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スキルをよみ解く転生者〜文字化けスキルは日本語でした〜  作者: よつ葉あき
海の街、クリスディア

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109.似た親子


「ご挨拶せず、すみません。昨日、ネロくんとルトくんにお友達になってもらった、ティアナと申します」

「あ、ご丁寧にどうも。ネロとルトの父でロベールと申します」


ロベールさんと初対面の挨拶を交わしたが、「で、この人何なんだ?」と言いたげにダンさんを見たので、ダンさんは答える。


「この方達はヴィリスアーズ家の侍女で、ネロに財布を盗られた被害者だ」

「······は?」


固まるロベールさん。少し待ってやっと動き出したと思ったら、ロベールさんは杖を上手く使えず倒れ込んでしまった。


「ロベール!」

「父ちゃん!」


ダンさんとネロくんがロベールさんに駆け寄ろうとしたが「来るなっ!」とロベールさんに言われてしまい2人は立ち止まった。そしてロベールさんは上半身を起こしたと思うとそのまま私に向かって頭をさげた。


「うちの息子が大変申し訳ございませんでした! 息子が仕出かした責任は私にあります。なので息子たちの命だけは、どうか見逃して頂けないでしょうか」


地面に膝をついた状態で頭を下げたので土下座のような格好になりながらロベールさんは言った。そして、顔だけ上げ私の目を見ると続けた。


「息子が今回の事を仕出かしたのは、私が原因です。私がこんな身体になってしまったから······こんな所にしか住むことが出来ず、毎日の食事も満足にさせてやれてない。ネロは私たち家族の為に一生懸命やってくれてますが最低限の生活が精一杯で······。誕生日くらいは、弟に好きな物を食べさせてあげたいと······、貴方様の金盗んだのだと思います」


悔しそうな泣きそうな顔でロベールさんが言う。視界の端でネロが何か言おうとしたが、ダンさんが手で制止するのが見えた。そして再び頭をさげた。


「大罪には軽すぎる首ですが、どうか死罪にするのは私だけに······。どうか、どうか······お願い申し上げます」


深く下げられた頭が、昨日のネロくんと重なって見えてしまった。


「ロベールさんとネロくんは、よく似てますね」

「え······」

「ネロくんも昨日、私が貴族だと知って罰を受けなきゃいけないかもしれないと思った時、『悪いのはオレ一人だから、どうか父ちゃんやルトには怒らないで』とお願いされました」


そう告ながら、

(あ、ネロくんだけじゃない。ルトくんも『兄ちゃんじゃなくて僕のせい』って庇ってたっけ?)

と思い出していた。本当に似た家族なんだな。と思っていると、ロベールさんが顔をあげた。そして倒れたお父さんを助けようと近くに来てたネロくんが、ロベールさんの視界に入ったようだ。


「ネロ、お前······」

「父ちゃん······ごめんなさい······っ」


ネロはまた涙と鼻水を垂らし泣いていた。それを見たせいなのか、ロベールさんからも鼻をすする音が聞こえた。


「突然お邪魔したせいでびっくりさせてしまいましたよね。お金を盗まれた件に関してはもう良いんです。昨日ネロくんからも、たくさん謝って貰ったので、もう終わった話しです」

「ですが······っ」

「今日は別の、大切なお話をしたくてダンさんにお願いして此処に連れてきて貰いました」





私は、ロベールさん達の家の中を見回していた。照明もなく、まだ昼間だというのに薄暗い。なのに汚れた天井から薄ら光が入り込み、隙間が空いているであろう事がわかる。

そこから雨漏りもするのだろう、隙間が有る天井とその周辺の壁は黒く変色し、カビているようで嫌な臭いがするし、窓ガラスにはヒビが入っていた。

床は、木板がある訳でもなく土が剥き出しだ。埃っぽくて不衛生だし、脚が不自由なロベールさんは生活しにくいだろう事が容易に想像できた。

リズが4人分の紅茶を入れ、テーブルに置いてくれた。お邪魔して負担にならないようにと、紅茶とお茶菓子はすぐ出せるように時間停止が付いてる私のマジック(バック)に用意して入れてたものだ。今、ここに居るのは4人だけ。

ネロくんとルトくんにはお金を渡し市場で昼食をとるように伝え、レーヴェに連れ出してもらったのだ。


「まず、こちらをお受け取りください」


リズがロベールさんの前に小さな鞄を置いた。緊張した様子で、鞄を手にしたロベールさんは蓋を開けたがそこには何もなく、不思議そうに鞄をみる。


「これは?」

「マジック(バック)です」

「ブハッ!」


最後のはダンさんがお茶を噴き出した音だった。お茶が変なところに入ったようでダンさんが咳き込みながら叫ぶ。


「マジック(バック)なんて、なんちゅー高価な物を渡すんだ! こんな高級品を、脚が悪いロベールに渡したらスリどころか強盗に遭うぞ!?」

「大丈夫ですよ。加護が付いてますので、悪意を持って触ると痛みを感じるようになっているうえに、ロベールさんが許可した人以外が開けられないように制限をかけてます」

「それじゃあ益々高級品じゃねーか······にしても、なんでマジック(バック)をロベールに?」


ダンさんの疑問に私が答えよう。私はロベールさんの前の席に座り、ロベールさんを見つめた。


「ロベールさん、そのマジック(バック)を使ってこの家(ここ)から引越しましょう」

「それは、何故でしょうか? クリスディア(この町)を出ていけという事ですか?」

「違います。この家が子供達と脚が不自由なロベールさんにいい環境とは思えないからです」


私が言い切るとリズが今度は小さな革袋を差し出した。それをまたロベールさんが受取り、ダンさんと共に中身を確認すると目を見開いた。


「とりあえず1ヶ月分の宿代と生活費です。足りないようならご相談下さい」


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