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(二)-10
しかし、ここで豊永に油断が生じた。男は執拗に暴れ、豊永の腕から抜け出し体をよじりながら、持っていた包丁で豊永の腕を刺そうとした。
とっさに反応した豊永はその手を強く払った。包丁を持った男の手は男の体に向かい、刃は男の体に突き刺さった。
豊永はいたがる男を仰向けにし、包丁を抜いた。体からは血があふれ出していた。血の量から深手であることがわかった。そのため、豊永は右手で包丁を取り、男性の口を左手で押さえ、その刃を男性の心臓めがけて突き刺した。男性は豊永を凝視していたが、一分もたたず、男性の体からは力が抜けていった。
(続く)