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スキルをよみ解く転生者〜文字化けスキルは日本語でした〜  作者: よつ葉あき
海の街、クリスディア

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119.屋敷での話合い


「ティアナ様、エリザベス様、お連れ致しました」

「ありがとう⋯⋯あら、アンナも来たの?」


ふたりでくると聞いていたのにエレーネさんの後ろにアンナが見えて、思わずそう言ってしまった。アンナは体を縮こまらせ、申し訳なさそうにする。


「突然、私まで付いてきて申し訳ございません。父達だけだと心配だったもので⋯⋯」


そう言って更に後ろに居るふたりを見た。そこに居たのはダンさんとロベールさん。ふたりの表情は硬く緊張している事がわかった。


「ああ、ごめんね。アンナが来たことに不満があるわけじゃないの。ミーナだけで食堂は大丈夫かな? と、思って」

「仕込みは父と一緒にやってきましたので大丈夫です。お話が終わったらすぐ食堂に戻りますが、それまではネロとルトが手伝ってくれてます」

「そう、だったら早く話を終わらせましょうね」



席を勧め、話し合いを始めようとしたが目の前のふたりは相変わらず動きも表情も硬い。心配しているとそれはアンナも同じだったようで、アンナがふたりに声をかけた。


「なんか凄い緊張してるみたいだけど⋯⋯ふたり共、大丈夫?」

「大丈夫なわけないだろ! お前らと違って、俺はこんなお貴族様の屋敷に入るのなんて初めてだ⋯⋯っ」

「いや、俺だってマニュール家に呼び出された経験しかねぇよ。その時は脚が痛くてそれどころじゃ無かったしこんな豪華じゃなかったさ」

「そんな事言ったら、私だっていつも来てるのは厨房だけで、お貴族様の住居エリアに入ったのは初めてよ!? やめてよ、なんか私まで緊張してきちゃった⋯⋯」


そう言って震える3人に、私とリズは顔を見合わせた。


「エレーネ。貴女の分もお茶を用意して席につきなさい」

「はーい」


リズはミーナとアンナと初めて会った時と同じように、平民であるエレーネさんを使いダンさん達の緊張を解こうとしてるのだろう。


「今回は貴族として話を聞きたいから、屋敷(こちら)によんだけど私達以外は居ないわ。いつも通り、気楽に接してね」

「て、お貴族様が言ってくれてるんで気楽にしましょ。あ、これ! 昨日、ティアナ様が作ってたキャラメルってお菓子ですよね? いただきまーす」


口にキャラメルを放り込み「おいしー」と感想を言うエレーネさん。リズの意図を察し、わざと普通なら貴族に対してありえない態度をとっているのだろう。それを見て呆気にとられたあと、3人は笑った。⋯⋯良かった、緊張はほぐれたようだ。




「俺が兵士を辞めて、2年しか経ってないのに人が随分入れ替わってました」

「昨日、ロベールと共に兵士の詰所に行ってきた。結論から言うと──ティアナちゃんが心配していた通りだった」


(ああ、やっぱりそうだったか⋯⋯)

『優秀な人がどんどん辞めていき、残った人に負担が増えて、更にブラックな職場と化す。⋯⋯そんな事が、町に起こってない?』

以前、私が2年前の事件を知り思った事だ。


私がふたりにお願いしたこと──町の警備について問題が起きてないか? ということを、ダンさんとロベールさんに調べてもらったのだ。


「どうにか団長が残ってくれたのが救いだがな。だが、それ以外はヤバい。実力はもちろんの事、ヤル気もねぇし、団長も自分の仕事が忙しすぎて教育ができる訳がない」

「あのままじゃあ⋯⋯団長が倒れるのも時間の問題だよ」


ダンさんは宙を仰ぎ、ロベールさんは頭を抱えた。

兵士の仕事は、一部冒険者などになる為の修行的に兵士になる者もいるが、毎月給料が出て怪我等が無ければ仕事を失うリスクが少ないので、離職率が低いものだという。⋯⋯本来は。

だがクリスディアでは2年前の事件のせいで──


ロベールが大怪我をし、脚を失った。それも貴族を庇ったというのに何の補償もなく仕事も失い、スラム街行きになった。

実力者のロベールでこんな有様である。それがもし、自分だったら⋯⋯。


そんな考えが兵士達の間に広まってしまったらしい。さもありなん。


そしてその後は私が恐れてたように、

優秀な人や家族が居る人から退職(やめ)ていき、残った人へ負担が増える。そんな大変な職場には新しい人員は来ない。残った人や稀に入る新人を育てる人手も時間もない。

負のスパイラル⋯⋯それが今のクリスディア兵士達の現状らしい。

(うん。予想通り、なかなかのカオスだわ。どうしたもんかしらねぇ)

私は紅茶を飲みながら考えた。



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