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第五話

増加する瘴気と共に魔王は復活する


魔王の手によって 世界は絶望に飲み込まれるだろう


ただ待て 救いの光が差し込む時を


雷鳴と共に舞い降りし異世界からの勇者が世界を救うだろう


───────────────────────


「これがナラウに伝わる伝承だ。今の状況と合致していると思わないか?」


 どうやら、この伝承によると俺が勇者で、世界を救う必要があるらしい。

 

「でも、この伝承通りなら、魔王が復活した後に俺が現れるんじゃないのか?」

「古い伝承だから、ちょっとくらい齟齬があってもいいのよ。そもそも、魔王が復活でもしないとこんなに強くなったトロールの説明がつかないし」

「って事は、威信さんって勇者様なんですかぁー!すごいですぅ!」


 そう言い、エリーが腕に抱きついてくる。

 口調が嫌いなのでマイナスだが、胸が押し付けられるのはプラスなので、相殺してプラマイゼロの感情を抱いた。


「いや、そもそも俺は勇者じゃなくて破壊神だし……」

 

 途端に、3人の表情が変わった。


「あんた、何言ってんのよ!?破壊神って言ったら、ナラウで最も高位の存在よ!?」

「すまない。転生者であろうと、命の恩人であろうと、神を名乗る者を許す事はできない。君がこの世界の事をあまり知らないのはよく分かっている。どうか撤回してくれないか」

「で、でもぉ。こんなに強いってもしかして本当に……」


 なるほど。この世界における破壊神とは、名を語ることの許されない絶対の神なのだろう。


「羽賀 威信、ここは私が説得しましょう」

「うわっ、急に喋り出すなよ!びっくりするから!」

「失礼しました。それで、説得なのですが、人類が歴史の中で築き上げてきた価値観を私が崩してしまうのは、世界の管理者としてあるまじき行為です。よって今の人類の価値観に合わせて話をしますので、特に訂正などはしないでください」

「そうか…わかった」


 3人は、俺を不審そうな目で見ていた。傍から見ると急に訳のわからない事を喋り出した変人なのだろう。


「…………君は今何と話していたんだ?」

「えっと……女神と……」

「こんにちは。ナラウの管理者である女神メガミィです」


 途端に、3人は目を丸くした。という事は、今の声はこの場に居る全員に聞こえているのか。


「女神様………!?まさか、本当に……」



 ✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱



 メガミィは3人に、俺がここに来た経緯を伝えた。しかし、この国での宗教的価値観を守る為、俺は破壊神によって力を与えられたこの世界を救う転生者で、トラックは破壊神の名を語り世界を崩壊させようとする不届き者ということになった。

 

「そうだったのですか、破壊神様の使いの方。そうとは知らず大変失礼致しました」

「いや、さっき通りにしてくれ、ナキシィ。そう畏まられるとこっちも窮屈だから」

「そ、そうか?君がそういうのなら……」


 俺は同様にカイとエリーにも普通に振る舞うように促す。敬語になってしまうと、セリフでのキャラ付けが難しくなってしまうからだ。


「ねえ、伝承での魔王ってそのトラックって奴の事なんじゃない?」

「それはわからないけど…………少なくとも7日後に俺と同等かそれ以上の強さの殺人鬼が来るのは確かだ」

「威信さんより強い殺人鬼って、もはやナラウの危機じゃないですかぁ!?!?そんなのが7日後に!?!?ひぇぇぇ!!」


 そう言えば、自身の力で転生した者は、人為的に転生させられた者より強大な力を得るとメガミィが言っていた。もし、トラックが俺より圧倒的に強かったらどうするんだ?恐らく、現時点でこの世界の最強は俺だろうから、俺が勝てなかったらこの世界も…………


「なあ、メガミィ。もしトラックのステータスが俺より遥かに高かったら、勝ち目はあるのか?」

「それは……かなり厳しいでしょう。しかし、ナラウにはレベルという概念があります。この世界に生まれた時に1からスタートし、モンスターを倒すほど上がっていきます。レベルが上がれば上がるほど、ステータスが向上します」

「トロールを倒したし、俺も少しは上がってるのかな?」

「はい。貴方の現在のレベルは3です。もしトラックが貴方よりも遥かに強い基礎ステータスを持って生まれたとするならば、レベル差で補うしかありません」


 俺は、俺の家族を殺した、そしてナラウを破壊しようとするトラックを決して許すわけにはいかない。トラックに絶対に勝たなければいけない。


「それなら、この7日間でする事は決まったな。レベル上げだ!」

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