い。

という事にし、当主ローガンのジルティアーナに休養必要説に都合良く乗っかっておいた。

その為に、この1ヶ月はこの家どころか、部屋からもほぼ出た事がなかった。


そんなこの部屋へ、エレーネさんを入れ紹介した。エリザベスさんが夕食の片付けが目的で彼女を呼んだとは思えなかった。おそらくエレーネさんを紹介する事が目的だったのだろう。

そんな事を考えているとエリザベスさんが戻り、席に着くと言った。


「実は、昼間連絡がありました。

明日にはクリスディアへ出発出来るそうです」


「そうなの!? 良かった⋯⋯っ!」


やったーーー!! やっとこの生活が変わるんだ!

元々、早くクリスディア行きたかったが、先程の料理の話を聞きますますクリスディアへ行きたくなっていた。それがまさかの明日なんて·····!


やっと引きこもり生活が終わる! 蒸し料理が美味しかったと言えど、それにも限界がありすぐに飽きてしまうだろう。

でも! これからは、作って欲しい料理をおしえたり、もしかしたら自分で作れるかもしれない!


「そこで相談なのですが、明日からクリスディアへの道程は馬車での長旅になります。ジルティアーナ姫様には一緒に馬車に乗り世話をする者が必要です。

エレーネを同乗させようと思っているのですがいかがでしょうか?」

「ええ·····。よろしくお願いします」


そう答えながら、嫌な予感がした。

エレーネさんに不満がある訳ではない。でも、なんで⋯⋯?


「先程申し上げたとおり平民が直接ジルティアーナ様に関わる事は本来ないのですが⋯⋯貴族である侍女達は奥様の息がかかった者の可能性があり、信用できません」

「そっか。でも、エリザベスさんは?一緒に、来てはくれないの?」


意を決して、聞いてみた。

する少し困った様子で応える。


「申し訳ございません。私は、貴女と一緒には行けません」


やっぱり、そうなのか。私の嫌な予感は的中してしまったようだ。先程、クリスディア領へ行けると聞き、急上昇した気持ちが一気に急降下してしまった。

仕方がない。エリザベスさんの主は、私では無いのだ。彼女の主は、ジルティアーナ姫様だもの──。

顔に出さないように取り繕ったつもりだったが、不安が顔に出てしまったようで、エリザベスさんは安心させるようにように言う。


「エレーネは良い子で、とても優秀です。これから貴女の力になってくれるはずです。元々は姫様と関わりはありませんでしたし、なにより口は堅いので多少姫様らしからぬ行動をしても大丈夫です」

「そうなんだ⋯⋯だったら、安心だね」


上手く笑って言えただろうか。事情を知るエリザベスさん以外の前で、ちゃんとジルティアーナの様に振る舞えるか不安ではあったので、安心だと言ったのは嘘ではない。

だがそれよりも、たった1ヶ月の間にエリザベスさんに思いの外、依存してた事に気付いた。

エリザベスさんが居なくなる事に予想以上に寂しさや不安を感じたのだ。

エリザベスさんが、エレーネさんやクリスディアへの道程の事、クリスディア領について話をしてくれるが、エリザベスさんが居なくなることの方が衝撃すぎて内容がほとんど頭に入ってこなかった。


本物のジルティアーナでもない私が、彼女を引き止められるわけがない。

ジルティアーナが最後の時に思ったように、ジルティアーナが居なくなった今、エリザベスさんは自由になる権利があるんだ───。


この2週間、エリザベスさんは献身的に私を助けてくれた。でも、それはこの身体がジルティアーナだからだ。私の侍女ではないんだ。

これからこの世界で生きていくためには、いつまでもエリザベスさんに頼っててはいけないんだ。


そう自分に言い聞かせ、私の気持ちに蓋をした。



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