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(二)-5
対して佐川は豊永と同じ警備会社に勤める警備員だった。佐川は入社して四年目、豊永は六年目だった。
佐川は真面目で実直な青年だった。そこを買って彼を「アルバイト」に誘ったのだった。何をするかは直前まで秘密にして無理矢理巻き込んだ。多少は気の毒に思ったが、これも社長のためだった。
「この部屋の住人はどうした」
男は「ここで死んでいる」と畳の部屋の奥を親指で示した、そちらの方はふすまで見えなかった。
豊永はドアをゆっくり閉め、土足のまま部屋に上がった。細身の男の目を凝視しながら奥に進んだ。細身の男の目の前まで来ると、男は「ほら」と改めて指で指した。
(続く)