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第十三話

 王都の城門前広場では、編成された王国部隊が魔物の迎撃に当たっていた。トラック転生まで、残された時間はわずか。瘴気により強力になったモンスターは、普段は穏やかなはずの種族であるにもかかわらず、部隊の者が複数人でかからなければ倒せないほどに凶暴化していた。


「はあっ!」


 部隊の先頭に立つのは、ナキシィだ。デジャーンでのレベル上げの成果も相まって、その剣筋は芸術品の如き正確さを誇り、襲いくるモンスターの急所を一撃で貫く。


「パーワ!シルドー!」

「ふぇぇぇぇ!なおれー!」


 部隊の中方では、カイとエリーがサポートを行う。カイの強化魔法を受けた王国部隊は、潜在能力を最大限に解放していた。負傷者が出ると、すかさずエリーが回復魔法をかける。その見事な連携により、この防衛戦で未だ一人も死者を出させずにいた。


「ねぇ、カイさん」


 回復魔法の傍ら、エリーが不安そうな表情でカイを横目に見る。


「デジャーンでの威信さん……なんだか、前よりも冷たくなったように感じませんでしたか?」


 エリーの胸の中で、あの時感じた違和感が肥大化していく。


「冷たくなったって……そんなの……よくわからないわよ」


 それもそのはずだ。あの時エリーが気づいたのは、威信が性欲を破壊したことによる対応の変化であり、もともと性的な目で見られていないカイには気づきようのない物であった。


「でも、ナキシィが言ってたわね。あいつ、強くなるために自分の食欲と睡眠欲を破壊して、限界に気付かずに倒れちゃったんだって。それってさ、すごく怖いことなんじゃない?人間が、人間でなくなってしまう、何か恐ろしい禁忌に触れてしまっているような……」


 二人の間に沈黙が流れる。彼が破壊したのは食欲と睡眠欲だけなのだろうか?もし本当に"失ってはいけない物"まで破壊していたのだとしたら、彼は人間のままでいられるのだろうか?そんな不安が脳裏に過ぎる。その瞬間──


 ドゴオオオオオオオン!!


 轟音が空を引き裂く。何かが、ものすごい速さで城壁の遥か上空をかすめ、一瞬で王国から去っていく。


「ふえぇぇぇぇぇぇ!!」


 恐怖にうずくまるエリーの横で、カイは確かに見た。あれは羽賀威信であった。しかし、彼の周囲に纏わりつく重圧、その異常なまでの冷気は、今までの彼からは感じたことのないものだった。レベル3桁となったカイの研ぎ澄まされた感覚が、本能的な恐怖を知らせる。


「二人とも!」


 ナキシィが近づいてくる。その表情は蒼白としていた。


「あ、あれは一体なんだ……?威信君のように見えたが……この殺意、今までの彼からこんなものを感じたことはなかった……」


 カタカタと震えながら何とか言葉を紡ぐナキシィの背後を見渡すと、先ほどまで城門を襲っていた魔物が、全て跡形もなく消え去っていた。間違いない。こんなことをできるのは彼、羽賀威信しかいない。


 そんな中、カイはふと思い出した。ナラウで語り継がれる、伝承のことを


───────────────────────


増加する瘴気と共に魔王は復活する


魔王の手によって 世界は絶望に飲み込まれるだろう


ただ待て 救いの光が差し込む時を


雷鳴と共に舞い降りし異世界からの勇者が世界を救うだろう


───────────────────────



 彼女たちは、勇者が羽賀威信で、魔王がトラックだと、そう信じていた。古い伝承ゆえに、順番が逆になっただけだと、楽観的に納得していた。だが、先ほど目撃した羽賀威信の姿は、その脆い信念を完全に打ち砕き、彼女たちに一つの恐ろしい疑念を与えた。



 真の魔王とは、他ならぬ羽賀威信のことなのではないか。



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