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(二)-9
豊永の体は無意識に反応して、ファイティングポーズを取っていた。以前いた陸上自衛隊での訓練の賜だった。こういった危機や荒事に、自然に対処できるという意味では、良い経験だったと豊永は以前から感じていた。
結局、男は相手にならなかった。ちまたでは多少ケンカが強かったのかもしれない。しかし、元の字が付くとはいえ、その道のプロであった豊永にかなうはずがなかった。
男はこぶしでは歯が立たないとわかると、キッチンへ行き、置かれていた包丁を豊永に向けてきた。市井のチンピラであれば怯むところであったが、豊永にとってはかつて受けた訓練通りの動作で男を制圧した。そして男の左腕を後ろに回して床に腹ばいに押し付けた。
(続く)




